2013年3月の図書紹介(2013年2月受け入れ図書)

1.エドガー・H.シャイン著『組織文化とリーダーシップ』白桃書房(xiii+497頁,A5判)

 本書は、組織文化の概念を分析することにより、リーダーシップとの関連性を明らかにしようとしている。著者は、文化の最深層に位置する「前提認識」を意識することによって、組織文化の変革が可能になると主張。外的な課題への対応、グループ自体の成長をめざすリーダーシップのあり方を追求している。第3版の内容を拡充・深化した。

2.毎日新聞「リアル30’s」取材班著『リアル30’s』毎日新聞社(307頁,四六判)

 バブル崩壊後の「失われた20年」に青春期を過ごし、就職時に氷河期だった30代前半の世代がいま何を考え何を求めているのか。20年間で、企業の国際間競争が拡大、非正規労働者が急増。少子高齢化の進展や社会保障費の増大が将来に影を落とした。不透明な将来を眼前にして「生きづらさ」を最も感じている世代に対する理解を求めている。

3.翁百合他著『北欧モデル』日本経済新聞出版社(261頁,四六判)

 本書は、労働、社会保障、税制など北欧諸国のダイナミックで柔軟な政策イノベーションの内容と背景を紹介。労働分野では、スウェーデンの積極的労働市場政策を取り上げ、同国の労働移動が活発なのは、労働組合が労働移動を受け入れ、「連帯的賃金政策」により産業構造の高度化を促進、高生産性部門への人員シフトを実現したためとする。

4.福原宏幸他編著『21世紀のヨーロッパ福祉レジーム』糺の森書房(xxi+292頁,A5判)

 ユーロ危機の陰に隠れて注目度の薄いオランダ、デンマーク、英仏独伊、スウェーデン、ハンガリーのEU8カ国の福祉改革を、雇用政策と社会的保護・包摂政策の交錯(アクティベーション)に焦点を当てて分析している。EUレベルでの政策指針や共通目標が加盟国に及ぼす影響を重視するとともに、日本におけるアクティベーションも紹介。

5.松尾孝一著『ホワイトカラー労働市場と学歴』学文社(242頁,A5判)

 学歴(=学校歴)間の就職機会格差とその形成メカニズム、ホワイトカラー労働者のキャリア形成における学歴の影響、学歴形成段階における格差問題、ホワイトカラー予備軍の職業意識及び高校職業教育の実態についてのアンケート調査など多様な内容の論文を収録。1999~2007年に発表された論文と書き下ろしの序章・終章で構成されている。

6.OECD編著『若者の能力開発』明石書店(247頁,A5判)

 OECDが加盟する17カ国・地域の職業教育訓練をレビュー。世界的な景気後退の下、若者の就労支援が喫緊の課題となっている。職業教育訓練は、この課題に立ち向かう役割を担っており、職業教育訓練教員、訓練指導員の質の高さ、労働市場と関連するスキルの開発、産業界との効果的なパートナーシップなどの重要性に言及している。

7.木下武男著『若者の逆襲』旬報社(198頁,四六判)

 現代の若者の貧困と過酷な労働を克服するには、福祉国家とジョブ型労働市場の形成を長期的な目標とする必要があると説く。このため労働運動は低賃金構造を浮上させることなしに最低所得保障の水準も獲得できないと主張するとともに、重要な点は、福祉国家の実現にとってユニオンの力は決定的ということだと労働運動の重要性を強調する。

8.遠藤昇三著『労働保護法論』日本評論社(ⅳ+233頁,A5判)

 従来の労働法学では、労働契約は「労使関係の基点であり労働条件を決定する」と抽象的にとらえられ、具体的労働条件は労働協約や就業規則によって規律されるとされていた。では、労働契約は労働法上の独自の概念ととらえるのか。本書は、労働契約の各論をリードすべき労働契約総論は「極めて不十分」と述べる。懲戒権や解 雇法理にも言及。

9.石渡嶺司他著『なぜ学生の9割は就活に疲れるのか』主婦の友社(191頁,A5判)

 自己分析からエントリーシート、面接まで就職活動はとにかく「疲れる」ことばかり。本書は、就職活動や採用の現場を取材し、「就活」のウソと本当を詳述。テーマは「面接・グループディスカッションのワナ」「悪戦苦闘!女子学生の就活事情」「やっぱり気になる大学名差別」など。採用担当者の座談会では普通の会話ができない学生を嘆く。

10.岸本裕紀子著『感情労働シンドローム』PHP研究所(205頁,新書判)

 「感情労働」が話題になっている。従来の肉体・頭脳労働といった区分ではなく、心の負担に重きを置いている。具体的には、客室乗務員や営業職など顧客相手の仕事を指すことが多かったが、職種を超えた広がりを見せ、日本社会全体が感情労働が絡む問題に覆われていると強調。本書はその輪郭を明らかにし、若者や中高年との関連を分析する。

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2012年12月-2013年2月に労働図書館受け入れ

  1. 塚越寛著『幸せになる生き方、働き方』PHP研究所(244頁,文庫判)
  2. 半藤一利著『日本型リーダーはなぜ失敗するのか』文藝春秋(262頁,新書判)
  3. ロナルド・ドーア著『日本の転機』筑摩書房(244+vii頁,新書判)
  4. 川辺純子著『マレーシア日本人商工会議所の活動』日本経済評論社(xi+270頁,A5判)
  5. 池田新介著『自滅する選択』東洋経済新報社(xviii+269+15頁,四六判)
  6. 坂本光司著『社員と顧客を大切にする会社』PHP研究所(238頁,新書判)
  7. 吉村典久著『会社を支配するのは誰か』講談社(262頁,四六判)
  8. 楠木新著『サラリーマンは、二度会社を辞める。』日本経済新聞出版社(206頁,新書判)
  9. デヴィッド・スターク著『多様性とイノベーション』日本経済新聞出版社(443頁,四六判)
  10. 笠木映里著『社会保障と私保険』有斐閣(xii+248頁,A5判)
  11. 玉井金五著『共助の稜線』法律文化社(iv+287頁,A5判)
  12. 永山のどか著『ドイツ住宅問題の社会経済史的研究』日本経済評論社(xii+333頁,A5判)
  13. 増永理彦著『UR団地の公的な再生と活用』クリエイツかもがわ(189頁,A5判)
  14. 中央労働災害防止協会編『安全衛生法令要覧』中央労働災害防止協会(1,302+20頁,A5判)
  15. 石橋里美著『キャリア開発の産業組織心理学ワークブック』ナカニシヤ出版(v+171頁,AB判)
  16. 宮脇敏哉編著『産業心理と経営学』北大路書房(vi+249頁,A5判)
  17. 山岡順太郎著『仕事のストレス、メンタルヘルスと雇用管理』文理閣(viii+196頁,A5判)
  18. 村上潔著『主婦と労働のもつれ』洛北出版(331頁,A5判)
  19. クリス・アンダーソン著『メイカーズ』NHK出版(ix+223頁,新書判)
  20. 田中智子著『三池炭鉱炭じん爆発事故に見る災害福祉の視座』ミネルヴァ書房(xiii+372頁,A5判)