2014年10月の図書紹介(2014年9月受け入れ図書)

1.大内伸哉著『雇用改革の真実』日本経済新聞出版社(244頁,新書判)

 本書は、解雇、有期雇用、派遣労働、ホワイトカラー・エグゼンプション、ワーク・ライフ・バランス、女性の活用、高齢者雇用などについて、政府が進める雇用政策を分析。働く人々はそれをどう評価すべきなのか、今後の働き方にどのように影響するのか。目次には「解雇しやすくなれば働くチャンスが広がる」「有期雇用を規制しても正社員は増えない」「ホワイトカラー・エグゼンプションは悪法ではない」「育児休業の充実は女性にとって朗報か」など通説と異なる刺激的な見出しが並ぶ。「限定正社員」といった新語も積極的にすくい上げ、「企業は経済合理性に基づいて労働を利用する」を前提に、労働者が幸福に職業キャリアを全うできる方策を追究している。

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請求記号:366.2/koy

書誌番号:JB00110705

ISBN:9784532262488

2.ケイトリン・リンチ著『高齢者が働くということ』ダイヤモンド社(XIII+416頁,四六判)

 本書は、医療用などの中空針を製造する米国東部の家族的経営の会社を、労働の世界を専門に研究している文化人類学者が5年にわたるインタビューや参与観察によってまとめたルポ。従業員の半分が74歳以上、最高年齢者は100歳近くという高齢者が、最低賃金に若干上乗せした賃金で、医療給付も退職給付もないのになぜ働くのか。答えは「自分がまだ生産的で役に立てると実感できる」「自分を必要としている人々に会える」こと。経営側による搾取の可能性を指摘する声には、従業員たちは、充実した人生を送っており、納得していると回答。従来の基準では引退してもおかしくない年齢の人たちが老いること、働くこと、生きがいについて現実を見すえて考察している。

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請求記号:366.28/kor

書誌番号:JB00103965

ISBN:9784478021668

3.山本勲他著『労働時間の経済分析』日本経済新聞出版社(xviii+359頁,A5判)

 著者たちは、趣味や家族との時間の増大、介護による勤務時間の減少など、「正社員ならば長時間労働」という考え方では、長期に持続可能な経済成長は見込めないと強調。また、ワーク・ライフ・バランスへの企業の取り組み不足、メンタルヘルスと企業の売上高利益率、ホワイトカラー・エグゼンプションなど労働時間規制の有無と労働時間の長さを分析、インターバル規制や有休買い取り制度など導入可能な政策を提案。本書の目的は、政府統計やパネル調査の個票データ、独自のアンケート調査の個票データ等を可能な限り利用して、多様な角度から日本人の労働時間や働き方に関する事実や問題点など本質的な議論のための基礎的なエビデンスを提供することである。

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請求記号:366.32/rod

書誌番号:JB00104118

ISBN:9784532134518

4.山田陽一著『日中労働組合交流史』平原社(xviii+265頁,A5判)

 日中両国の労働組合の60年にわたる交流の軌跡をまとめたのが本書である。1952年に日本側密航者による北京メーデー参加が非公式な戦後日中労働交流の始まりであったことを皮切りに、「平和運動目標の共有期」(1959年~1964年)、「中ソ対立・文革による労組交流中断期」(1965~1978年)までは「人民交流」の先頭に立ってすぐれて政治的性格をもつ交流だったと回顧。「最良の日中関係下の労組交流期」(1978~1989年)を経て、天安門事件で一時交流が中断するものの、その後は本来の労組間の交流として、日中間の多元的交流の一翼を担ってきたと強調。現在、日中関係は著しく悪化しているが、日中労組交流の性格を総括し、今後の交流の意義を展望している。

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請求記号:366.621/nic

書誌番号:JB00104391

ISBN:9784938391515

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2014年7月-2014年8月に労働図書館受け入れ

  1. 大西裕著『先進国・韓国の憂鬱』中央公論新社(vi+264頁,新書判)
  2. 三浦まり他編著『ジェンダー・クオータ』明石書店(273頁,A5判)
  3. 松山一紀著『日本人労働者の帰属意識』ミネルヴァ書房(ix+255頁,A5判)
  4. 大西謙編著『老舗企業にみる100年の知恵』晃洋書房(viii+240頁,A5判)
  5. 江上範博著『次世代リーダー読本』日本生産性本部生産性労働情報センター(vii+143頁,A5判)
  6. マイケル・A・ウェスト著『チームワークの心理学』東京大学出版会(x+394頁,A5判)
  7. 三冨圭著『会社があなたを選ぶ理由の作り方』幻冬舎ルネッサンス(238頁,四六判)
  8. 榎一江他編著『労務管理の生成と終焉』日本経済評論社(iv+362頁,A5判)
  9. ロア・ユナイテッド法律事務所編『メンタルヘルスの法律問題』青林書院(33+520頁,A5判)
  10. 金子勇著『「成熟社会」を解読する』ミネルヴァ書房(xviii+284+6頁,A5判)
  11. 本沢巳代子他編『トピック社会保障法』不磨書房(xx+278頁,A5判)
  12. 樫田秀樹著『自爆営業』ポプラ社(228頁,新書判)
  13. 清水直子著『ブラック企業を許さない!』かもがわ出版(134頁,A5判)
  14. 道幸哲也他著『ワークルール検定:中級テキスト』旬報社(266頁,A5判)
  15. 山本寛著『働く人のためのエンプロイアビリティ』創成社(xvi+334頁,A5判)
  16. 筒井美紀他編著『就労支援を問い直す』勁草書房(ix+224頁,A5判)
  17. 脇田滋他編『常態化する失業と労働・社会保障』日本評論社(xi+332頁,A5判)
  18. 里中高志著『精神障害者枠で働く』中央法規出版(206頁,A5判)
  19. 日本ドリームプロジェクト編『あたらしい働く理由をみつけよう』いろは出版(159頁,A5判)
  20. 水谷英夫著『職場のいじめ・パワハラと法対策』民事法研究会(22+339頁,A5判)
  21. 森田慎二郎著『日本産業社会の形成:福利厚生と社会法の先駆者たち』労務研究所(10+xii+284頁,A5判)
  22. 林伸二『人と組織を変える自己効力』同文舘出版(xii+178+17頁,四六判)
  23. 浅井隆他編著『最新裁判例にみる職場復帰・復職トラブル予防のポイント』新日本法規出版(406頁,A5判)
  24. 山岸敬和著『アメリカ医療制度の政治史』名古屋大学出版会(iv+317+52頁,A5判)
  25. 石田光男他編著『GMの経験:日本への教訓』中央経済社(iv+264頁,A5判)
  26. 于建嶸著『安源炭鉱実録』集広舎(544頁,A5判)