2014年12月の図書紹介(2014年11月受け入れ図書)

1.曽山哲人他編著『クリエイティブ人事』光文社(240頁,新書判)

 サイバーエージェントの人事本部長を務める著者が、組織行動研究の第一人者、金井壽宏氏と共著で、クリエイティブ人事の姿を探った。人事は「サポート業務」「改革の抵抗勢力」という見方が少なくないが、著者は「人の才能を活かして会社の業績を上げる仕事」と定義。人事のパフォーマンスが変われば、会社の業績も変わるが信念で、人事は、働く人々の生産性を向上させるための部署だと主張。社員の心を打つ数々の人事施策を打ち出し、会社の急成長を支えてきた。価値観の明文化や社員のつながりの強化を目指して行う①キャリアチャレンジ制度②社内ヘッドハンティング③休んでファイブ、などの施策は、今後の人事の“創造性”を考えるうえで参考になるだろう。

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請求記号:336.4/kur

書誌番号:JB00104445

ISBN:9784334038076

2.礫川全次著『日本人はいつから働きすぎになったのか』平凡社(254頁,新書判)

 過労死するほど日本人が働きすぎるのはなぜか。本書はそのメカニズムを江戸期までさかのぼって探求する。江戸中期に「勤勉革命」が発生し、開国、明治維新、富国強兵といった近代化とともに働きすぎが共有され、明治後期には大多数の日本人が勤勉化していたと指摘。今次大戦下では「最高度」に達し、敗戦後の復興、高度経済成長期にも衰えることはなく、現代まで続いているという。日本人の勤労観に影響を与えた二宮尊徳や吉田松陰、福澤諭吉らの思想や教えも紹介。著者は、急速な近代化でアイデンティティを見失っていた明治時代に再評価が高まった二宮尊徳をきっかけに日本人は働きすぎに変貌したと分析する。そのうえで「怠ける勇気・哲学を持とう」と主張。

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請求記号:366.32/nih

書誌番号:JB00104459

ISBN:9784582857443

3.西村純子著『子育てと仕事の社会学』弘文堂(167頁,四六判)

 本書は、「消費生活に関するパネル調査」のデータを用いて、1940年代から70年代生まれの女性の就業行動の変化を、結婚・出産・育児を通して明らかにするのが目的。結婚時・結婚直後の女性の就業率は、若い世代ほど増加したが、正規雇用だけでなく、非正規雇用の割合も増加。しかし、結婚翌年にかけての正規雇用継続者の割合は、1940年代生まれと70年代生まれに大きな差異はなく、60・70年代生まれも、第1子出産2年前から出産年にかけて、就業率は大きく低下。若い世代でも子育てと就業の両立は依然として困難であると示唆。ポスト育児期の女性やシングルマザーの就業キャリアも取り上げ、子どもを育てる女性の働き方についての提案も行なっている。

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請求記号:366.38/kos

書誌番号:JB00104255

ISBN:9784335501371

4.佐藤千登勢著『アメリカの福祉改革とジェンダー』彩流社(177+lii頁,A5判)

 本書の目的は、福祉と労働の結節点に置かれた貧しい女性が直面している問題を明らかにし、福祉国家とジェンダーをめぐる議論の中に米国の1990年代の福祉改革を位置づけること。福祉改革にみられるジェンダー規範、就労支援と低賃金労働、移民の福祉受給と境界、メディケイドの削減と介護労働、メディケイドの削減と労働運動、の5つのテーマをもとに、福祉国家の受給者としての女性と、福祉国家を支える労働者としての女性の双方に及ぼした影響を検討。この改革は一般的には、期待通りの成果をあげたと評価されるが、極めて貧しい人々の惨状は増しているという。求められるのは、ジェンダー中立的な社会福祉制度と労働市場の確立だと著者は強調している。

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請求記号:369.0253/ame

書誌番号:JB00104241

ISBN:9784779120022

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2014年9月-2014年10月に労働図書館受け入れ

  1. 学習院大学経済学部・経済経営研究所編『経済と経営を楽しむためのストーリー』東洋経済新報社(x+252頁,A5判)
  2. 川北隆雄著『「失敗」の経済政策史』講談社(254頁,新書判)
  3. 真家陽一編著『中国改革の深化と日本企業の事業展開』日本貿易振興機構(iv+261頁,A5判)
  4. 楠木建編著『「好き嫌い」と経営』東洋経済新報社(ix+376頁,四六判)
  5. 安西洋之著『世界の伸びている中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』クロスメディア・パブリッシング(271頁,四六判)
  6. 三菱商事株式会社編『現代総合商社論』早稲田大学出版部(viii+324頁,A5判)
  7. 松山一紀著『映画に学ぶ経営管理論』中央経済社(3+240頁,A5判)
  8. 高原暢恭著『賃金・賞与制度の教科書』労務行政(319頁,A5判)
  9. 三村聡著『労働金庫』金融財政事情研究会(xii+295頁,A5判)
  10. 角野浩著『失業と環境政策の租税分析』同友館(xiii+203頁,A5判)
  11. 宮本恵理子編著『大人はどうして働くの?』日経BP社(235頁,四六判)
  12. 森下徹著『近世都市の労働社会』吉川弘文館(9+326+9頁,A5判)
  13. 今野晴貴他著『ブラック企業のない社会へ』岩波書店(78頁,A5判)
  14. 共同通信社編『働く!「これで生きる」50人』共同通信社(223頁,A5判)
  15. 杉山由美子著『定年後年金プラス、ひとの役に立つ働き方』朝日新聞出版(267頁,四六判)
  16. 大和田敢太著『職場のいじめと法規制』日本評論社(206頁,A5判)
  17. 河本毅著『判例から探る不利益変更の留意点』経団連出版(494頁,A5判)
  18. 廣上精一他著『これで安心!地域ユニオンへの対処法』民事法研究会(223頁,A5判)
  19. 野口定久編集代表『ソーシャルワーク事例研究の理論と実際』中央法規出版(361頁,B5判)
  20. 林己知夫他著『子育て世代が住みたいと思うまちに』第一法規(iii+107頁,A5判)
  21. 藤森和美他編『発達障害とキャリア支援』金剛出版(260頁,A5判)
  22. 小路行彦著『技手の時代』日本評論社(xii+721頁,A5判)
  23. 若松義人著『新トヨタ式「改善」の教科書』東洋経済新報社(198頁,四六判)
  24. 日経アーキテクチュア他編『人材危機:建築業から沈む日本』日経BP社(215頁,四六判)
  25. 佐藤博樹他編『人材サービス産業の新しい役割』有斐閣(xiii+329頁,A5判)
  26. フランシス・マキナニー著『日本企業はモノづくり至上主義で生き残れるか』ダイヤモンド社(292頁,四六判)