2011年5月の図書紹介(2011年4月受け入れ図書)

1.晴山一穂他著『欧米諸国の「公務員の政治活動の自由」』日本評論社(ⅶ+237頁,A5判)

 本書は、「堀越事件」(公務員である被告が就業時間外に政党機関紙を自宅周辺の郵便受に投函したことを理由に逮捕・起訴された事件)の弁護のための裁判所提出意見書がベース。英米独仏及びILO条約等における公務員の政治活動の自由について紹介。世界に類を見ない前近代的現行法制の一刻も早い解消を目的としている。

2.樋口美雄他編『ワーク・ライフ・バランスと家族形成』東京大学出版会(ⅷ+330頁,A5判)

 出生率低下をもたらす晩婚化・非婚化・夫婦出生率低下の原因を、各種調査をもとに実証的に研究。WLB施策が労働・生活・家族形成に与える影響を分析、少子社会の克服方策を検討し、労働時間の柔軟化、家族政策への財源投入等の政策を提言。社人研の研究成果であるが、研究非参加者のコメントが付されているのも特徴。

3.三輪卓己著『知識労働者のキャリア発達』中央経済社(ⅴ+ⅵ+306頁,A5判)

 工業化社会の後を襲う知識社会における創造性をもった知識労働者のキャリア発達を詳細に分析。ソフトウェア技術者やコンサルタント等へのインタビュー、参与観察等によって、知識労働者のキャリア志向、学習特性、組織の境界を越えたキャリア形成を追究。知識労働者のキャリア実態の把握と体系化を目指している。

4.原克著『サラリーマン誕生物語』講談社(334頁,B6判)

 サラリーマンの発生は概ね1920年代以降、第一次世界大戦で日本がタナボタ式に勝利した後である、という。本書は1930年代半ばに時期を設定し、阿部礼二(average)氏他のサラリーマンの出勤から退社までの架空の一日を紹介、最新OA機器にあたふたする姿を活写。ファクシミリがこの時代にあったというのも驚きである。

5.佐藤俊樹編『労働』岩波書店(ⅷ+238頁,B6判)

 人間生活の中核を占める働くことに関しての自由には、①働くことからの自由②働くことへの自由③働くことの中の自由、の3つがあるという。これらの問題を9人の社会学者と1人の労働法学者が、制度と現場、理念と歴史の面から、理念的・現実的に明らかにしようとしている。「自由への問い」シリーズ全8巻の一冊。

6.藤原千沙他編『女性と労働』大月書店(284頁,B6判)

 男性・正規労働者に適用される日本型雇用慣行から分離・排除されている人々のうち、女性労働者に焦点を当て女性研究者9人が執筆。女性労働問題の実態を分析するとともに、女性たちのつながりが力になることを期待し労働の場の変革も主張。これまでの労働モデルの再検証を指向している「労働再審」シリーズの第三巻。

7.玄幡真美著『日本の雇用年齢差別』勁草書房(ⅳ+250頁,B6判)

 市民運動関係者等へのインタビューやアンケート等に基づき、雇用年齢差別の社会的背景等とその問題点の解明を目的とする研究と政策提言の二面性をもつ書。改正雇用対策法の求人年齢差別の原則禁止が実態を伴わない現状に鑑み雇用差別禁止法の制定等、政策策定の方向性を示すとともに、人々の行動の重要性も指摘。

8.OECD編著『日本の労働市場改革』明石書店(270頁,A5判)

 訳者によれば本書は、求職者に対する効率的で積極的な就職支援政策であるアクティベーションに関するOECDによる国別レビューの日本版。4人のエコノミストによって日本の高齢者の高い就業率、男女間格差、母子家庭の低賃金労働、等が紹介されるとともに、積極的労働市場プログラムへの支出の低さが指摘されている。

9.佐藤誠著『越境するケア労働』日本経済評論社(ⅹⅳ+252頁,A5判)

