2015年6月の図書紹介(2015年5月受け入れ図書)

1.竹信三恵子著『ピケティ入門』金曜日(127頁,四六判)

 世界的なベストセラーとなったトマ・ピケティ著『21世紀の資本』の読み方をわかりやすく解説。日本の格差の現場を取材してきた新聞記者の目を生かし、ピケティの格差論を紹介する。ピケティのメッセージは、格差を放置せず、平等に向けて格差縮小の努力をすること、と著者は明示。ピケティは問題解決として、所得税への累進課税の引き上げや世界的資本税の導入、スキルの向上などを説くが、著者は、ピケティ理論から、アベノミクスの地方創生、女性が輝く社会、労働規制の緩和などを批判的に検討。ピケティから学ぶことは、格差は放っておいてはなくならないこと、困難でも必要なことを可能にする道を探すこと、すべてか無かという発想に陥らないことだという。

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請求記号:331.82/pik

書誌番号:JB00104949

ISBN:9784865720006

2.玄田有史著『危機と雇用』岩波書店(xi+247+4頁,四六判)

 想像を絶する被害を及ぼした東日本大震災から4年。本書は、豊富な調査データを駆使して、「仕事」という側面から震災のもたらした影響を分析するとともに、再び来るに違いない災害に備えるため、対応状況を記録し、後世に伝えていくことを目指している。震災後の雇用対策として実施された多くの政策が、リーマン・ショック後の緊急的な対策を下地に速やかに行われたことを評価。一方、雇用保険に非加入のために職業訓練を受けられない人に対してスタートした求職者支援制度は、使い勝手が良くなかったと指摘。希望学を主唱している労働経済学者として、日ごろから、社会的共通資本としての「信頼関係」を構築しておくことが、被害を最小限にとどめると述べる。

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請求記号:366.021/kik

書誌番号:JB00104921

ISBN:9784000610223

3.村上由紀子著『人材の国際移動とイノベーション』NTT出版(253頁,四六判)

 本書の第一の特徴は、高い教育を受けた高度人材の国際移動とイノベーション(革新)を結びつけるというテーマの独自性にある。従来の研究では、高度人材の国際移動が知識の普及・創出や経済成長につながる効果がほとんど考察されていないと指摘。経済学にとどまらず、経営学、社会学、自然科学など多様な学問を用いてテーマに挑んでいる「学際性」が第二の特徴。また、不確実性のある経済のなかで、人材の国際移動によるイノベーションが、日本経済を発展させる処方箋の一つであることも論じている。さらに、知識創造モデルを用いた一貫的考察も特徴である。今後の課題として、国際移動による技術流出問題や知識創造の連鎖の仕組みと人の移動との関係に言及。

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請求記号:366.2/jin

書誌番号:JB00104926

ISBN:9784757123236

4.河西宏祐著『全契約社員の正社員化を実現した労働組合』平原社(326頁,四六判)

 2009年の春闘で広島電鉄の労働組合が、雇用労働者の3分の1を占める契約社員全員の正社員化を獲得する一方、400名の正社員が基本給を大幅減額することになった。本書は、約40年にわたって分裂していた2つの組合が統一して以降、現在までの歩みを紹介しつつ、この現象を巻き起こした舞台裏を解説する。背景として、①規制緩和と経営合理化②「バス分社化」提案③労務コスト削減などの経営側の提案に対し、労組側は「契約社員の登用制度の合意」を手始めに、契約社員の処遇改善に努めた軌跡が詳細に描写されている。『全契約社員の正社員化』(2011年、早大出版部)を再編集した普及・改訂版であり、『路面電車を守った労働組合』(2009年、平原社)の姉妹版。

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請求記号:366.628/zen

書誌番号:JB00104982

ISBN:9784938391560

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2015年3月-2015年4月に労働図書館受け入れ

  1. 佐藤満著『厚生労働省の政策過程分析』慈学社出版(212頁,A5判)
  2. 山口道昭著『政策法務の最前線』第一法規(x+319頁,A5判)
  3. 江口匡太著『大人になって読む経済学の教科書』ミネルヴァ書房(xxii+392+3頁,四六判)
  4. ラム・チャラン他著『取締役会の仕事』日経BP社(ii+338頁,A5判)
  5. 中嶋哲夫著『正しい目標管理の進め方』東洋経済新報社(247頁,四六判)
  6. 平康慶浩著『出世する人は人事評価を気にしない』日本経済新聞出版社(245頁,新書判)
  7. 森川美絵著『介護はいかにして「労働」となったのか』ミネルヴァ書房(v+351頁,A5判)
  8. ロア・ユナイテッド法律事務所編著『労働事件:立証と証拠収集』創耕舎(xiv+269頁,A5判)
  9. 岩出誠著『平成26年改正労働法の企業対応』中央経済社(xvi+216頁,A5判)
  10. 高橋賢司著『労働者派遣法の研究』中央経済社(6+4+413頁,A5判)
  11. 角田邦重著『労働者人格権の法理』中央大学出版部(vi+395頁,A5判)
  12. 労働新聞社編『労働裁判における解雇事件判例集』労働新聞社(482頁,B5判)
  13. 岩佐卓也著『現代ドイツの労働協約』法律文化社(v+220頁,A5判)
  14. 柏崎洋美著『労働者へのセクシュアル・ハラスメントに関する紛争解決手続』信山社(xvii+189頁,A5判)
  15. 日経DUAL編集部他編『共働きファミリーの仕事と子育て両立バイブル』日経BP社(174頁,A5判)
  16. 久谷與四郎編著『働く人を守る:「連合」25年の実像と役割』日本リーダーズ協会(248頁,A5判)
  17. 今野久子著『パート・有期雇用労働者の権利Q&A』学習の友社(111頁,A5判)
  18. 野口裕之他編『組織・心理テスティングの科学』白桃書房(xi+603頁,A5判)
  19. 鈴木大介著『最貧困シングルマザー』朝日新聞出版(207頁,文庫判)
  20. 東大社研他編『「持ち場」の希望学』東京大学出版会(x+405+8+2頁,四六判)
  21. 松田茂利著『学校は究極のブラック企業』表現社(241頁,四六判)
  22. 常見陽平著『「就活」と日本社会』NHK出版(222頁,四六判)
  23. 佐藤英仁著『医師・看護師不足の現状と労働環境』ブイツーソリューション(122頁,四六判)
  24. 鈴村尚久著『トヨタ生産方式の逆襲』文藝春秋(231頁,新書判)
  25. 藤本隆宏他編著『ケースで解明ITを活かすものづくり』日本経済新聞出版社(xvii+264頁,A5判)
  26. 今野聖士著『農業雇用の地域的需給調整システム』筑波書房(173頁,A5判)