2015年2月の図書紹介(2015年1月受け入れ図書)

1.ロバート・スキデルスキー他著『じゅうぶん豊かで、貧しい社会』筑摩書房(341頁,四六判)

 ケインズ研究者であり歴史学者である父と、哲学者であり神学者である子が、人々の飽くなき欲望に警鐘を鳴らし、「もう十分」と言えない心理的傾向に、強い懸念を表明するために執筆。ケインズの小論文「孫の世代の経済的可能性」は、「何のための富なのか」「よい暮らし、よき人生を送るために必要なお金はどれくらいか」と問題を提起。持続的な技術革新によって、金銭的な必要性に煩わされない社会が誕生すると予測した。しかし、大半の人がいまだにがむしゃらに働いているのが現状。著者たちは、豊かな社会でのよい暮らしは、健康、安定、尊敬、人格、自然との調和、友情、余暇の7つの基本的価値が必要と説き、稀少性が経済学の中心に据えられていることを批判。

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請求記号:331/jub

書誌番号:JB00104606

ISBN:9784480867254

2.岩田一政他編著『人口回復』日本経済新聞出版社(261頁,四六判)

 本書は、単に人口問題だけを取り上げるのではなく、日本経済再生のシナリオも描いている。今後40年の日本の行方を見据えると、人口や経済規模が縮小、生活水準も下がり、国家破綻すら想定せざるを得なくなると指摘。人口問題では、現在の少子化に歯止めをかけるため、フランスをモデルに、多様な保育の選択肢を用意することと、子どもが増えるほど給付が手厚くなる育児給付の大幅拡充を提唱している。出生率を現在の1.4から1.8まで引き上げ、海外からの移民を年20万人受け入れることで、2100年には9,000万人で人口が安定するという。育児支援には総額8兆円が必要だが、いずれ高齢者比率の低下で税・社会保障負担が下がるため、実現は可能としている。

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請求記号:334.31/jin

書誌番号:JB00104540

ISBN:9784532356088

3.牛尾奈緒美他著『女性リーダーを組織で育てるしくみ』中央経済社(239頁,A5判)

 日本政府が2020年までに企業の役員等の女性比率を30%にする目標を掲げるなか、本書は、女性リーダーを組織的に育成している先進的企業の取り組みを紹介。インタビュー調査に基づき著者は、女性リーダーの誕生には、継続就業と能力発揮の促進を同時に行っていく必要があると強調する。継続就業として先進企業に共通するのは、育児・介護休業、時短勤務、残業削減、有給休暇の取得促進などのワーク・ライフ・バランス施策の充実。能力発揮面の施策として、OJT、OFF-JT、公正な評価、的確な登用などをあげている。さらに女性に対するネガティブな思い込みを是正するとともに、ITの活用や海外赴任なども、女性の活躍を促進する有効な手段になると指摘。

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請求記号:336.4/jos

書誌番号:JB00104538

ISBN:9784502108815

4.海老原嗣生著『いっしょうけんめい「働かない」社会をつくる』PHP研究所(229頁,新書判)

 気鋭の雇用ジャーナリストが、政府の規制緩和策の目玉として注目を集めた「ホワイトカラー・エグゼンプション(WE)」について、具体例を交えながら解説。日本型雇用と欧米型雇用の最適化を実現し、キャリアの前半では日本型を、入社10年以上などの企業人生の中盤からは残業代ゼロとなる欧米型のエグゼンプションの導入を提唱している。WEは、残業代だけが問題にされるが、キャリアや家庭生活にも影響を与えると説く。家事、育児、介護と両立する働き方を求めている日本人にとって、WEの導入は、チャンスでもあると主張。WEは、残業代がなくなり、給料低下の恐れもあるが、長時間労働からの脱却や休暇の取得しやすさなどのメリットももつからである。

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請求記号:366.3/ish

書誌番号:JB00104525

ISBN:9784569821047

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2014年11月-2014年12月に労働図書館受け入れ

  1. ウリ・ニーズィー他著『その問題、経済学で解決できます。』東洋経済新報社(iv+364+15頁,A5判)
  2. 日本経済新聞社編『身近な疑問が解ける経済学』日本経済新聞出版社(241頁,新書判)
  3. 冨浦英一著『アウトソーシングの国際経済学』日本評論社(x+196頁,A5判)
  4. 増田寛也編著『地方消滅』中央公論新社(243頁,新書判)
  5. 植村修一著『不祥事は、誰が起こすのか』日本経済新聞出版社(237頁,新書判)
  6. 谷本寛治著『日本企業のCSR経営』千倉書房(v+4+204頁,A5判)
  7. 三沢一文著『トヨタ式リーダー育成法』日本経済新聞出版社(238頁,四六判)
  8. 佐久間大輔著『過労死時代に求められる信頼構築型の企業経営と健康な働き方』労働開発研究会(149頁,A5判)
  9. 岩下広文著『IT・ソフトウェア業』中央経済社(ii+vi+187頁,A5判)
  10. 山口俊一著『商社・卸売業』中央経済社(ii+vi+183頁,A5判)
  11. 森谷克也著『小売・飲食業』中央経済社(ii+vi+189頁,A5判)
  12. 岩下広文著『製造業』中央経済社(ii+vi+187頁,A5判)
  13. 小川孔輔著『CS(顧客満足)は女子力で決まる!』生産性出版(297頁,四六判)
  14. 御堂筋法律事務所編『懲戒処分をめぐる法律実務』新日本法規出版(10+414頁,A5判)
  15. 崎山みゆき著『60歳新入社員の伸ばし方、活かし方』労働調査会(161頁,A5判)
  16. 三菱東京UFJ銀行国際業務部著『アジア進出ハンドブック』東洋経済新報社(318頁,A5判)
  17. 松浦章著『日本の損害保険産業』桜井書店(189頁,A5判)
  18. 大内伸哉著『最新重要判例200労働法』弘文堂(xiii+230頁,B5判)
  19. 江川雅子他編『世界で働くプロフェッショナルが語る東大のグローバル人材講義』東京大学出版会(v+229頁,A5判)
  20. 布施直春著『会社は合同労組をあなどるな!』労働調査会(287頁,A5判)
  21. 朝倉克己著『近江絹糸「人権争議」の真実』サンライズ出版(181頁,四六判)
  22. 田中慶子著『どんなムチャぶりにも、いつも笑顔で?!』松籟社(261頁,四六判)
  23. 中澤誠他著『検証ワタミ過労自殺』岩波書店(vi+241頁,四六判)
  24. 香川めい他著『「高卒当然社会」の戦後史』新曜社(iv+226頁,A5判)
  25. アレックス・ザヴォロンコフ著『平均寿命105歳の世界がやってくる』柏書房(306頁,A5判)
  26. 佐藤登著『人を育てるホンダ 競わせるサムスン』日経BP社(239頁,四六判)