2015年3月の図書紹介(2015年2月受け入れ図書)

1.本田由紀著『もじれる社会』筑摩書房(253頁,新書判)

 悶々とした気分が立ち込める現在の日本社会は、「もつれ」+「こじれ」=「もじれ」た状況にあると分析。旧来の仕事・教育・家族間の戦後日本型循環モデルが破たんしたことを明らかにし、新たなモデルを構築する必要性を強調する。教育-仕事関係ではジョブ型正社員、教育の職業的意識、リカレント教育を、仕事-家族関係ではワーク・ライフ・バランス、男女共同参画を、家族-教育関係では開かれた学校を重要視。「明日もまたできることはやっていこう」と「もじれ」た社会を変えるための方法を模索する。2007年から13年に発表した原稿を編集した本書は、著者の社会変革の働きかけ・試行錯誤・もがきの記録とも言え、『軋む社会』の続編と著者は位置づける。

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請求記号:304/moj

書誌番号:JB00104630

ISBN:9784480067906

2.八代充史他編『『新時代の「日本的経営」』オーラルヒストリー』慶應義塾大学出版会(iii+8+369頁,四六判)

 日経連が1995年に発表し、労使関係に大きな影響を与えた報告書が生み出された背景を、とりまとめに携わった事務局と労組関係者の証言を基にまとめた。報告書が主張する「人間中心の経営」「長期的視野に立った経営」を重視する姿勢には異論がなかったが、総額人件費管理の徹底の考えには労組側が強く反発。雇用形態を3つのタイプに分類する「雇用ポートフォリオ」についても財務の論理に巻き込まれていくと認識。「従業員は固定的労働力」である日本型経営の本質が、職能資格制度の見直しや自社型ポートフォリオの構築という報告書を出現させたが、20年後の今日、役割・職務給の導入や、パート・派遣等の流動的労働力と固定的労働力の組み合わせに進展した。

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請求記号:336.4/shi

書誌番号:JB00104807

ISBN:9784766421941

3.伍賀一道著『「非正規大国」日本の雇用と労働』新日本出版社(362頁,A5判)

 過去10年間に、ワーキングプア、偽装請負、日雇い派遣などが社会問題化、非正規雇用の雇用不安と過労死をもたらす正社員の働きすぎが、相互促進関係にあることに注目。さらに、若者を使い捨てにする「ブラック企業」が流行語になるなど日本は「非正規大国」への道をひた走っていると憂慮する。本書は、日本の雇用と働き方・働かせ方を転換する必要があるとの問題意識から現状を確認。日雇い派遣労働者や個人業主化する派遣労働者、学生アルバイトや外国人労働者など身の回りにいる非正規労働者を取り上げ、問題点を分析。労働力浪費型雇用から脱却するため、労働基準の確立、社会的公共サービスの充実などディーセント・ワークの実現に希望を見い出している。

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請求記号:366.21/his

書誌番号:JB00104624

ISBN:9784406058254

4.山崎憲著『「働くこと」を問い直す』岩波書店(ix+225頁,新書判)

 著者は、日米で労使関係という言葉の指す意味が異なるのではないかと疑問を提起。日本の労使関係は、企業が世界に進出した1980年代を転機に機能しなくなったという。一方、派遣、パート、請負の各労働者など労働組合がカバーできない雇用者が増加。しかし、米国では、「コミュニティ・オーガナイジング」という新しい取り組みが90年代からスタート。対象となる労働者の枠にとらわれずに、貧困層向け公営住宅の建設や人並みな賃金を獲得する要求を展開するなど、成果をあげている。日本でも同様の事例を収集すること、課題解決組織の立ち上げ、センター機能の創設を提案。「働くこと」と豊かな生活をつなぎ直すため、労使関係と集団的民主主義を強調する。

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請求記号:366.5/hat

書誌番号:JB00104733

ISBN:9784004315162

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2014年12月-2015年1月に労働図書館受け入れ

  1. 出口治明著『「働き方」の教科書』新潮社(263頁,A5判)
  2. 前田健太郎著『市民を雇わない国家』東京大学出版会(iv+306頁,A5判)
  3. 荒木尚志他著『社会変化と法』岩波書店(xiii+232頁,A5判)
  4. 樋口範雄著『アメリカ不法行為法』弘文堂(xvi+390頁,A5判)
  5. 山本和彦著『倒産法制の現代的課題』有斐閣(x+494頁,A5判)
  6. 飯田泰之著『日本がわかる経済学』NHK出版(204頁,四六判)
  7. サウガト・ダッタ編『英エコノミスト誌のいまどき経済学』日本経済新聞出版社(x+321頁,四六判)
  8. 細田尚美編著『湾岸アラブ諸国の移民労働者』明石書店(297頁,A5判)
  9. 現代公益学会編『東日本大震災後の公益学と労働組合』文眞堂(vii+220頁,A5判)
  10. 三谷宏治著『ビジネスモデル全史』ディスカヴァー・トゥエンティワン(422+xivp頁,A5判)
  11. 麻野進著『「部下なし管理職」が生き残る51の方法』東洋経済新報社(226頁,四六判)
  12. ウィル・シュッツ著『個人のセルフエスティームを高める』白桃書房(vi+143頁,A5判)
  13. ウィル・シュッツ著『信頼感あふれるオープンで生産性の高い組織をつくる』白桃書房(v+171頁,A5判)
  14. 高井重憲著『残業代請求訴訟反論パターンと法的リスク回避策』日本法令(340頁,A5判)
  15. 伊藤隆史著『「事業場外みなし労働時間制」の実務』日本法令(159頁,A5判)
  16. 阿古智子著『貧者を喰らう国』新潮社(255頁,A5判)
  17. 渡邊岳著『労働者派遣をめぐる裁判例50』労働調査会(xii+401頁,A5判)
  18. 昔農英明著『「移民国家ドイツ」の難民庇護政策』慶応義塾大学出版会(xi+249頁,A5判)
  19. 森田成也著『家事労働とマルクス剰余価値論』桜井書店(285頁,A5判)
  20. 仲真紀子他編『女性研究者とワークライフバランス』新曜社(ix+127頁,A5判)
  21. 村上文著『ワーク・ライフ・バランスのすすめ』法律文化社(viii+152頁,A5判)
  22. 西村純著『スウェーデンの賃金決定システム』ミネルヴァ書房(x+265頁,A5判)
  23. 遠藤公嗣著『これからの賃金』旬報社(180頁,四六判)
  24. 寺田盛紀著『キャリア教育論』学文社(iv+185頁,A5判)
  25. 古井祐司著『早死にする仕事、長生きする仕事』マガジンハウス(199頁,四六判)
  26. 高橋正郎著『日本農業における企業者活動』農林統計出版(xiv+354頁,A5判)