2010年12月の図書紹介(2010年11月受け入れ図書)

1.杉田菜穂著『人口・家族・生命と社会政策』法律文化社(ⅲ+288頁,A5判)

 大阪市立大学紀要『経済学雑誌』に掲載された8本の論文に序章・終章等を追加した、若き社会政策学者の論文集。戦前から1950年代までの家族政策・児童政策等の社会政策を歴史的に追究。西欧諸国では戦前から出生率低下が問題視され、日本も戦間期から出生率が低下、先駆的な少子化論が展開されていたというのは驚き。

2.白木三秀他編著『人的資源管理の基本』文眞堂(ⅷ+253頁,A5判)

 人的資源管理分野の事実・現象を読み解くための理論・仮説をわかりやすく提供することを目的とした学部生のための教科書。3部構成で、HRMを取り巻く環境、企業組織とHRMの基本的理解、HRMのマクロ的視点、を目配りよく解説している。編者達は、学生が関心・問題意識をもって事実・現象に当たることの重要性を強調。

3.川喜多喬他編『就職活動から一人前の組織人まで』同友館(335頁,A5判)

 法政大学人材育成研究所に設置された研究会の2年間の活動成果。学校から職業へ、学生と企業との出会いから組織人3年目まで、プロフェッショナル層の入社から一人前まで、等の4部で構成。その第四部では、編者が長年の中小企業研究に裏打ちされた経験を開陳。一人前になるまでを研究対象期間としていることが特徴。

4.荒木誠之他編『社会保障法・福祉と労働法の新展開』信山社(ⅹⅳ+693+28頁,A5判)

 本書は、社会保障法、社会福祉、労働法の各分野において多くの業績を残し、昨年卒然と逝去された佐藤進先生を偲んで、有縁の研究者29人が回想・論文を寄稿した追悼集。先生ご自身の遺稿も含めて本文693頁、著作目録等28頁の大著。生涯を研究にささげられた先生の人柄が浮き上がってくる回想が印象的な著書である。

5.木本喜美子他編著『社会政策のなかのジェンダー』明石書店(266頁,A5判)

 社会政策学会第1回大会(1907年)からほぼ一世紀、雇用も家族も安定性を欠いている現代日本の社会政策の再構築を企図して刊行された「講座 現代の社会政策」の1巻。他巻と様相を異にし、ジェンダーの視点から現代の社会政策を追究している。執筆者全員が女性となったのは、当初から意図したことではないとのこと。

6.竹田有著『アメリカ労働民衆の世界』ミネルヴァ書房(ⅶ+400+3頁,A5判)

 著者によれば本書は、労働組合史でもなく労働運動史でもない、アメリカの労働者階級の19世紀後半以降の社会史、つまり、これまで他の研究者によってはなされたことのない労働史と都市史の架橋の試みであるという。労働者生活における労働と家庭・地域生活を網羅する民衆の日常生活を対象とした学術的物語である。

7.道幸哲也著『労働組合の変貌と労使関係法』信山社(ⅹⅱ+301頁,A5判)

 集団的労働関係に関する学術書の刊行が手薄である。公務員の労働基本権問題、労働組合と従業員代表制、思想・信条の自由とユニオンショップ制等解決されるべき問題が存在するにもかかわらずである。著者は、終戦直後に制定され根本的な改正がなされなかった労組法の、労働者の声を実現するための改正を主張している。

8.東京市政調査会編『自治体の就労支援』東京市政調査会(ⅱ+207頁,A4判)

 労働市場の窮状に対する各自治体の努力が続けられている。事態改善のために可能な自治体の対策は、雇用創出と職業紹介である。本報告書は、京都府ジョブパークに対するアンケート調査等によって状況の把握に努めるとともに、雇用と福祉の連携にも分析を加え、自治体による就労支援の全体像の把握を目指している。

9.竹内基浩著『「60年安保」を労働者はいかに闘ったか』社会評論社(221頁,A5判)

