2010年10月の図書紹介(2010年9月受け入れ図書)

1.宮川正裕著『組織と人材開発』税務経理協会(3+5+196頁,A5判)

 中京大学大学院ビジネス・イノベーション研究科での「組織と人材開発」の教科書。人の意欲・行動から、組織との関係を分析。経営戦略実現のための人的資源管理、クオリティ・マネジメント論を中心に、小集団活動・自己啓発の重要性を説明。組織・人材の概念説明と学際的な意欲・イノベーション考察の2部構成。

2.二宮孝著『雇用ボーダーレス時代の最適人事管理マニュアル』中央経済社(290頁,A5判)

 人事労務コンサルタント20年の経験を有する著者による人事管理マニュアル本。デフレ経済下で先行き不透明な時代においても成果を創出していく人事管理を模索している。著者はボーダーの視点に立ち、硬直的な人事管理からの脱却を目指すとともに、バランス対応型の柔軟性ある独自の人事システムを求めている。

3.増田正人他著『国民的最低限保障』大月書店(ⅹⅳ+325頁,B6判)

 研究者と労働組合関係者で構成された「グローバル化とナショナル・ミニマムに関する研究会」の活動の成果である。新自由主義政策によって拡大した貧困と格差に対し、国民生活の最低限保障の実現を目指している。全国一律最低賃金制、最低保障年金制、公契約条例等を求めるとともに、農業問題にも着目している。

4.大竹文雄他編著『日本の幸福度』日本評論社(ⅷ+284頁,A5判)

 日本の幸福度は、何によってどのように決まるのか。本書は、労働・失業・格差と結婚・育児に焦点を絞って、人生の究極の目的である幸福を実証的に分析。幸福度には地域間格差がほとんど存在しない、というような事実を発見した、日本の幸福を経済学的に分析した初めての書。幸福の経済学が開始されたのである。

5.辻村昌昭著『現代労働法学の方法』信山社出版(ⅲ+444頁,A5判)

 1981年から2009年の約30年間に発表された論文10点、判例研究6点で編集されている。第1編・労働法解釈の方法論、第2編・組合活動をめぐる法理、第3編・ドイツ労働法をめぐる諸問題(日本法との比較)、の3部構成。チェックオフ協定、施設管理権、情宣活動、等の用語になつかしさを禁じ得ない。

6.小倉一哉著『会社が教えてくれない「働き方」の授業』中経出版(255頁,B6判)

 労働研究が蓄積されてきているのに、成果が働く人たちにあまり還元されていないとの問題意識から、働く人たちに寄り添って書かれた。転職や給料、残業や成果主義から、職場の恋愛や働き方まで、労働生活の根幹について、当機構主任研究員である著者の労働観を反映して、全か無かでない考え方が披歴されている。

7.安田浩一著『ルポ差別と貧困の外国人労働者』光文社(314頁,新書判)

 日本で働く外国人は、100万人前後と見込まれているが、いわゆる就労ビザで働いているのは、その数分の一にすぎない。本書は「特定活動」資格で働く中国人研修・技能実習生と、「定住者」資格の日系ブラジル人労働者に焦点を絞ったルポ。バックドアではなくサイドドアから入国した外国人労働者の実態を追究。

8.佐久間大輔著『労災・過労死の裁判』日本評論社(ⅹⅴ+306頁,A5判)

 日本労働弁護団事務局長による著書。裁判例を研究し、書きためてきた論文に加筆・修正。先進諸国では、ハラスメント問題は流行病的レベルで急増、日本でもパワハラ原因の自殺を裁判所は労災認定しているが、2000年以降の裁判を検討し、救済の到達点を展望。行政訴訟、損害賠償、管理監督者性の3部で構成。

9.山下泰子著『女性差別撤廃条約と日本』尚学社(ⅹⅲ+348頁,A5判)

 国際人権条約、なかでも女性差別撤廃条約の理論的解明に焦点をあわせた長年の研究の成果。1986年から2010年に発表された論文が収録されている。女性差別撤廃条約と国際人権、同条約と日本、人権のために、の3部で構成。日本による同条約選択議定書の批准をも目指している実践性の強い書となっている。