 本書の特徴は、看護等のケア部門の国際労働移動を、①送出し国、受入れ国、移民・家族の視点から②現地調査と地元研究者との共同研究により③南アフリカ等の事例も含め④理論的・実証的に比較分析したこと、である。ケア労働者の国際労働移動は、2国間のEPAによる例外措置では対応できない時代に突入したのである。

10.西村和雄他編『拡大する社会格差に挑む教育』東信堂(ⅶ+195頁,A5判)

 雇用形態間の格差や都市と地方の格差等、日本に特殊的な格差も含め、格差構造を打破するために教育が果たすべき役割を多角的に考察。大学入学者選抜、大学初年次教育等についての教育学者の分析、教育問題、職業教育等についての経済学者の分析等で構成。良好な学習機会の保障が格差解消の決め手になるからである。

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2011年2月-2011年3月に労働図書館受け入れ

  1. 連合総合生活開発研究所編『民主党政権の政策と決定システム』連合総研(4+66頁,B5判)
  2. 竹内章郎著『平等の哲学』大月書店(ⅹⅱ+246+ⅹⅲ頁,B6判)
  3. 公務員関係判例研究会編『現場の最新の事例問題』三協法規出版(528頁,A5判)
  4. 友寄英隆著『「国際競争力」とは何か』かもがわ出版(144頁,B6判)
  5. 中部産業・労働政策研究会編『職場力向上のための管理者の役割』中部産政研(115頁,B5判)
  6. 大阪商業大学JGSS研究センター編『日本版総合的社会調査共同研究拠点研究論文集 11』(ⅹⅲ+352頁,A4判)
  7. 大沢真理他編『日韓社会における貧困・不平等・社会政策』東京大学社会科学研究所(251頁,B5判)
  8. 協調会編『戰時戰後の勞働政策』協調会(160+20頁,A5判)
  9. 早稲田大学産業経営研究所編『派遣法の改正と今後の労働市場』早稲田大学産業経営研究所(104頁,A4判)
  10. 河本毅著『労働紛争解決実務講義 第3版』日本法令(2414+198頁,A5判)
  11. 厚生労働省労働基準局編『労働基準法』労務行政([上+下]1114頁,A5判)
  12. 中沢二朗著『「働くこと」を企業と大人にたずねたい』東洋経済新報社(243頁,B6判)
  13. 増田明利著『仕事がない!』平凡社(207頁,B6判)
  14. 21世紀職業財団編『ポジティブ・アクション』21世紀職業財団(86頁,A4判)
  15. 日本賃金学会編『賃金事典』労働調査会(348頁,A5判)
  16. 岩崎馨著『日本の労働組合 改訂版』日本生産性本部生産性労働情報センター(ⅱ+97頁,A5判)
  17. 全建総連50周年記念事業プロジェクトチーム編『全建総連50年誌』全建総連(131頁,A4判)
  18. 全労済協会編『明るい展望のもてる社会にむけて』全労済協会(129頁,A4判)
  19. 内閣府編『高齢社会フォーラム<東京フォーラム、仙台フォーラム>報告書』内閣府(186頁,A4判)
  20. 内閣府大臣官房政府広報室編『少年非行に関する世論調査』内閣府(277頁,A4判)
  21. 全国社会福祉協議会著『社会福祉関係施策資料集』全国社会福祉協議会(ⅲ+290頁,B5判)
  22. 『月刊福祉』編集部編『現代の社会福祉100の論点』全国社会福祉協議会(231頁,B5判)
  23. 一橋大学大学教育研究開発センター編『GPA制度本格導入後の成績評価を考える』一橋大学(67頁,A4判)
  24. 吉田文他著『大学生の進路意識に関する調査研究報告書』大学生の就職意識研究会(193頁,A4判)
  25. 吉岡洋一他著『地域産業・企業との産学協同プラットホーム作りの調査研究』松山大学総合研究所(ⅱ+193頁,B5判)
  26. 平川均他編著『東アジアの新産業集積』名古屋大学国際経済政策研究センター(603頁,A5判)