2014年1月の図書紹介(2013年12月受け入れ図書)

1.徳岡晃一郎他著『MBB:「思い」のマネジメント実践ハンドブック』東洋経済新報社(242頁,四六判)

 目標管理制度・成果主義が機能不全に陥り、新たな人材マネジメント手法が求められている。その解決策として著者はMBB(Management By Belief)を提唱。個々人の仕事や人生に向き合う強い思いをベースにして経営や職場、成果のマネジメントを行う手法である。本書では、基本概念、制度設計、運用のポイントに焦点が当てられている。

2.野中健次著『M&Aの人事労務管理』中央経済社(iv+14+349頁,A5判)

 本書は、M&Aにおいて起こりうる労働法制上、人事労務管理上の課題を取り上げ、合併、会社分割、事業譲渡等のM&Aの手法ごとの制度設計の提言と保険変更手続の解説が目的。人事担当者、経営者向け実務書であるものの、事例を用いてわかりやすく説明。著者は、M&Aを企業経営における成長戦略と位置づけ、類書は少ないと自負する。

3.毛塚勝利編『事業再構築における労働法の役割』中央経済社(3+9+540頁,A5判)

 事業の再構築にかかる最近の実務の動向を踏まえ、労働法における課題を明確にするのが本書の狙い。実務の世界の変動に比べ、本問題に関する労働法学上の議論は活発ではないと編者は指摘する。本書は、①解釈論と立法論の双方を内容とする②公務関係もカバー③欧州法などとの比較法研究を含む④研究者と実務法曹の共同作業、などが特徴。

4.樋口美雄他編著『若年者の雇用問題を考える』日本経済評論社(xii+290頁,A5判)

 若者を取り巻く雇用問題に多面的にアプローチ。新卒時の就職の困難さや非正規社員からの脱却の難しさなどを解説するほか、失業や非正規雇用を数量的・価格的に分析し、若年者の不安定な就業が社会に及ぼす影響について考察。正社員として就職できる割合を高める施策も検討。財務省財務総合政策研究所が主宰した研究会での議論を編集。

5.山根英樹著『グローバル職人になろう!』中央経済社(vii+VII+187頁,四六判)

 誰にとっても必要でいやしの営みである家事労働がなぜ正当に評価されないのか。不公正な分配がいかに生きづらさや貧困を招くのか。著者は、終わりなき「見えない労働」を担う女性が社会から不当に締め出されていると強調。「無償労働(アンペイドワーク)」としてハラスメントされている家事労働の実態に光を当て、困難からの脱却を探る。

6.渡辺三枝子編『キャリアカウンセリング再考』ナカニシヤ出版(xiv+220頁,四六判)

 2011年末に約7万人に達したキャリア・コンサルタント。その活動の場は拡大の一途をたどっているが、実践時に直面する課題や疑問にもがいている人も少なくない。本書は、そうしたコンサルタント等にQ&A形式で基本的な考え方や必要な基礎知識を解説し、素朴な疑問に答え、アイデンティティーの明確化を図る。豊富なブックガイドも掲載。

7.金井壽宏他編著『日本のキャリア研究 組織人のキャリア・ダイナミクス』白桃書房(xiv+296頁,A5判)

 組織行動論・キャリア論を軸に日本のホワイトカラーのキャリアを分析。キャリア発達と組織との関係、仕事設計や仕事経験がキャリアに与える影響などを考察する。課題が最も浮き彫りになるキャリアの移行期に注目し、キャリア論と組織行動論との接点も議論。神戸大学金井研究室出身の研究者たちが専門技能についても分析し、姉妹版も出版。

8.中山マコト著『フリーで働く前に!読む本』日本経済新聞出版社(229頁,四六判)

 「いつでも、新しく、魅力的なオファーが来る力」を「自在力」と命名、個人の自在力の鍛え方などを具体例とともに紹介する。全く縁のなかった世界に放り出されたときあわてないために、会社や組織に属している今こそその準備の時と強調。大転職時代には、他の誰も真似のできない、圧倒的な個としての自立した力が唯一の武器と主張する。

9.川口章著『日本のジェンダーを考える』有斐閣(xii+224頁,四六判)

 性別役割分業は、生物学的属性に基づくとみなされてきたが、本書は社会的・文化的につくられたもので、合理性も道理もない不条理であると指摘。ジェンダーを教育、就職、雇用制度、結婚、出産・育児などの視点からデータや制度の仕組みを基に分析。性役割はアイデンティティーの一部であるため、その解消には長期的視点が必要と説く。

10.関水徹平他著『~果てしない孤独~独身・無職者のリアル』扶桑社(179頁,新書判)

 最近注目を集めているスネップ(孤立無業者)に焦点を当て、その言葉の登場の社会的背景を解説する一方、スネップになる可能性の高い潜在層の実態を把握。さらにコミュニケーションという観点から、スネップ要因の一つである孤立に着目して問題を掘り下げている。実際のスネップの生の声を掲載している点も特徴。研究者と実践者の共著。

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2013年10月-2013年11月に労働図書館受け入れ

  1. デール・マハリッジ著『繁栄からこぼれ落ちたもうひとつのアメリカ』ダイヤモンド社(445頁,四六判)
  2. 八代尚宏著『規制改革で何が変わるのか』筑摩書房(188頁,新書判)
  3. 小幡績著『成長戦略のまやかし』PHP研究所(238頁,新書判)
  4. ポール・クルーグマン著『そして日本経済が世界の希望になる』PHP研究所(196頁,新書判)
  5. 川口雅裕著『だから社員が育たない』労働調査会(262頁,新書判)
  6. 福田義彦他共著『いい会社にするための「高齢者雇用」のすすめ方』日本法令(293頁,A5判)
  7. ベン・S・バーナンキ著『大恐慌論』日本経済新聞出版社(x+343頁,A5判)
  8. 小原祥嵩著『ミャンマー経済で儲ける5つの真実』幻冬舎(xiv+340頁,新書判)
  9. 山下努著『「老人優先経済」で日本が破綻』ブックマン社(223頁,四六判)
  10. 安西愈著『人事の法律常識』日本経済新聞出版社(287頁,新書判)
  11. ロア・ユナイテッド法律事務所編『事例で学ぶ労働問題対応のための民法基礎講座』日本法令(301頁,A5判)
  12. 金井壽宏他編著『専門技能とキャリア・デザイン』白桃書房(xiv+263頁,A5判)
  13. 牟田和恵著『部長、その恋愛はセクハラです!』集英社(219頁,新書判)
  14. 山崎文夫著『セクシュアル・ハラスメント法理の諸展開』信山社(xi+232頁,A5判)
  15. 吉本佳生著『日本の景気は賃金が決める』講談社(302頁,新書判)
  16. 山田浩之著『新興国・開発途上国における最低賃金法の雇用等への影響』三菱経済研究所(53頁,A5判)
  17. 服部泰宏著『日本企業の心理的契約』白桃書房(xiii+259頁,A5判)
  18. 難波克行著『職場のメンタルヘルス入門』日本経済新聞出版社(183頁,新書判)
  19. 藤本隆宏他編著『ものづくり成長戦略』光文社(197頁,新書判)
  20. 櫻田登紀子著『幸福(しあわせ)を呼ぶインタビュー力』労働調査会(259頁,新書判)