2014年8月の図書紹介(2014年7月受け入れ図書)

1.佐藤博樹他編『ワーク・ライフ・バランス支援の課題』東京大学出版会(ix+305頁,A5判)

 ワーク・ライフ・バランス(WLB)社会実現のための具体的施策の展開に手詰まり感を感じた編者らは、2008年10月、WLB推進・研究プロジェクトを立ち上げ、5年半にわたって研究を継続。本書は、前著『ワーク・ライフ・バランスと働き方改革』の後の2013年3月までの2年間の研究活動の成果。3部構成で、前著で取り上げた働き方改革をさらに追究するとともに、女性の活躍推進、仕事と介護の両立支援という課題にも取り組み、現状分析と課題を提起。前者については、女性の能力が十分発揮できているか疑問視、ダイバーシティ経営戦略の下で女性の活躍をどう進めるかを検討。後者については、仕事と育児の両立とは異なった考え方で進める必要性を指摘している。

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請求記号:336.4/wak

書誌番号:JB00103658

ISBN:9784130511384

2.大内伸哉編『有期労働契約の法理と政策』弘文堂(xii+306頁,A5判)

 労働契約法が2012年に改正され、判例法理だった雇止め制限法理の成文化、有期契約を更新し通算5年を経過した場合の無期転換ルールの導入、処遇の格差について不合理な労働条件の禁止、という規制が設定された。しかし、この改正は、法律面での議論や労働市場からの批判が強く、見直しの議論が継続中である。本書は、このような政策論議を検討するうえでの基礎理論的基盤となることを目指している。改正の経緯と内容、これまでの議論状況を整理して法理論的位置づけを確認、欧米諸国や中国・韓国との比較法的検討を行うとともに、経済学的視点から有期労働契約を理論と実証の両面から検討。最後に編者が、有期労働契約のあるべき政策について考察している。

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請求記号:366.51/yuk

書誌番号:JB00103637

ISBN:9784335355943

3.エミリー・マッチャー著『ハウスワイフ2.0』文藝春秋(293頁,四六判)

 米国では現在、20~30歳代の高学歴女性の間で「主婦回帰」の流れが発生。本書は、こうした衝撃的な事実を詳細にレポートし、米国の有力紙誌で取り上げられ、全米で論争を呼んだ。背景には、ベビーブーマーにあたる母親世代の働き方、生き方への強い反発があると指摘。男性優位社会で、ガラスの天井を破るために家庭を犠牲にして働き続けた母親たちを冷静に見つめている。また、一流大学を卒業しても就職がままならず、就職できても長時間労働という労働環境の変化も一因。不合理な社会を拒んでも生きていける人が、食の安全や手作りの家事、子育てに価値を見いだし、家庭に戻っているという。こうした現象は、日米で進行だが、まだ発展途上状態だと言える。

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請求記号:7.253/hau

書誌番号:JB00103663

ISBN:9784163900278

4.濱中淳子著『検証・学歴の効用』勁草書房(xiii+243+xiii頁,四六判)

 本書は、「『学歴の効用』の現状を正確に理解しているか」「勉強し、教育を受け、学歴を取得すること以外に、自分自身の力で少しでも状況をよくする手段がどれだけあるか」との問題を探るのが狙い。賃金統計から、大卒学歴の効用が増大していることを析出。企業内外の労働経験をより成長に結びつけているのは大卒で、高卒では周囲の助けにより成長する側面が見られる一方、大卒の成長は自己学習によって生じていると分析。また、同じ大卒という学歴を取得しても、その後の所得にはバラつきがみられるが、その原因は大学時代の学習行動や読書にあるという。女性の大学進学、専門学校、大学院卒学歴の効用も追究。教育・学歴の効用は全般的に大きいとしている。

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請求記号:377/ken

書誌番号:JB00103662

ISBN:9784326653812

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2014年5月-2014年6月に労働図書館受け入れ

  1. 佐藤智恵著『世界のエリートの「失敗力」』PHP研究所(233頁,新書判)
  2. 瀬川晃他著『ダイバーシティ時代における法・政治システムの再検証』成文堂(vii+210頁,A5判)
  3. 松本和彦編『日独公法学の挑戦』日本評論社(xiv+320頁,A5判)
  4. 松田陽一他編著『リーディングス組織経営』岡山大学出版会(vii+323頁,A5判)
  5. メアリー・アン・ボップ他著『IBMのキャリア開発戦略』同友館(xvii+263頁,A5判)
  6. 大江橋法律事務所中国プラクティスグループ編著『中国法実務教本』商事法務(xxix+559頁,A5判)
  7. 大原利夫著『社会保障の権利擁護』法律文化社(x+301頁,A5判)
  8. 伊澤明他著『こちら労働相談所』創風社(165頁,A5判)
  9. 吉田典史著『悶える職場』光文社(293頁,四六判)
  10. 溝上憲文著『辞めたくても、辞められない!』廣済堂出版(191頁,新書判)
  11. 久本貴志著『アメリカの就労支援と貧困』日本経済評論社(x+232頁,A5判)
  12. 毛塚勝利他編『アクチュアル労働法』法律文化社(viii+340頁,A5判)
  13. シティユーワ法律事務所編『なるほど図解労働法のしくみ』中央経済社(ii+xiii+180頁,A5判)
  14. 金井正元著『労働法を基本から』三省堂(x+226頁,A5判)
  15. 土田道夫著『ケースブック労働法』弘文堂(xxi+619頁,A5判)
  16. 野川忍著『労働判例インデックス』商事法務(17+369頁,A5判)
  17. 中澤高志著『労働の経済地理学』日本経済評論社(x+317頁,A5判)
  18. 藤本直規他著『若年認知症の人の“仕事の場づくり”Q&A』クリエイツかもがわ(125頁,A5判)
  19. 阿部正浩他編『キャリアのみかた』有斐閣(xvi+294頁,四六判)
  20. 吉田あけみ編著『ライフスタイルからみたキャリア・デザイン』ミネルヴァ書房(viii+229頁,A5判)
  21. ミリアム・グラックスマン著『「労働」の社会分析』法政大学出版局(xix+283+18頁,A5判)
  22. 菅野和夫他著『詳説労働契約法』弘文堂(xii+456頁,A5判)
  23. 大理奈穂子他著『高学歴女子の貧困』双風舎(187頁,新書判)
  24. 武田尚子著『20世紀イギリスの都市労働者と生活』ミネルヴァ書房(xiii+556頁,A5判)
  25. 障害者差別解消法解説編集委員会編著『概説障害者差別解消法』法律文化社(vi+161頁,A5判)
  26. トーマス・C.ジェプセン著『女性電信手の歴史』法政大学出版局(xiv+270+42頁,A5判)