2014年6月の図書紹介(2014年4月受け入れ図書)

1.脇田成著『賃上げはなぜ必要か』筑摩書房(374+v頁,四六判)

 賃上げを行うことで、消費が伸び、企業の生産・販売活動が活発化し、労働者の所得が増加、それに伴い、新たな雇用が創出される。こうした好循環を生み出すため、アベノミクスを掲げる政府は、先の春季労使交渉で、労使に異例の賃上げを要請。本書は、日本経済に元気がないのは、90年代以降、企業が国内投資と人件費を抑制し、内部留保を増大させ、経済全体の資金循環が大幅に狂ったことによると解説。過剰な企業貯蓄を正すため、賃上げを行い、資金循環の再始動が必要だとのマクロ経済政策の本筋にそった日本経済再生論を提示。著者はまた、日本経済の問題として財政悪化、社会保障制度とともに少子高齢化をあげ、粛々と対策を打っていくことも提案している。

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請求記号:332.1/chi

書誌番号:JB00103615

ISBN:9784480015938

2.見波利幸著『劣化するシニア社員』日本経済新聞出版社(205頁,新書判)

 改正高年齢者雇用安定法の施行により増加しているシニア社員がいま、縦横無尽な振る舞いで多くの職場を翻弄している。長年培ってきた技術や専門性を若手社員に継承できれば活用法は成功。しかし、自己愛が強くて職場になじめず、過去の栄光から新たな知識やスキルを身につけるのに躊躇してしまう人が少なくない。著者は、シニア社員の問題を6つのタイプに分け、背景的要因を探り、有効な対策を検討する。一方、受け入れる側の問題として、管理職の配慮不足などやる気を奪う職場環境や周囲の社員の思い込みにも言及、若手と同じ配慮が必要だと主張する。シニア本人も苦しんでおり、働く意味も見失いやすいので、新たな「仕事の価値観」の創造が必要だとも強調。

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請求記号:336.42/rek

書誌番号:JB00103627

ISBN:9784532262402

3.猪木武徳編『<働く>は、これから』岩波書店(xii+212頁,四六判)

 「仕事の内容や就労形態の多様化のなかで、どこに労働の意味と位置づけを見出すのか」「高齢化と人口減少は、ライフコースにどのような影響を及ぼすのか」など6人のそうそうたる経済学者、社会学者らが、6回の現地調査と統計データ、6人の専門家の報告と質疑応答に基づき分析。雇用改革については、新規学卒一括採用や長期雇用制度の維持を主張する一方、定年年齢の引き上げとセットで年功賃金のフラット化を提唱。日本人は、高齢期になっても就労意欲を失わず、企業が高齢者に求める能力を持っていれば、高齢者であっても中途採用されると主張、最終章で編者は、労働における自発性と協働性の重要性を指摘。「成熟社会の労働哲学研究会」が生んだ成果である。

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請求記号:366.04/hat

書誌番号:JB00103618

ISBN:9784000244756

4.リヴァ・フロイモヴッチ著『僕たちが親より豊かになるのはもう不可能なのか』阪急コミュニケーションズ(276頁,四六判)

 公的助成の減少に伴う教育システムの弱体化、低賃金労働の急増、経済回復後も高い貧困率、不平等格差の拡 大。1976年~2000年に生まれた米国のY世代といわれる若者は、賃金は低く、雇用は不安定で、税金は高いの に、社会保障は減る層だとされる。いずれも日本にも当てはまる問題だが、欧州連合(EU)や新興国にも共通 のものであると指摘。若者は世界中の労働市場で不利な立場に置かれ、低収入の仕事の連鎖に巻き込まれている。 著者は、史上もっとも高学歴なのに職につけない若者のために「青年局」の設置を提案するとともに、4年制大 学に代わる選択肢や奨学金の増額、インターンシップ・プログラムや職業指導・技能訓練などのごく真っ当な雇 用政策も提唱。

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請求記号:366.2/bok

書誌番号:JB00103624

ISBN:9784484141039

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2014年3月-2014年4月に労働図書館受け入れ

  1. 北村行夫他編『Q&A引用・転載の実務と著作権法』中央経済社(iv+10+240頁,A5判)
  2. リリー・レッドベター他著『賃金差別を許さない!』岩波書店(vi+295頁,A5判)
  3. 中原茂樹著『基本行政法』日本評論社(480頁,A5判)
  4. 橋本博之著『行政法解釈の基礎』日本評論社(282頁,A5判)
  5. 正木宏長著『行政法と官僚制』成文堂(vi+263頁,A5判)
  6. 秋武憲一他編著『離婚調停・離婚訴訟』青林書院(xxvii+278頁,A5判)
  7. 岡口基一著『過払金・消費者保護・行政・労働』ぎょうせい(xviii+607頁,A5判)
  8. 東京地裁破産再生実務研究会編著『破産・民事再生の実務』金融財政事情研究会(30+487頁,A5判)
  9. 塩見治人他編著『名古屋経済圏のグローバル化対応』晃洋書房(x+304頁,A5判)
  10. ビセンス・ナバロ他著『もうひとつの道はある』拓植書房新社(277頁,四六判)
  11. 吉川達夫他編著『コンプライアンス違反・不正調査の法務ハンドブック』中央経済社(ii+vi+204頁,A5判)
  12. 古沢昌之著『「日系人」活用戦略論』白桃書房(xi+251頁,A5判)
  13. 石嵜信憲他編著『懲戒権行使の法律実務』中央経済社(xvii+666頁,A5判)
  14. 西村淳著『所得保障の法的構造』信山社(xi+293頁,A5判)
  15. 新谷眞人編『労働法』弘文堂(xii+240頁,A5判)
  16. 高仲幸雄著『実務家のための労働判例読みこなし術』労務行政(431頁,A5判)
  17. 吉田利宏著『実務家のための労働法令読みこなし術』労務行政(223頁,A5判)
  18. 細谷越史著『労働者の損害賠償責任』成文堂(viii+220頁,A5判)
  19. 小川和憲著『労働力価値論の再検討』鉱脈社(89頁,A5判)
  20. 石井京子他著『人事担当者のための発達障害の人の面接・採用マニュアル』弘文堂(viii+173頁,A5判)
  21. 日本エクストリーム出社協会編『サラリーマンは早朝旅行をしよう!』SBクリエイティブ(174頁,新書判)
  22. 大村美保著『一般就労する知的障害者の経済的自立と地域生活』久美(142頁,A5判)
  23. 荒牧重人他編『子どもの権利アジアと日本』三省堂(221頁,A5判)
  24. 古郡鞆子他編著『肥満と生活・健康・仕事の格差』日本評論社(x+253頁,A5判)
  25. 緒方俊雄著『すぐ会社を休む部下に困っている人が読む本』幻冬舎(219頁,新書判)
  26. 長田華子著『バングラデシュの工業化とジェンダー』御茶の水書房(xxii+313頁,A5判)