2014年5月の図書紹介(2014年4月受け入れ図書)

1.大内伸哉著『君の働き方に未来はあるか?』光文社(241頁,新書判)

 本書は「正社員であれば安泰」という時代は過去のものになったと警告する。今後の社会で安泰なのは、ごく限られたエリート層だけであり、「真の意味での正社員」と呼べない人が増えていくという。その一方で、解雇や労働時間規制といった伝統的な労働法の保護が今後は減らされ、正社員としてのメリットはますます低下していくと指摘。労働者が生き延びていくためには、産業界が求める汎用的なスキルを身につけ、転職力をもつプロ的な正社員になる自覚が必要だと、これからの働き方に迷っている人たちに指針を提示。正社員になることに執着する社会的風潮に大きな危険性を感じ、労働法に頼りきらずに自立するとともに、多くのプロとの連帯も主張する。

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請求記号:366/kim

書誌番号:JB00042023

ISBN:9784334037796

2.松浦司編著『高齢社会の労働市場分析』中央大学出版部(xiv+266頁,A5判)

 高齢社会の“先進国”である日本。高齢化率は2050年には40%と予想され、主要国と比べてもその割合は高い。編者は、高齢化が経済成長を低下させ、経済成長率の低下は失業率の上昇をもたらし、出生率の低下は高齢化を加速させると指摘。本書は、経済学者と人口学者によって、高齢化が労働市場に与える影響を総合的に分析。マクロ経済分析、地域分析、国際化、雇用慣行・政策の未来の4つの視点からの論文で構成。第Ⅰ部では、高齢化による就業減少、労働生産性、GDPへの影響をマクロ分析。所得・貧困等の地域間格差を分析した第Ⅱ部に続き、第Ⅲ部の国際化では、外国人労働者問題、企業の海外生産移転を追究、第Ⅳ部で人事制度・雇用政策の未来を展望する。

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請求記号:366.21/kor

書誌番号:JB00042080

ISBN:9784805722527

3.宮川真紀著『女と金』アストラ(262頁,四六判)

 働く女性の暮らし向きや人生観、経済状況などを女性誌30年分を基に分析。80年代初頭のOLにとってお金は「使うもの」。自己啓発につなげる使い方をする女性もいたが、均等法が施行され、建前上は男女同一賃金になったものの、男女格差の存在に不満の声が続出。その後のDCブランドブーム、90年代のバブル経済と崩壊を経て、自己防衛するOLと諦観する氷河期組が現れた。2000年代には派遣社員が台頭し、OLに取って代わり、「女子」が氾濫。著者は、平等でジェンダーフリー、性を意識させない言葉だという。そして、10年代は、女性誌が標榜するライフスタイルに収まらないほど働き方が多様化。女子の財布を見ていくことで、社会の中での立ち位置を検証する。

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請求記号:367.21/onn

書誌番号:JB00042024

ISBN:9784901203531

4.池谷秀登編著『生活保護と就労支援』山吹書店(172頁,A5判)

 東京都練馬区や神戸市、新潟県見附市など7つの福祉事務所による生活保護受給者への就労支援の具体的な取り組みを紹介。背景や状況などは異なるものの、いずれも生活保護受給者とケースワーカーが課題について時間をかけて話し合い、その解決に向けて歩んでいる。その結果、生活保護廃止になる人がいる一方で、就労を始めたが収入額によっては保護が継続される人もいる。解決すべき課題も少なくないが、保護受給者が納得し、ケースワーカーもやりがいを感じるという達成感のある就労支援を築きあげる可能性があると指摘。序章と終章では、福祉事務所における就労支援の問題点を検討、寄り添う支援、中間的就労、現在の雇用をめぐる状況との関係などの課題を提示。

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請求記号:369.2/sei

書誌番号:JB00042025

ISBN:9784906839278

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2014年2月-2014年3月に労働図書館受け入れ

  1. 森勇他編『ドイツ弁護士法と労働法の現在』中央大学出版部(viii+256頁,A5判)
  2. 岸田眞代編著『企業が伸びる地域が活きる』パートナーシップ・サポートセンター(141頁,A5判)
  3. 堀公俊著『ビジュアルビジネス・フレームワーク』日本経済新聞出版社(159頁,新書判)
  4. 米田巖著『部長の資格』講談社(226頁,新書判)
  5. 咸惠善著『人材イノベーション』白桃書房(x+336頁,A5判)
  6. 松永憲吾著『全員65歳継続雇用時代の新しい定年後の賃金・処遇制度』東京図書出版(156頁,A5判)
  7. 野中郁江他編著『ファンド規制と労働組合』新日本出版社(189頁,四六判)
  8. 釘原直樹著『人はなぜ集団になると怠けるのか』中央公論新社(vi+252頁,新書判)
  9. 大沢真理著『生活保障のガバナンス』有斐閣(xv+441頁,A5判)
  10. 徐婉寧著『ストレス性疾患と労災救済』信山社(xiv+434頁,A5判)
  11. 日野瑛太郎著『あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。』東洋経済新報社(167頁,四六判)
  12. 高橋祐吉著『現代日本における労働世界の構図』旬報社(275頁,A5判)
  13. 西谷敏他編著『労働法の基本概念』旬報社(x+258頁,A5判)
  14. 田沢由利著『在宅勤務(テレワーク)が会社を救う』東洋経済新報社(233頁,四六判)
  15. 浅井隆他共著『リスクを回避する労働条件ごとの不利益変更の手法と実務』日本法令(207頁,A5判)
  16. 石田久仁子他編著『フランスのワーク・ライフ・バランス』パド・ウィメンズ・オフィス(270頁,A5判)
  17. 二神能基他監修『働かない息子・娘に親がすべき35のこと』アース・スターエンターテイメント(191頁,四六判)
  18. 阿部彩著『解決策を考える』岩波書店(ix+240+14頁,新書判)
  19. 勢古浩爾著『定年後のリアル』草思社(248頁,A6判)
  20. 角田由紀子著『性と法律』岩波書店(iv+259+5頁,新書判)
  21. 関満博著『「人と暮らしと仕事」の未来』新評論(366頁,A5判)
  22. 耳塚寛明編『教育格差の社会学』有斐閣(xii+248頁,四六判)
  23. 藤本隆宏著『現場主義の競争戦略』新潮社(221頁,新書判)
  24. 高杉晋吾著『原発の底で働いて』緑風出版(213頁,A5判
  25. 谷川史郎著『革新者の時代』東洋経済新報社(206頁,A5判)
  26. 梅原淳著『JR崩壊』KADOKAWA(197頁,新書判)