 「60年安保」から半世紀、当時は東北の田舎にも「アンポ=ハンタイ」の声がこだましたが、中心的な役割を担っていた人で、今だからこそ語れる事実を胸に秘めている人はどのくらいいるのだろうか。本書は、労働運動活動家の記憶にもとづく記録が、著者の没後に刊行されたものである。歴史研究の重要性が痛感される。

10.早川征一郎著『イギリスの炭鉱争議(1984~85年)』御茶の水書房(ⅹⅴ+328頁,A5判)

 四半世紀前の炭鉱争議の発生と時を同じくしてLSEに留学した著者は、争議の一応の終了を見届け、その記録を大原社研関係誌に9回にわたって連載。定年を迎えた著者がその記事をベースに、争議後の事態の展開を追跡するとともに、炭鉱労使関係の展望も追加。三者構成労使関係と産業政策論によりこのテーマに接近。

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2010年10月に労働図書館受け入れ

  1. 鹿島宏著『業界のセオリー』徳間書店(231頁,B6判)
  2. 下富夫著『戦後司法制度の経済学的分析』日本経済評論社(ⅹ+322頁,A5判)
  3. 連合総合生活開発研究所編『縮み志向の企業行動からの脱却を』第一書林(184頁,B5判)
  4. 嶋口充輝他編『経営の流儀』日本経済新聞出版社(ⅷ+247頁,B6判)
  5. 日本経営学会編『社会と企業』千倉書房(2+10+268頁,A5判)
  6. 片山修著『ストリンガー革命』祥伝社(378頁,B6判)
  7. 忽那憲治著『中小企業が再生できる8つのノウハウ』朝日新聞出版(214頁,B6判)
  8. マリー・ソー他著『世界を変えるオシゴト』講談社(7+189頁,B6判)
  9. 伊丹敬之著『エセ理詰め経営の嘘』日本経済新聞出版社(230頁,新書判)
  10. 木谷哲夫編著『ケースで学ぶ実戦・起業塾』日本経済新聞出版社(325頁,A5判)
  11. 江上剛著『もし顔を見るのも嫌な人間が上司になったら』文藝春秋(221頁,新書判)
  12. 伊東明著『そのやり方では、もう部下はついてこない!』朝日新聞出版(193頁,B6判)
  13. 石田淳他著『たった1つの行動が、職場ストレスをなくしモチベーションを高める』東洋経済新報社(171頁,A5判)
  14. 富士ゼロックス総合教育研究所編『他社との"かかわり"が個人を成長させる(事例研究編)』(49頁,A4判)
  15. 柴田昌治他著『どこまで墜ちた企業を救えるか』日本経済新聞出版社(309頁,B6判)
  16. 総務省統計局編『家計調査収支項目分類の解説』総務省統計局(84頁,A4判)
  17. 八代徹也著『実務家のための労働判例用語解説』産労総合研究所出版部経営書院(254頁,B6判)
  18. 津野卓也著『キャリアノートで会社を辞めても一生困らない人になる』東洋経済新報社(232+37頁,B6判)
  19. 奥村仁美著『仕事ってなんだろう?』東京図書出版会(490頁,B6判)
  20. 勝間和代監修『ワーキングマザーバイブル』講談社(191頁,B6判)
  21. 堀田佳男著『なぜアメリカ金融エリートの報酬は下がらないのか』プレジデント社(230頁,B6判)
  22. 竹田誠著『国鉄分割民営化・国労・JR総連・JR連合(1980~2010)』世界出版(78頁,A5判)
  23. 東京弁護士会労働法制特別委員会編『ケーススタディ労働審判 改訂版』法律情報出版(4+265頁,B5判)
  24. 古市憲寿著『希望難民ご一行様』光文社(306頁,新書判)
  25. 江口英一他著『日本における貧困世帯の量的把握』法律文化社(ⅹⅲ+219頁,A5判)
  26. 森田均著『自己分析する学生は、なぜ内定できないのか?』日本経済新聞出版社(230頁,新書判)
  27. 辻太一朗著『就活革命』日本放送出版協会(197頁,新書判)
  28. 見ル野栄司著『工場虫』中経出版(142頁,A5判)