2013年8月の図書紹介(2013年7月受け入れ図書)

1.ベルリッツ・ジャパン編『グローバル人材の新しい教科書』日本経済新聞出版社(239頁,A5判)

 自分とは異なる文化を持つ人々・チーム・組織とうまくビジネスを行うために、自分と相手との共通点や相違点をどう見つけ、どのように行動すれば成果があげられるのか。本書は、そのために必要な知識やツール・スキルであるカルチュラル・コンピテンス(文化の違いを活用する力)を理論モデルと物語的ケーススタディをもとに提示している。

2.岸宣仁著『同期の人脈研究』中央公論新社(299頁,新書判)

 著者は、同期とは「結束と競争」の共同体であり、それが官界や法曹界、民間企業の組織運営の骨格を形づくってきたと強調。人と人を結びつける絆の役割を果たし、日本社会の一種の潤滑油として機能してきたともいう。しかし、IT化が進み、雇用が流動化した現在、同期の存在意義が希薄化していくと予測。同期の過去・現在・未来論を展開。

3.荒木尚志他編『労働法学の展望』有斐閣(vii+853頁,A5判)

 日本の労働法学界を主導してきた菅野和夫教授の古稀を記念して、門下生35名が労働法等に関する最新の研究成果を寄稿。本文828頁の大著。労働市場法、個別的労働関係法、団体的労使関係法、社会保障法等の6部構成。巻末に詳細な略歴、著作目録(編著者論文、判例評釈、座談会等)を掲載。門下生の実力、幅広さに圧倒される。

4.李崙碩著『高齢者雇用政策の日韓比較』ミネルヴァ書房(xii+189頁,A5判)

 韓国は、2050年には日本とほぼ同じ水準の超高齢化社会になると予想されている。日本の現在までの高齢者雇用政策を検証することによって、韓国の今後の政策的方向性を導き出すというのが本書の狙い。官民が協力して行う高齢者就労事業を紹介する一方で、定年延長や異業種への転職よりも、同一職種への転職が有効であると結論づけている。

5.今野晴貴著『日本の「労働」はなぜ違法がまかり通るのか?』星海社(283頁,新書判)

 著者は、労働問題が発生した際に、一番の助け手となるのは労働組合であるが、その役割を十分には果たせていないと主張する。しかし、日本では、労働力取引のルールづくりは個別企業の内部だけにとどまってしまうと指摘。過労死や非正規雇用等、過酷・違法な労働の発生原因を探り、どうすれば労働環境を改善できるのか苦闘している。

6.乙部由子著『ライフコースからみた女性学・男性学』ミネルヴァ書房(viii+184頁,A5判)

 就職難が問題視され、女性にとって働くということは、ライフコースの重要事項の一つとなっているが、働く女性を取り巻く現状を、法制度やトピックを用いて紹介。女性労働をキーワードとした「女性学」「ジェンダー論」などの大学の教養科目向けの教科書として編さんされた。「男女ともに働く社会」と「ライフコースと働き方」の2部構成。

7.柳川範之著『日本成長戦略40歳定年制』さくら舎(198頁,四六判)

 著者が提唱する40歳定年制は、40歳前後で失業・転職しても、75歳程度まで働けるようにするための仕組み。20~40歳、40~60歳、60~75歳を区切りとした「人生三毛作」を提唱。人口減少、産業構造の急速な変化、新興国の成長の下では「多様な働き方」と「スキルの再構築」が不可欠だと主張している。日本経済再生のための応援の書。

8.梅崎修他編著『大学生の学びとキャリア』法政大学出版局(iv+232頁,A5判)

 2007年3月から2011年3月にかけて、高校から大学卒業2年後までを対象に、10回に及ぶアンケート調査等を実施し、キャリア意識発達テストを開発、キャリア教育の効果を多面的に測定。心理学者と経済学者との継続的な学際的アプローチにより、異質な他者との交流がキャリア発達に及ぼす影響や、キャリア意識と就職活動との関係等も分析。

9.NHK取材班編著『職場を襲う「新型うつ」』文藝春秋(203頁,四六判)

 「自宅療養中に海外旅行をする」「休職中に自作料理をブログにアップする」。会社の上司には一見不可解なこうした行動をとるのが「新型うつ」。周囲の社員に仕事が増えたり、士気の低下が見られるなど深刻な社会問題となりつつある。本書では新型うつを生み出す社会的背景、職場で何が起きているか、復職への取り組みなどを掘り下げている。

10.エリック・ブリニョルフソン他著『機械との競争』日経BP社(175頁,四六判)

 情報技術が雇用・スキル・賃金等に及ぼす影響を追究。雇用なき景気回復が問題視されるが、急速な技術進歩が失業をもたらしていると主張、組織革新の強化、人的資本への投資によって対処可能と説く。その実現のため具体的な19のステップを提言。著者らは格差拡大に注目するも、デジタル・オプティミストとして楽観的な将来像を展開する。

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2013年5月-2013年6月に労働図書館受け入れ

  1. 大坪亮著『勝ち組企業のマネジメント理論』角川マガジンズ(191頁,新書判)
  2. 上林憲雄編著『変貌する日本型経営』中央経済社(viii+vii+269頁,A5判)
  3. デビッド・J・ティース著『ダイナミック・ケイパビリティ戦略』ダイヤモンド社(lv+277頁,A5判)
  4. 浅井隆著『Q&A管理職のための労働法の使い方』日本経済新聞出版社(226頁,新書判)
  5. 香川正俊著『世界と日本の格差と貧困』御茶の水書房(xii+219頁,A5判)
  6. 堀勝洋著『年金保険法』法律文化社(xxiii+645頁,A5判)
  7. 加藤智章他著『社会保障法』有斐閣(xv+428頁,四六判)
  8. 大内伸哉著『貴女が知らなければならない55のワークルール』労働調査会(ix+201頁,四六判)
  9. 布施直春著『「武器」としての労働基準法』PHP研究所(253頁,新書判)
  10. 中窪裕也他著『労働法の世界』有斐閣(xxiii+498頁,A5判)
  11. 吉田美喜夫他編『個別的労働関係法』法律文化社(xxiii+390頁,A5判)
  12. 熊隼人法律事務所編『小説で読む労働法』法学書院(ix+257頁,A5判)
  13. 労働新聞社編『求職者支援制度の解説』労働新聞社(190頁,B5判)
  14. 山口理栄他著『さあ、育休後からはじめよう』労働調査会(x+196+25頁,四六判)
  15. 安西愈著『労働災害と企業の刑事責任』労働調査会(451頁,A5判)
  16. 労働調査会出版局編著『契約法・派遣法・高年法の改正点と実務対応』労働調査会(199頁,B5判)
  17. 住沢博紀他著『組合 その力を地域社会の資源へ』イマジン出版(247頁,A5判)
  18. 谷本真由美著『ノマドと社畜』朝日出版社(183頁,四六判)
  19. 梅崎修他編著『大学生の学びとキャリア』法政大学出版局(iv+232頁,A5判)
  20. 鎌田和彦著『奥さまはCEO』ローソンHMVエンタテイメント(319頁,新書判)