2015年4月の図書紹介(2015年3月受け入れ図書)

1.タイラー・コーエン著『大格差』NTT出版(iii+342+7頁,四六判)

 米国と同様、日本でも富裕層と貧困層の差が拡大し、中流階級が消滅し始めているという。こうした流れを牽引しているのがテクノロジーの急速な進化。今後、オートメーションが一段と進めば、この傾向に拍車がかかり、製造業の雇用が大幅に減る。本書は、機械に関する知的財産を所有する者などは非常に裕福になるが、若い男性の多くは、低賃金のサービス業の職にしか就けなくなると指摘。『大停滞』の著者が、技術革新のもたらす所得への影響や労働市場で求められる資質を予測する。果たして社会は15%の大金持ちと85%のその他に分離するのか。経済学の世界では、データの質や実証的な実験の質が高まり、理論の複雑性は強まるが、影響力は強まらないとも予想。

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請求記号:331/dai

書誌番号:JB00104719

ISBN:9784757123267

2.大久保幸夫他著『女性が活躍する会社』日本経済新聞出版社(183頁,新書判)

 リーダー的立場に占める女性の割合を2020年までに30%に高めると政府が国際的に公約するなど、女性活躍推進は待ったなし。本書は、数値目標の設定から達成するまでの実行計画や、出産・育児などのライフイベントに対応できる人事制度改革のポイントをわかりやすく紹介。日本の育児休業は米国やアジアの各国に比べ長いが、これらの国の多くでは、子どもを産んだ女性が自分のキャリアを優先、出産後3カ月くらいで職場復帰していると指摘。日本の女性は、せっかく身につけた能力や経験をさびつかせていると警鐘を鳴らす。さらに、①管理職昇進時に女性には下駄をはかせる②この機会に労働時間を見直す③入社直後から女性にもトップギアで走らせる、などを提唱。

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請求記号:336.4/jos

書誌番号:JB00104607

ISBN:9784532113223

3.野村正實著『学歴主義と労働社会』ミネルヴァ書房(viii+320頁,A5判)

 過去10年間に、ワーキングプア、偽装請負、日雇い派遣などが社会問題化、非正規雇用の雇用不安と過労死をもたらす正社員の働きすぎが、相互促進関係にあることに注目。さらに、若者を使い捨てにする「ブラック企業」が流行語になるなど日本は「非正規大国」への道をひた走っていると憂慮する。本書は、日本の雇用と働き方・働かせ方を転換する必要があるとの問題意識から現状を確認。日雇い派遣労働者や個人業主化する派遣労働者、学生アルバイトや外国人労働者など身の回りにいる非正規労働者を取り上げ、問題点を分析。労働力浪費型雇用から脱却するため、労働基準の確立、社会的公共サービスの充実などディーセント・ワークの実現に希望を見い出している。

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請求記号:366.21/gak

書誌番号:JB00104704

ISBN:9784623072118

4.吉田輝美著『感情労働としての介護労働』旬報社(236頁,A5判)

 著者は、日米で労使関係という言葉の指す意味が異なるのではないかと疑問を提起。日本の労使関係は、企業が世界に進出した1980年代を転機に機能しなくなったという。一方、派遣、パート、請負の各労働者など労働組合がカバーできない雇用者が増加。しかし、米国では、「コミュニティ・オーガナイジング」という新しい取り組みが90年代からスタート。対象となる労働者の枠にとらわれずに、貧困層向け公営住宅の建設や人並みな賃金を獲得する要求を展開するなど、成果をあげている。日本でも同様の事例を収集すること、課題解決組織の立ち上げ、センター機能の創設を提案。「働くこと」と豊かな生活をつなぎ直すため、労使関係と集団的民主主義を強調する。

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請求記号:369.17/kan

書誌番号:JB00104599

ISBN:9784845113613

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2015年1月-2015年2月に労働図書館受け入れ

  1. エリック・シュミット他著『How Google works』日本経済新聞出版社(371頁,A5判)
  2. 戸田智弘著『ことわざで働き方を考えよう』TOブックス(247頁,四六判)
  3. 山崎亮著『ハードワーク!グッドライフ!』学芸出版社(235頁,四六判)
  4. 岡崎昌之編『地域は消えない』日本経済評論社(ix+369頁,四六判)
  5. 藤本豪著『中国ビジネス法体系』日本評論社(xxi+632頁,A5判)
  6. 経済協力開発機構(OECD)著『格差拡大の真実』明石書店(459頁,B5判)
  7. 小崎敏男他編著『人口高齢化と労働政策』原書房(ix+253頁,A5判)
  8. ピーター・ティール他著『ゼロ・トゥ・ワン』NHK出版(253頁,A5判)
  9. 山口利昭著『ビジネス法務の部屋からみた会社法改正のグレーゾーン』レクシスネクシス・ジャパン(248頁,四六判)
  10. F・アマトーリ他著『ビジネス・ヒストリー』ミネルヴァ書房(xviii+400+14頁,A5判)
  11. 後藤康雄著『中小企業のマクロ・パフォーマンス』日本経済新聞出版社(235頁,四六判)
  12. 島森俊央他著『アジアへ進出する中堅・中小企業の“失敗しない”人材活用術』日本生産性本部生産性労働情報センター(iii+173頁,A5判)
  13. 原ひろみ著『職業能力開発の経済分析』勁草書房(ix+282頁,A5判)
  14. 山井和則著『政治はどこまで社会保障を変えられるのか』ミネルヴァ書房(xvi+208+2頁,A5判)
  15. 石嵜信憲他著『労働行政対応の法律実務』中央経済社(iii+29+iv+843頁,A5判)
  16. 労務行政研究所編『新・労働法実務相談』労務行政(599頁,AB判)
  17. 小嶌典明著『労働法の「常識」は現場の「非常識」』中央経済社(ii+vi+201頁,四六判)
  18. 前澤檀著『ブラック企業に泣き寝入りしないための労働相談Q&A』学習の友社(107頁,A5判)
  19. 菅野和夫他編『人事・労災補償・安全衛生』第一法規(14+529頁,A5判)
  20. 菅野和夫他編『賃金・労働時間・休暇』第一法規(13+371頁,A5判)
  21. 崔勝淏著『外から見た日本の雇用』八千代出版(viii+177頁,A5判)
  22. 日本キャリアデザイン学会著『キャリアデザイン支援ハンドブック』ナカニシヤ出版(vii+250頁,AB判)
  23. 小林包美著『個別労働紛争あっせん制度の実務と実践』第一法規(xi+341頁,A5判)
  24. 宮本太郎編著『地域包括ケアと生活保障の再編』明石書店(280頁,四六判)
  25. 川崎市生活保護・自立支援室編『現場発!生活保護自立支援川崎モデルの実践』明石書店(223頁,A5判)
  26. 北澤孝太郎著『営業部はバカなのか』新潮社(217頁,四六判)