2014年11月の図書紹介(2014年10月受け入れ図書)

1.エンリコ・モレッティ著『年収は「住むところ」で決まる』プレジデント社(335+xviii頁,四六判)

 本書は、米国経済の新たな成長エンジンであるイノベーション産業が、なぜシリコンバレーなどの限られた地域に集積し、米国人の暮らしぶりをいかに変えてきたかを労働経済学や都市経済学などの視点から分析。著者は「国が繁栄するか否かは、頭脳集積地の数と実力に大きく依存する」と指摘。また、専門的職種の労働市場の厚みが、その土地のイノベーション産業の運命を決定づけ、給料は住む場所で決まると主張。ITやソフトウエア等のハイテク産業で新規に1件の雇用が生まれると、その地域でサービス関連の新規雇用が5件生み出されるのに対し、伝統的な製造業では、1.6件にとどまると分析、イノベーション産業は雇用を生み出さないとの先入観に反論している。

<詳細>

請求記号:332.53/nen

書誌番号:JB00104100

ISBN:9784833420822

2.野村浩子著『定年が見えてきた女性たちへ』WAVE出版(190頁,四六判)

 「定年を迎えた先輩たち」の体験談を通して、現在40~50代の均等法世代の女性たちが、アイデンティティの危機を受けとめて、定年にいかに対処していくか、そのためのヒントを探ることが本書の目的。「キャリア」「ライフ」「マネー」のみでなく、母親関係や住宅問題、心構えなどについても聞き出した。さらに著者は、どの女性に関しても、定年の前後10年ほどはこれまでの延長ではなく、リ・スタート、「変わる勇気」「捨てる勇気」が必要だと強調。新しい会社や社会から求められるものが変わるのに、過去の成功体験にしがみついていては前進できないとも主張。また、肩書きなど羽織っていたものをすっぱり捨てなければ、新しい道を模索するのが難しいのだと説く。

<詳細>

請求記号:366.38/tei

書誌番号:JB00104108

ISBN:9784872906516

3.周燕飛著『母子世帯のワーク・ライフと経済的自立』労働政策研究・研修機構(ix+195頁,A5判)

 著者は、母子世帯の貧困解消に向けて、主に就業促進の視点から調査研究を続けてきた。しかし、研究を進めるなかで、経済的にだけでなく、時間的にも貧困である家庭が多い点に注目。シングルマザーが正社員を希望しない理由の発見やワーク・ライフ・バランス(WLB)型経済的自立の表明など新たな論点を分析に加えた。問題解決に向けた著者の見解は、公的就業支援の継続と雇用システムの抜本的改革によるWLB型経済的自立の達成。これらを実現するための補完的手段として、①結婚支援②親権ルールの見直し③養育費の強制徴収制度、などを提唱している。労働経済学の視点から、統計的エビデンスに基づき、母子世帯の就業支援と貧困問題の解析を目指した意欲作。

<詳細>

請求記号:366.38/C60.81/rod/3

書誌番号:JB00104055

ISBN:9784538610108

4.ベン・ウェイバー著『職場の人間科学』早川書房(324頁,四六判)

 最近、「ビッグデータ」が流行語になっている。本書が扱う「ピープル・アナリティクス(PA、人間解析学)」とは、小型のセンサーを使って、人々の会話の量や相手、抑揚、口調などのビッグデータを記録・分析し、その結果をより効率的な職場づくりに活かすための最先端技術。著者は、労働者の生産性が最も高まるのは、会議や打ち合わせなどの公式な場でのやり取りではなく、同僚と共同作業や気楽な会話をしている間だと強調。センサーによって取得した職場の行動に関するデータを解析し、社員の生産性・満足度を上げ、会社も社員もハッピーになった事例を紹介。PAが科学的人事に不可欠な方法論となると主張、明日の組織変革を考える視座の一つを提供している。

<詳細>

請求記号:366.94/sho

書誌番号:JB00103977

ISBN:9784152094582

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2014年8月-2014年9月に労働図書館受け入れ

  1. 水島広子著『女子の人間関係』サンクチュアリ出版(214頁,四六判)
  2. 米本薫著『20代のための「王道」仕事術』幻冬舎ルネッサンス(174頁,四六判)
  3. 加賀博著『社会人基礎力』日本生産性本部生産性労働情報センター(173頁,A5判)
  4. 神作裕之他編『会社裁判にかかる理論の到達点』商事法務(xxv+666頁,A5判)
  5. 安西巧著『経団連』新潮社(223頁,新書判)
  6. ジョン・ジェラルド・ラギー著『正しいビジネス』岩波書店(xviii+275+28頁,A5判)
  7. 若松孝彦他著『ファーストコールカンパニー宣言』ダイヤモンド社(208頁,A5判)
  8. 朝日新聞「へぇな会社」取材班他著『へぇな会社』朝日新聞出版(175頁,四六判)
  9. 本田和盛著『管理職の基本と原則』労務行政(253頁,A5判)
  10. ファザーリング・ジャパンマザーリングプロジェクト編『ママの仕事復帰のために』労働調査会(179頁,A5判)
  11. 山口寛志著『裁判事例から見える労務管理の対応策』新日本法規出版(8+342頁,A5判)
  12. 中村壽伸著『経営者は昇進・昇格する人材をどのように見分けているのか』日本生産性本部生産性労働情報センター(205頁,四六判)
  13. 辻竜平他編『ソーシャル・キャピタルと格差社会』東京大学出版会(v+225頁,A5判)
  14. 佐々木育子他編著『Q&A実務家が知っておくべき社会保障』日本加除出版(xxix+396頁,A5判)
  15. 西村周三他編著『社会保障の国際比較研究』ミネルヴァ書房(x+285頁,A5判)
  16. 町田俊彦他編著『雇用と生活の転換』専修大学出版局(xiii+263頁,四六判)
  17. 企業人事労務研究会著『企業労働法実務入門』日本リーダーズ協会(349頁,A5判)
  18. 大阪労働者弁護団編集委員会編『民間労働者整理解雇と公務員労働者分限免職』大阪労働者弁護団(103頁,AB判)
  19. 中山慈夫他著『労働時間・休日・休暇・休業』中央経済社(6+8+303頁,A5判)
  20. 国際労働機関著『雇用なき回復のリスク?』一灯舎(x+132頁,AB判)
  21. 禹宗?他編『現場力の再構築へ』日本経済評論社(viii+290頁,A5判)
  22. 荒木尚志編著『有期雇用法制ベーシックス』有斐閣(xiii+248頁,A5判)
  23. 伍賀偕子著『敗戦直後を切り拓いた働く女たち』ドメス出版(120頁,四六判)
  24. トム・シート著『ミッキーマウスのストライキ!』合同出版(639頁,A5判)
  25. 細井智彦著『会社が正論すぎて、働きたくなくなる』講談社(191頁,新書判)
  26. 伊波和恵他編著『マネジメントの心理学』ミネルヴァ書房(ix+251頁,A5判)