2012年11月の図書紹介(2012年10月受け入れ図書)

1.田島弓子著『働く女性 28歳からの仕事のルール』すばる舎(231頁,四六判)

 現在はキャリアとコミュニケーションの支援会社の代表を務める著者が、キャリアのつくられ方や働くこととの向き合い方を会社員時代の経験に基づき助言する。タイトルにあるように、就職5年後の自分のキャリアの先行きに不安を感じている人たちが、仕事にワクワク感を持ち、一人前のビジネスウーマンになるための具体的な知識を提供している。

2.高橋俊介著『新版 人が育つ会社をつくる』日本経済新聞出版社(207頁,四六判)

 日本の組織で人が育ちにくくなっていることに危機感をもつ著者が、キャリアを創造するために必要な方策を綴った。OJTが機能しなくなり、組織の上下関係が流動化してきた点を問題視。提言として、「上司と部下の1対1の関係に頼りすぎない」「表面的な知識に走らない」「思考・行動特性に着目し、やる気の問題に収れんしない」などを挙げている。

3.武石恵美子編著『国際比較の視点から日本のワーク・ライフ・バランスを考える』ミネルヴァ書房(x+355頁,A5判)

 「ワーク・ライフ・バランス(WLB)政策の効果が十分でないのはなぜか」「どうすればWLBが実現するのか」などの課題を欧米諸国の政策との国際比較を通して分析。欧米では、労働市場での女性の地位向上に主眼が置かれたが、日本では長時間労働や働き方の画一化からの変革が進んでいないため、WLB実現の歩みは遅くなっているという。

4.八木洋介他著『戦略人事のビジョン』光文社(231頁,新書判)

 本書は、日本企業の人事部門の多くが、「過去」を見て企業の連続性を重視する「継続性のマネジメント」に縛られていると警告。求められているのは「現在」を見て、勝つための戦略を立て、企業内の機能に一貫性をもって反映させる「戦略性のマネジメント」と主張する。人事部には、前例や制度に固執せず、変革をリードする役割が求められると強調。

5.加藤久和著『世代間格差』筑摩書房(269頁,新書判)

 生まれた年によって受益と負担の格差が出てしまう「世代間格差」。少子高齢化の進行とともに、年金破綻、かさむ高齢者医療費、就職できない若者などとして出現する。本書は、なぜ世代間格差が生まれてしまうのか、格差はいかに解消すべきかに焦点を当てて追究。経済学的見地から格差を考察し、実行可能な処方箋と新たなシステムを提示する。

6.居樹伸雄著『21世紀 日本の雇用像を描く』公益財団法人日本生産性本部(xi+195頁,A5判)

 リーマン・ショック後の現代日本の主要な労働問題を提示した概説書。雇用面では、若年層と高年層の失業率が高めであるが、若年層は有効求人倍率が高く深刻さは少ないと指摘。今後の雇用慣行については、「聖域」だった終身雇用にも変化が見られ、経営側の強い意向を受け、「整理解雇の4要件」を基にした解雇法制づくりが進められたと言及する。

7.鴨田哲郎著『残業』中央経済社(8+185頁,A5判)

 元日本労働弁護団幹事長の著者が、残業の法規制内容から残業代の請求方法など残業への対応方法までを説明、「残業をしないで豊かな人生を送る」方法についての考えを示す。例えば、労働基準法の大改正を提案、1日の労働時間は残業込みで10時間、1週間48時間を上限とし、法定休日労働も原則禁止、年間1,800時間社会の実現を目指している。

8.中山マコト著『フリーで働く!と決めたら読む本』日本経済新聞出版社(231頁,四六判)

 本当の自由をつかみ、自らの人生に主導権を行使できる生き方と、他者や環境に翻弄され、不自由に生きざるをえない生き方。著者は前者の考えに立つ「プロフェッショナルフリーランス」になるため、「まずは名物社員を目指せ!」「極力、オフィスは持つな!」「『理解者ネットワーク』『エキスパートネットワーク』をつくれ!」など独創的な提言をする。

9.NHK取材班著『NHKスペシャル 生活保護3兆円の衝撃』宝島社(223頁,四六判)

 2011年の生活保護受給者数は205万人。3年間で40万人以上増え、過去最高を記録した。とりわけ本書が問題にしているのが、リーマン・ショック後に現れた「働く力がありながら、働いていない受給者」。こうした実態を丹念に取材するとともに、彼らを食い物にする貧困ビジネスや闇社会、さらには第二のセーフティーネットを掘り下げて赤裸々にする。

10.新雅史著『商店街はなぜ滅びるのか』光文社(221頁,新書判)

 戦後日本の安定は、長期雇用などの雇用の安定だけでなく、豊かな自営業主の集合体である商店街に支えられてきたという。とくに都市型自営業の寄与が大きかった。では、雇用の受け皿でもあった商店街がなぜ衰退の道を歩んだのか。本書は、スーパーやコンビニの登場のほか、大規模小売店舗法をめぐる商店街の圧力団体化にその遠因があると分析。

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2012年8月-2012年9月に労働図書館受け入れ

  1. 土田道夫編『債権法改正と労働法』商事法務(xx+399頁,A5判)
  2. 松岡博編『国際関係私法入門』有斐閣(xvi+441頁,四六判)
  3. 横山潤著『国際私法』三省堂(xviii+413頁,A5判)
  4. 白石渉著『企業のガバナンスと財務行動』White-Stone Academy(xiv+262頁,AB判)
  5. 高尾義明他著『経営理念の浸透』有斐閣(xi+232頁,A5判)
  6. 青島矢一他著『競争戦略論』東洋経済新報社(vi+251頁,A5判)
  7. 西川幸孝著『小さくても「人」が集まる会社』日本経済新聞出版社(243頁,四六判)
  8. 小室淑恵編『実践ワークライフバランス』日本能率協会マネジメントセンター(239頁,A5判)
  9. 安田大著『Q&A人事・労務専門家のための税務知識』中央経済社(2+15+302頁,A5判)
  10. 神野直彦他著『よくわかる社会保障と税制改革』イマジン出版(227頁,A5判)
  11. 北澤毅他編『「社会」を読み解く技法』福村出版(212頁,A5判)
  12. 牛越博文『よくわかる介護保険のしくみ』日本経済新聞出版社(259頁,A5判)
  13. 岡伸一著『グローバル化時代の社会保障』創成社(iv+202頁,A5判)
  14. 日本社会保障法学会編『これからの医療と年金』法律文化社(iv+308頁,A5判)
  15. 二宮厚美著『新自由主義からの脱出』新日本出版社(342頁,A5判)
  16. R・エメット・マレー著『アメリカの労働社会を読む事典』明石書店(286頁,A5判)
  17. ロア・ユナイテッド法律事務所編『実務解説労働争訟手続法』青林書院(xxviii+366頁,A5判)
  18. 道幸哲也著『教室で学ぶワークルール』旬報社(118頁,A5判)
  19. 白石哲編著『労働関係訴訟の実務』商事法務(xiii+539頁,A5判)
  20. 秋田成就著『労使関係法』信山社(viii+360頁,A5判)