2014年7月の図書紹介(2014年6月受け入れ図書)

1.佐藤留美著『資格を取ると貧乏になります』新潮社(187頁,新書判)

 弁護士や公認会計士、社会保険労務士といったいわゆる「サムライ業」資格の現状と問題点等を取り上げ、「これらの資格で一生安泰なんて大ウソ!」と指摘する。近年の規制緩和で資格取得者が激増したものの、その割に仕事は増えないため、過当競争とダンピングが常態化し、「資格貧乏」があふれかえっているのが「資格取得=安泰」とならないその理由。本書は、とくに弁護士にページの多くを割き、国策として試験合格者数を増やされた結果、供給過多になってしまった問題をヒモ解いていく。ほかに公認会計士、税理士、社会保険労務士など花形資格ビジネスの知られざる裏事情を解説。著者は、人の役に立つという資格・仕事の本質に立ち帰ることの重要性を指摘する。

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請求記号:317.4/shi

書誌番号:JB00103605

ISBN:9784106105593

2.朝日新聞経済部著『限界にっぽん』岩波書店(xii+232+6頁,四六判)

 余剰になった社員を集め、仕事を与えなかったり、単純作業をやらせたりしながら自己退職や転職に追い込む。長期・未曾有の円高やグローバル競争を受け、陰湿なリストラが優良大手企業とされる「勝ち組」にまで広がった。バブル崩壊から20年、この間、法人減税や雇用規制の緩和で企業は利益を確保しやすくなったが、巨額の内部留保を積み上げただけで、働き手への還元は二の次になったという。著者らが時間をかけて新たな事実を掘り起こした結果、「追い出し部屋」「マクド難民」などの惨状が浮上。サラリーマン社会、中流層が崩れていき、働き手を疲弊させるだけの社会に未来はあるかと問う。朝日新聞に2012年8月から13年11月まで連載された記事に大幅加筆。

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請求記号:366.021/gen

書誌番号:JB00103650

ISBN:9784000227988

3.原克著『OL誕生物語』講談社(332頁,四六判)

 OL(都市型知的女性労働者)は、いつごろ、どのようにして生まれ、何を思って仕事をしたか。舞台は、1920−30年代の東京お茶の水。取り上げるのは女性の花形職業だったタイピスト。人々の息づかいを立体的に再構成するため、『サラリーマン誕生物語』と同じく、阿部礼二(average)を主人公とした物語風のスタイルを取って叙述。雑務ばかりを割り振られ、重要な仕事を任されず、昇進もなし、職場の花でいるように求められるなど、現代の女性労働者が直面する問題は、すでにこのころの職業婦人にも発生していた。男性原理中心主義が根強く残り、効率化の名のもと、最新オフィス機器が次々と登場。そんな職場環境で奮戦する女性知的労働者の姿が描写されている。

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請求記号:366.38/olt

書誌番号:JB00103595

ISBN:9784062187909

4.森川正之著『サービス産業の生産性分析』日本評論社(viii+312頁,A5判)

 日本経済が長期低迷に陥って約20年。経済の持続的成長には生産性の向上が不可欠で、なかでも全産業の7割のウエートを占めるサービス産業の生産性向上がカギを握っている。有効な政策の企画・立案には、実証分析を通じた基礎的なエビデンスの蓄積が大前提。このため、企業・事業所レベルのミクロデータを用いて生産性に影響する諸要因を整理し、実証的事実の政策的含意を考察。サービス業では企業間・事業所間での生産性格差が大きく、コーポレート・ガバナンス、経営力、労働者のマネジメント等が生産性に重要な関わりを持っているという。利用可能なサービス産業の統計データが限られているなかで、本書は、世界的にも新規性の高い研究成果であると自負。

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請求記号:673.9/sab

書誌番号:JB00103603

ISBN:9784535557703

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2014年4月-2014年5月に労働図書館受け入れ

  1. 現代行政法講座編集委員会他編『自治体争訟・情報公開争訟』日本評論社(xxiii+390頁,A5判)
  2. 山之内三紀子編『離婚・内縁解消の法律相談』青林書院(xxv+567頁,A5判)
  3. 菊地伸他著『会社法改正法案の解説と企業の実務対応』清文社(x+217頁,A5判)
  4. 畠田公明著『会社の目的と取締役の義務・責任』中央経済社(vi+315頁,A5判)
  5. 橘木俊詔編著『幸福=Happiness』ミネルヴァ書房(vi+193頁,B5判)
  6. 都丸善央著『公私企業間競争と民営化の経済分析』中央大学経済学部(vii+204頁,A5判)
  7. 李允福他著『現代韓国経済:入門テキスト』つげ書房新社(211頁,A5判)
  8. 川村遼平著『若者を殺し続けるブラック企業の構造』KADOKAWA(209頁,新書判)
  9. ワーカーズ・コレクティブネットワークジャパン著『小さな起業で楽しく生きる』ほんの木(250頁,四六判)
  10. 菅原貴与志著『詳解個人情報保護法と企業法務』民事法研究会(21+374頁,A5判)
  11. 北居明著『学習を促す組織文化』有斐閣(xii+279頁,A5判)
  12. 渡邊岳他著『社員の不祥事・トラブル対応マニュアル』労務行政(394頁,A5判)
  13. 井上恒男著『英国所得保障政策の潮流』ミネルヴァ書房(ix+250頁,A5判)
  14. 石原良太郎他編著『よくわかる社会政策』ミネルヴァ書房(v+209頁,B5判)
  15. 今野晴貴他著『ブラック企業VSモンスター消費者』ポプラ社(189頁,新書判)
  16. 国際労働機関(ILO)他著『経済・社会の構造を修復する』一灯舎(143頁,B5判)
  17. 東京弁護士会労働法制特別委員会編著『新労働事件実務マニュアル』ぎょうせい(xvii+602頁,B5判)
  18. 橋詰岳幸著『ブラック企業を見極めろ』ブイツーソリューション(217頁,四六判)
  19. 道幸哲也他著『労働法』日本評論社(vi+292頁,A5判)
  20. 西谷敏他著『日本の雇用が危ない』旬報社(263頁,A5判)
  21. 鹿毛理恵著『国際労働移動の経済的便益と社会的費用』日本評論社(xv+396頁,A5判)
  22. 大森真紀著『世紀転換期の女性労働:1990年代~2000年代』法律文化社(vii+246頁,A5判)
  23. 佐藤瑠美著『3・11後の労働のデザイン:労働と表現の関係性を探る』双風舎(212頁,A5判)
  24. 角田慰子著『知的障害福祉政策にみる矛盾』ぶねうま舎(iii+261頁,A5判)