2011年12月の図書紹介(2011年11月受け入れ図書)

1.加藤里美他編『全球化社会の深化』成文堂(10+6+236頁,A5判)

 朝日大学経営学部の2つの特別講義「ビジネスと異文化」「グローバル化時代の企業を取り巻く環境」を一般読者向けに編集・出版。全球化(グローバル化)進展の下での多様な事象を異文化の吸収、自文化の知覚、グローバル化の促進、の側面から分析。就職活動も、学生と企業との異文化コミュニケーションとして説明されている。

2.阿部顕三他編『現代経済学の潮流2011』東洋経済新報社(ⅷ+250頁,A5判)

 日本経済学会の2010年度の春季及び秋季大会で報告された論文等を編集した著書。財政構造改革等、現在の日本が抱える経済問題に関する5つの分析論文と2つのパネル・ディスカッションで構成されている。ミンサー型賃金関数を扱った論文と、必要性が叫ばれている政策評価及び行動経済学についてのパネル討議が特に興味深い。

3.佐藤嘉倫他編『格差と多様性』東京大学出版会(ⅹⅰ+330頁,A5判)

 2005年SSM調査プロジェクトの研究成果を編集した「現代の階層社会」シリーズ全3巻の第一巻。韓国及び台湾での調査に加え若年者を対象とした調査も行い、格差・不平等問題を階層理論とデータ分析によって解明。格差社会の実相、生活の多様性と格差、格差社会における教育、の3部構成。全20章に23人の研究者が関与・執筆。

4.古川景一他著『労働協約と地域的拡張適用』信山社(437頁,A5判)

 労働運動上重要であり、実務上の要請もありながら、労働協約の地域的拡張適用に関する研究は少ない。著者達は、法制史と現実の労働協約の検討、さらにUIゼンセン同盟担当者が保管していた資料に基づき、地域的拡張適用制度を理論的に考察し労働協約法理を再構成、実践・理論編からなる437頁の大著としてまとめあげた。

5.加瀬和俊著『失業と救済の近代史』吉川弘文館(8+217頁,B6判)

 本書の目的は、政策担当者と失業者双方の視点から、戦前の失業問題・失業対策の歴史的特徴点を明らかにすることだという。著者は、戦前の失業救済事業の再評価や、今日の失業問題の現状分析・政策提言のための視点を得ることも目指しているが、東日本大震災で失われた雇用の復旧・復興を考える素材ともなりうるであろう。

6.西村佳哲著『いま、地方で生きるということ』ミシマ社(276頁,B6判)

 生活の質を大きく左右するのに、どういう職業に就くかに比して、どこに住むかに関する社会的関心は薄かったと言える。大別すれば、生まれた場所に住み続けるか、東京・大阪に住むかの選択肢しかなかったからであろう。本書は、大震災後の東北と九州に暮らす10人余に、働くこと、地方で生きることをインタビューした記録。

7.脇田滋編著『ワークルール・エグゼンプション』学習の友社(141頁,A5判)

 INAXメンテナンス事件最高裁判決等を契機として「労働者性」が社会問題化している。障害者就労や研修医、商品個配労働者や建設業請負労働者等、労働法に守られない職場からの報告と労働法規の非適用を危惧する労働法学者の解説で編集。労働法規が遵守されることにより、労働者の権利が実質化される社会を展望している。

8.小林美希著『ルポ職場流産』岩波書店(245頁,B6判)

 働く女性をめぐる社会・職場環境は依然として厳しい。「子を産み育てる人」「支える人」さらに「支える人を支える」という複数の視点から、当事者の切実な声を聞き出したルポ。妊娠解雇を避けようとしたがための職場流産、仕事か出産かの二者択一の苦悩等、厳しい状況を追究。働き方の見直しと社会のあり方が問われている。

9.メンタルヘルス・ケア研究会著『メンタルヘルスの労働相談』緑風出版(241頁,B6判)

