2014年3月の図書紹介(2014年2月受け入れ図書)

1.影山摩子弥著『なぜ障がい者を雇う中小企業は業績を上げ続けるのか?』中央法規(271頁,四六判)

 障がい者雇用の経営上の効果について企業にアンケート調査を行うとともに、関係者にヒアリングを実施、障がい者には、経営を改善する力があると指摘。5社の雇用のきっかけ、経営に与えた影響を紹介し、障がい者の雇用を経営上の効果につなげる9つのポイントを抽出する。経営改善につなげることで企業と障がい者双方の利益になるという。

2.宮本太郎編『生活保障の戦略』岩波書店(229頁,四六判)

 誰もが弱者になりえる時代が到来し、生活保障システムの再構築が喫緊の課題。本書は、これまでの教育→雇用→社会保障という一方通行の生活保障の転換を第一線の論者が寄稿。雇用の揺らぎ、社会保障の欠落、企業の能力開発の機能不全に対し、人々の暮らしの持続可能性を模索。全労済協会プロジェクト「生活保障研究会」の議論の成果。

3.大内伸哉著『解雇改革』中央経済社(x+223頁,B5判)

 解雇ルールは岐路に立っているというのが著者の考え。第二次安倍政権が誕生し、解雇法制の見直し論議が再燃しているが、日本の解雇法制は、複雑な構造を持っているために全容を解明するのが困難だと指摘。新たな解雇法制のあり方として、企業内での分権的・自治的規制モデル、不当解雇の制裁としての金銭解決制度の導入を提唱している。

4.根本到他編『労働法と現代法の理論(上・下)』日本評論社(上=vi+544頁、下=iv+538頁,A5判)

 労働者の自己決定や意思・合意に新たな光を当てた西谷敏教授の古稀を記念し、門下生や交流のあった研究者43名が労働法を取り巻く最新のトピック等に関する記念論文を寄稿。総ページ数1,000頁を超える大著となった。取り上げた内容は「総論・現代法」「労働法と個人」「比較法・外国労働法」などの4部構成。巻末に詳細な著作目録を掲載。

5.清家篤著『雇用再生』NHK出版(244頁,B6判)

 労働経済学の第一人者が雇用再生、持続可能な働き方への道筋を提示。終身雇用、年功賃金等について、労働経済学の知見により検証、雇用改革は環境変化に対応し、科学的分析に基づいたものであるべきと主張する。新規学卒一括採用、同一労働・同一賃金、付加価値生産性についても意見を披露。塾長として多忙な中でまとめられた警世の書。

6.常見陽平著『「就社志向」の研究』KADOKAWA(214頁,新書判)

 感情論を乗り越え、若者の雇用問題の事実をとらえるのが目的。現在の若者はノマドや起業を志向しているかのように言われるが、正社員を志望し、多くは正社員になっていると強調。新卒一括採用は若者の可能性にかけるもので必要悪だが、煩雑化する就活は悪と断定。就活後は、希望通りの配属を勝ち取る「配活」の時代に突入しているという。

7.品川裕香著『「働く」ために必要なこと』筑摩書房(201頁,新書判)

 就職後3年以内に離職する若者が約30%。卒業後4年目以降は新卒扱いにならないのに働き続けられないのはなぜか。本書は、若者や企業、学校などの「言い分」に焦点を当て問題点を分析。そのうえで、若者に社会不適応を起こす可能性を上げるリスク要因と予防する保護要因を示し、自分の人生をあきらめるなと激励。不安定な若者を応援。

8.笹山尚人著『パワハラに負けない!』岩波書店(vi+231頁,新書判)

 労働者側代理人として労働事件を扱ってきた弁護士が、多発しているパワハラ事件や労働災害問題を若者に伝えるために、小説風の体裁をとりながら解説。労働事件に対し自分でできることとして、①時系列で事実の経過をまとめておく②「おかしい」と思ったことが合法的か確認③行政機関や労働組合、弁護士など専門家への相談、をあげている。

9.総合女性史学会編『女性官僚の歴史』吉川弘文館(vi+192頁,A5判)

 日本は、政策立案や決定過程への女性参加率が世界110位といわれる。本書は、官僚制と女性の歴史的関係から、その根源に迫り、解決を模索。古代・女官から現代・キャリア女性までの女性実務官僚の歴史をまとめた。彼女たちは現在、「男女平等憲法の申し子」から「性別にかかわりない政策づくりの道具」への岐路に立っているのだろうか。

10.林香里他編著『テレビ報道職のワーク・ライフ・アンバランス』大月書店(285頁,A5判)

 テレビ報道職に就く13局男女30人にインタビュー。キャリア形成過程におけるライフイベントや、テレビ報道職がつくられるまでを追跡するとともに生活世界などを聴取。放送現場につながっている、女性とメディアをめぐる問題点を調査・分析するグループが、現場の声をひろいあげるだけでなく、ジャーナリズム研究にも踏み込んでいる。

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2013年12月-2014年1月に労働図書館受け入れ

  1. 大庫直樹著『人口減少時代の自治体経営改革』時事通信社(xiii+259頁,A5判)
  2. 青山瑠妙著『中国のアジア外交』東京大学出版会(v+358頁,A5判)
  3. 山田鋭夫著『さまざまな資本主義』藤原書店(273頁,A5判)
  4. 薗浦健太郎著『ブラック企業は国賊だ』中央公論新社(245頁,A5判)
  5. 福澤徹三著『もうブラック企業しか入れない』幻冬舎(190頁,新書判)
  6. 谷本寛治他著『ソーシャル・イノベーションの創出と普及』NTT出版(iii+439頁,A5判)
  7. 新田香織著『仕事と介護両立ハンドブック』日本生産性本部生産性労働情報センター(113頁,A5判)
  8. 安達智子他編著『キャリア・コンストラクションワークブック』金子書房(149頁,B5判)
  9. 石山恒貴著『組織内専門人材のキャリアと学習』日本生産性本部生産性労働情報センター(171頁,A5判)
  10. 釼地邦秀著『ライフプランから始める本気の自己啓発』三恵社(198頁,B5判)
  11. 石黒徹他著『内部統制とIR』商事法務(x+208頁,A5判)
  12. 本澤巳代子他編『家族と職業の両立』信山社(xi+250頁,A5判)
  13. 鎮目真人他編著『比較福祉国家』ミネルヴァ書房(xi+368頁,A5判)
  14. 小塩隆士著『社会保障の経済学』日本評論社(xii+282頁,A5判)
  15. 原田泰著『若者を見殺しにする日本経済』筑摩書房(238頁,新書判)
  16. 平井京之介著『微笑みの国の工場』臨川書店(218頁,四六判)
  17. 労務行政研究所編『65歳雇用時代の中・高年齢層処遇の実務』労務行政(318頁,B5判)
  18. 溝上憲文著『マタニティハラスメント』宝島社(223頁,新書判)
  19. 和田弘子著『もうひとつの国鉄闘争』三一書房(326頁,A5判)
  20. 高橋絋士他共編『地域連携論』オーム社(xvi+219頁,B5判)