2014年9月の図書紹介(2014年8月受け入れ図書)

1.小塩隆士著『「幸せ」の決まり方』日本経済新聞出版社(308頁,四六判)

 「幸福の経済学」が最近注目を集めている。本書の目的は、経済学だけでなく、社会学や社会疫学等のアプローチも取り入れ、「主観的厚生」(=幸せ・満足度など)が、どのような要因によって、どのように決まるのかを、個票データに基づいて解明することである。具体的には、所得格差に対する主観的認識、夫婦間家事分担、子どもの虐待・いじめ・貧困経験、仕事のキャリアや居住環境、所得変動や仕事のストレスと主観的厚生との関係を分析している。さらに中国・韓国などの諸外国との比較を通じて、主観的厚生の実態を明らかに。主観的厚生分析の成果が、政策評価や政策立案にどのように活用できるかにも言及。多くの研究者との共同研究の成果を一書にまとめた。

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請求記号:331/shi

書誌番号:JB00103774

ISBN:9784532134495

2.宮本光晴著『日本の企業統治と雇用制度のゆくえ』ナカニシヤ出版(268頁,A5判)

 著者は、当機構が実施した各2回の企業調査と従業員調査を基に、1990年代終盤以降の日本の企業統治と雇用制度の変化を分析するとともに、リーマン・ショック後のゆくえを追究。企業統治に関しては株主重視と執行役員制、雇用制度に関しては長期雇用と成果主義、解雇規制と非正規雇用問題を取り上げ、企業統治の変化が及ぼす長期雇用・成果主義への影響、長期雇用を維持したうえで成果主義の導入を図る「新日本型」の有効性を考察。従業員が株主価値重視経営を支持する特徴があることも指摘。日本企業の制度変更は、変化と持続の両面から成り立つ漸進型であり、日本型企業システムは、微妙なバランスに基づく、異質な要素が複合するハイブリット型であるという。

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請求記号:335.4/nih

書誌番号:JB00103661

ISBN:9784779508240

3.濱口桂一郎著『日本の雇用と中高年』筑摩書房(238頁,新書判)

 本書は、日本型雇用システムが不可避的にもたらす構図を中心に据え、中高年雇用という視点から日本の雇用システムと雇用政策の流れを戦後から概観。1960年代前半には、日本は欧米流のジョブ型労働社会・職務給を目指していたが、後半には、経営側が急速な技術革新に対応するため、大規模な配置転換が可能な職能給にカジを転換。70年代に発生した石油危機により中高年受難時代は決定的となる。著者は、人件費抑制を目指す成果主義やホワイトカラー・エグゼンプションなどの中高年問題を解決するには、ジョブ型労働の実現が不可欠と主張するが、世代間の損得を捨てて、教育・社会保障を含む社会システム全体の中で、再挑戦が可能な改革論議が必要だとも強調。

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請求記号:366.28/nih

書誌番号:JB00103980

ISBN:9784480067739

4.大西康之著『会社が消えた日』日経BP社(323頁,四六判)

 かつて携帯電話でヒットを飛ばし、売り上げ2兆円を記録したこともある三洋電機は、2011年3月に上場廃止となり、パナソニックの子会社となった。世界に10万人いた社員のうち、パナソニックに残った約9000人を除き、残り9万人余りは会社の外に。本書は、「三洋という巨大企業がなぜ消滅するに至ったのか」「9万人の元社員はいまどこで何をしているのか」などに焦点を当て、三洋のその後を浮かび上がらせている。最先端技術を持つ技術者が韓国メーカーに転職するケースや、どのような経営をしているか不明な中国企業に移って苦悩する元三洋マン、校長先生に転進する前の最後のセールスとして、ホームベーカリー「ゴパン」を大ヒットさせた社員などが登場。

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請求記号:540.67/kai

書誌番号:JB00103975

ISBN:9784822250171

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2014年6月-2014年7月に労働図書館受け入れ

  1. 田口智隆著『「お金がない人」の残念な働き方』廣済堂出版(223頁,四六判)
  2. 柳内啓司著『「ご指名社員」の仕事術』小学館(189頁,四六判)
  3. 小尾惠一郎著『経済事象に潜在する構造の探求』慶應義塾大学出版会(xiii+347頁,B5判)
  4. 大垣昌夫他著『行動経済学』有斐閣(viii+272頁,A5判)
  5. 山田美和編『東アジアにおける移民労働者の法制度』日本貿易振興機構アジア経済研究所(v+288頁,A5判)
  6. 原田勉著『イノベーション戦略の論理』中央公論新社(vi+200頁,新書判)
  7. 大久保幸夫著『会社を強くする人材育成戦略』日本経済新聞出版社(243頁,新書判)
  8. 上林憲雄他編著『現代人的資源管理』中央経済社(ii+viii+291頁,A5判)
  9. 奥林康司他編著『多様な人材のマネジメント』中央経済社(x+viii+210頁,A5判)
  10. 大久保幸夫著『マネジャーのための人材育成スキル』日本経済新聞出版社(184頁,新書判)
  11. 楠木新著『働かないオジサンの給料はなぜ高いのか』新潮社(219頁,新書判)
  12. 阿部久美子著『職場コミュニケーション熟達の極意』経団連出版(155頁,四六判)
  13. 太郎丸博編『東アジアの労働市場と社会階層』京都大学学術出版会(vi+240頁,A5判)
  14. 新川敏光著『福祉国家変革の理路』ミネルヴァ書房(x+347+6頁,A5判)
  15. 秋山謙一郎著『ブラック企業経営者の本音』扶桑社(183頁,新書判)
  16. 水町勇一郎著『労働法』有斐閣(xxii+522頁,A5判)
  17. 佐藤良仁著『50歳からの新しい稼ぎ方』クロスメディア・パブリッシング(189頁,新書判)
  18. 竹内圭著『人事課桐野優子』ザメディアジョン(167頁,四六判)
  19. 山田敏博著『入社1年目から始める会社に縛られないキャリアの築き方』幻冬舎メディアコンサルティング(217頁,四六判)
  20. 小嶌典明著『国立大学法人と労働法』ジアース教育新社(340頁,四六判)
  21. 佐藤大輔編著『「創造性」を育てる教育とマネジメント』同文舘出版(vii+227頁,A5判)
  22. 阿曽沼明裕著『アメリカ研究大学の大学院』名古屋大学出版会(vi+487頁,A5判)
  23. 中原淳他編『活躍する組織人の探究』東京大学出版会(viii+192頁,A5判)
  24. 梶原豊他著『大学生のキャリア開発』同友館(vi+193頁,A5判)
  25. 吉田文紀著『人と社会を幸せにする仕事』幻冬舎メディアコンサルティング(192頁,四六判)
  26. 山口拓朗著『なぜ皇居ランナーの大半は年収700万以上なのか』KADOKAWA(186頁,新書判)