2012年12月の図書紹介(2012年11月受け入れ図書)

1.リード・ホフマン他著『スタートアップ!』日経BP社(299頁,四六判)

 わたしたちは起業家として生まれついているのだと著者は言う。創造への熱意がDNAに組み込まれているからだ。しかし、起業家としての自覚を失い、雇われ人にふさわしい振る舞いをするようになったと警告する。いま求められているのはスタートアップ(起業)的な発想を持ち、人生を切り開いていくことだと強調する。シリコンバレー流自己実現本。

2.立花岳志著『ノマドワーカーという生き方』東洋経済新報社(246頁,四六判)

 「ノマド」には英語で遊牧民という意味があり、いまではオフィスを持たず、自由に場所を変えながら仕事をする独立自営の人々を指す。本書は、サラリーマンだった著者が会社に雇われず、自由に働く道を選んだ過程を実務的に詳述する。ブログを基軸としながらも、「ネットとリアルを混ぜる」を合言葉に、戦略的に独立をはかる重要性を説いている。

3.伊東朋子著『大転換する人材マネジメント』東洋経済新報社(153頁,四六判)

 人材の発掘・活用の重要性を強調する人事コンサルタントが企業の人事部に意識改革を迫る。人事に大事なのは「ビジネスの現場で必要な能力やスキルを備え、結果が出せるリーダーをいつでも輩出できる状態が準備されていること」と指摘。自社(国内)にしか通用しない人材マネジメントの考え方では、世界中の人材を引きつけられないと警告する。

4.鈴木亘著『年金問題は解決できる!』日本経済新聞出版社(190頁,四六判)

 気鋭の研究者による抜本的年金改革案。政府主張の「100年安心プラン」は崩壊寸前、2031年に厚生年金、35年には国民年金積立金が枯渇すると忠告する。一番の問題は、現役世代が現在の高齢者の年金受給を支える「賦課方式」にあるとし、積立方式への転換を提言。莫大な債務は「年金清算事業団」に移し、年金目的の新型相続税を構想している。

5.リンダ・グラットン著『ワーク・シフト』プレジデント社(386+xxvi頁,四六判)

 なぜ未来を予測するのかという問いに対し、著者は「(読者らが)適切な選択と決断をするためには、現実的な未来像が欠かせない」と強調。テクノロジーの進化、グローバル化の進展などの5つの変化要因が働き方の常識のシフトをもたらすと予想し、悲観的な結果につながる「漫然と迎える未来」ではなく、「主体的に築く未来」の選択を提唱している。

6.大沢真知子他著『妻が再就職するとき』NTT出版(viii+284頁,四六判)

 日本には、就業を希望しながら現在働いていない女性が600万人以上いると言われる。その半分弱が、45歳未満の既婚者である。本書は、こうした女性が再就職するにはどうしたらいいのかを事例を基に論じる。マザーズハローワークの活動や再就職を実現させた女性たちを紹介、「仕事か家庭か」の二者択一ではない、複数の顔を持つ人生を主張している。

7.君和田伸仁著『労働組合の結成・運営』中央経済社(2+12+186頁,A5判)

 労働組合といえば、「組合費を取られるだけ」「人事の手先で、組合員を守ってくれない」などとネガティブに語られることが少なくない。一方、わが国の労働組合組織率は18%台で推移、規模100人未満の民間企業ではわずか1%にすぎない。本書は、労働組合活動活性化のための労働側弁護士による組合結成・運営、争議・不当労働行為についての実務書。

8.河内孝著『自衛する老後』新潮社(222頁,新書判)

 超高齢化社会を迎えるなか、介護保険は医療、年金に続く「第3の崩壊」の危機に直面している。全国の福祉施設、研究者、介護関係者を訪ねた著者は、制度と運用が「予算を管理する側」「介護保険を運用する側」の論理と都合で組み立てられていると問題視。日本の介護体質や介護保険制度、地域のグッドプラクティス、介護士候補外国人の実情等をルポ。

9.笹山尚人著『それ、パワハラです』光文社(212頁,新書判)

 平成23年度に都道府県労働局に寄せられた「職場のいじめ・嫌がらせ」相談件数は約46,000件、いまや労働問題におけるメーンテーマの一つになっている。数多くの労働事件を扱ってきた弁護士がパワハラ問題に絞り豊富な実例を用いて、わかりやすく解説。パワハラの原因には、業務内容の指示や過去に行われた業務についての叱責が多いと指摘する。

10.児美川孝一郎著『若者はなぜ「就職」できなくなったのか?』日本図書センター(284頁,四六判)

 本書は、若者の就職問題を教育学的アプローチにより解明。今日の学校が「いつから『職業人養成所』になったのか」と問題提起し、キャリア支援流行りの弊害を指摘。「正社員以外の就職ル―ルにも目配り」「自己分析に埋没するキャリアガイダンスを改善」「労働者の権利について十分に学習できる機会を提供」することが重要だと強調。ブックガイド付き。

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2012年8月-2012年10月に労働図書館受け入れ

  1. 山崎亮他著『まちの幸福論』NHK出版(206頁,四六判)
  2. 盛山和夫他編『少子高齢社会の公共性』東京大学出版会(vii+285頁,A5判)
  3. 横田伸子編著『東アジアの格差社会』御茶の水書房(xi+262頁,A5判)
  4. 法政大学大原社会問題研究所編著『福祉国家と家族』法政大学出版局(vi+336頁,A5判)
  5. 大内伸哉著『最新重要判例200労働法』弘文堂(xiii+232頁,AB判)
  6. 筒井健二著『高齢者「働く生きがい」論』文藝春秋企画出版部(189頁,A5判)
  7. 竹中恵美子著『現代労働市場の理論』明石書店(338頁,A5判)
  8. 竹中恵美子著『戦後女子労働史論』明石書店(442頁,A5判)
  9. 石井一彦著『ぼくたちの野田争議』崙書房出版(192頁,新書判)
  10. 上林千恵子編著『よくわかる産業社会学』ミネルヴァ書房(v+199頁,B5判)
  11. 川島典子編著『アジアのなかのジェンダー』ミネルヴァ書房(xiii+246頁,A5判)
  12. 光多長温編『超高齢社会』中央経済社(5+11+290頁,A5判)
  13. 上畑恵宣著『失業と貧困の原点』高菅出版(xiv+236頁,A5判)
  14. 自立生活サポートセンター・もやい編『貧困待ったなし!』岩波書店(xii+171+8頁,四六判)
  15. 黒田学編著『福祉がつなぐ地域再生の挑戦』クリエイツかもがわ(223頁,A5判)
  16. 外尾健一著『東日本大震災と原発事故』信山社(ix+136頁,四六判)
  17. 雇用開発センター編『自分で動く就職』雇用開発センター(94頁,AB判)
  18. 永松俊哉編『運動とメンタルヘルス』杏林書院(vii+136頁,AB判)
  19. 藤本隆宏著『ものづくりからの復活』日本経済新聞出版社(x+493頁,A5判)
  20. 伊井直行著『会社員とは何者か?』講談社(327頁,A5判)