 1998年以降13年連続で自殺者が年間3万人を超えているが、職場のいじめ、うつ、長時間労働等に関する労働相談も増加。東京管理職ユニオンの呼びかけに応じて参集した相談活動関係者が参加するメンタルヘルス・ケア研究会発行パンフレットに加筆修正した本書は、メンタルヘルスに関する労働相談マニュアルとも言える。

10.嶋津隆文他編著『カネよりもチエとセンスで人を呼び込め!』東京法令出版(280頁,A5判)

 東日本大震災による雇用への甚大な影響が明らかになりつつあるが、地域の再生・復興は、雇用の再生なくしてはありえない。本書は雇用創出の手段の一つである観光について、各地の取り組み例の最新情報、自治体の観光プラン策定例・策定方法を提示する。観光に基づく地域再生を図ろうとする自治体の参考となるであろう。

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2011年9月-2011年10月に労働図書館受け入れ

  1. ハーバート・ギンタス著『ゲーム理論による社会科学の統合』NTT出版(ⅹⅹ+421頁,A5判)
  2. 毛受敏浩著『人口激減』新潮社(191頁,新書判)
  3. 野中郁次郎他著『日本企業にいま大切なこと』PHP研究所(212頁,新書判)
  4. 時吉康範著『なぜ技術経営はうまくいかないのか』日本経済新聞出版社(197頁,A5判)
  5. 総務省人事・恩給局編『行政の生産性向上についての人的資源管理・・・(配付資料編)』総務省(4+ⅳ+411頁,A4判)
  6. 総務省人事・恩給局編『行政の生産性向上についての人的資源管理・・・(議事録編)』総務省(ⅳ+279頁,A4判)
  7. 日本在外企業協会編『ロシアビジネスリスクハンドブック』日本在外企業協会(113頁,B5判)
  8. 飯塚尚己他述『パネルディスカッション景気回復の障害は何か』統計研究会(57頁,A5判)
  9. 林宏昭著『税と格差社会』日本経済新聞出版社(ⅹⅲ+240頁,B6判)
  10. 統計研究会編『日本の統計と統計調査』統計研究会(ⅵ+46頁,B5判)
  11. 全労済協会編『「地域社会研究会」報告書』全労済協会(113頁,A5判)
  12. 総務省統計局編『平成21年全国消費実態調査報告 家計収支編』総務省統計局(973頁,B5判)
  13. 東京都産業労働局雇用就業部労働環境課編『働いているみなさんへ パートタイム労働ガイドブック』(66頁,A5判)
  14. 東京都産業労働局雇用就業部労働環境課編『事業主の方へ パートタイム労働ガイドブック』(46頁,A4判)
  15. 連合総合男女平等局編『連合・男女平等への歩み』連合総合男女平等局(219頁,A4判)
  16. 全日本建設交運一般労働組合編『規約・規定集 2011年改訂版』全日本建設交運一般労働組合(66頁,B5判)
  17. 通信産業労働組合編『通信労組30年のあゆみ』通信産業労働組合(52頁,A4判)
  18. 総合研究開発機構編『東日本大震災復旧・復興インデックス』総合研究開発機構(49頁,A4判)
  19. 日本経済新聞社編『東日本大震災、その時企業は』日本経済新聞出版社(253頁,新書判)
  20. 広島大学高等教育研究開発センター編『知識基盤社会と大学・大学院改革』広島大学高等教育研究開発センター(223頁,B5判)
  21. 筧田知義著『旧制高等学校教育の成立』ミネルヴァ書房(ⅶ+279+4頁,A5判)
  22. 猪飼周平著『病院の世紀の理論』有斐閣(ⅵ+330頁,A5判)
  23. 女性医療フォーラム実行委員会編『働く女性のためのヘルスサポートガイド第2版』労働者健康福祉機構(34頁,A4判)
  24. 武光誠著『ものづくりの歴史にみる日本の底力』小学館(220頁,新書判)
  25. 全日本トラック協会編『トラック輸送産業の現状と課題』全日本トラック協会(119頁,A4判)
  26. 山村高淑著『アニメ・マンガで地域振興』東京法令出版(ⅲ+241頁,A5判)