10.沖藤典子著『介護保険は老いを守るか』岩波書店(ⅲ+244+3頁,新書判)

 高齢期の幸福感を守る温かさが現在の介護保険制度から失われている、との危機感をもつノンフィクション作家である著者は、実態の批判的検討に基づき、利用者の視点に立った介護保険のあり方を具体的に提言。『女が職場を去る日』以来介護問題を追究してきた著者は、介護保険が老いを守っているか検証している。

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2010年8月に労働図書館受け入れ

  1. 二神能基著『勝ち負けから降りる生き方』東洋経済新報社(208頁,B6判)
  2. 北岡孝義著『スウェーデンはなぜ強いのか』PHP研究所(187頁,新書判)
  3. 東大社研他編『希望のはじまり』東京大学出版会(ⅹⅹⅱ+295+7頁,A5判)
  4. 佐藤清編著『フランス 経済・社会・文化の諸相』中央大学出版部(ⅹⅹⅲ+299頁,A5判)
  5. 梅田雅信他著『経済統計の活用と論点』東洋経済新報社(ⅹⅷ+308頁,A5判)
  6. ロジャー・レロイ・ミラー他著『経済学で現代社会を読む 改訂新版』日本経済新聞出版社(349頁,B6判)
  7. 宮内拓智他編著『ドラッカー思想と現代経営』晃洋書房(ⅵ+204頁,A5判)
  8. 手塚公登他編著『現代経営学再入門』同友館(ⅹⅲ+315頁,A5判)
  9. 中小企業総合研究機構『中小製造業の構造変化に対応した取り組みの実態調査』中小企業総合研究機構(77頁,A4判)
  10. 中小企業総合研究機構『中小企業の事業継続性に関する調査研究』中小企業総合研究機構(60頁,A4判)
  11. 中小企業総合研究機構『中小企業の市場設定と能力構築に関する調査研究』中小企業総合研究機構(200頁,A4判)
  12. 中小企業総合研究機構『グローバル展開型中小企業の経営実態に関する調査研究』中小企業総合研究機構(2+90頁,A4判)
  13. 中小企業総合研究機構『中小企業における情報活用力とIT化に関する調査研究』(72頁,A4判)
  14. 中小企業総合研究機構『我が国の社会起業家に関する事例研究』中小企業総合研究機構(231頁,A4判)
  15. 高野研一著『ビジネスリーダーの強化書』日本経団連出版(261頁,B6判)
  16. 中山慈夫著『就業規則モデル条文 第2版』日本経団連出版(459頁,A5判)
  17. 齋尾浩一郎他著『実務Q&A 資産除去債務と環境債務』日本経団連出版(214頁,A5判)
  18. クルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所著『日本の持続的成長企業』東洋経済新報社(261頁,B6判)
  19. 橋本健二編著『家族と格差の戦後史』青弓社(231頁,B6判)
  20. 城繁幸他著『世代間格差ってなんだ』PHP研究所(233頁,新書判)
  21. 鈴木亘著『年金は本当にもらえるのか?』筑摩書房(253頁,新書判)
  22. 労働問題リサーチセンター編『非正規雇用問題に関する労働法政策の方向』労働問題リサーチセンター(ⅲ+290頁,A4判)
  23. 伊藤周平著『雇用崩壊と社会保障』平凡社(254頁,新書判)
  24. ネイザン・H.アズリン他著『キャリアカウンセラーのためのジョブクラブマニュアル』法律文化社(ⅷ+194頁,B5判)
  25. 宮脇淳著『思いどおりに働く ! 』NTT出版(214頁,B6判)
  26. 奥津眞里著『専業主婦のキャリア再開発』風間書房(211頁,B6判)
  27. 真鍋禎男著『不屈と誇り』社会評論社(286頁,B6判)
  28. 日本生産性本部編『ワーク・ライフ・バランス実践問答』日本生産性本部生産性労働情報センター(79頁,A5判)
  29. 安田純平著『ルポ 戦場出稼ぎ労働者』集英社(254頁,新書判)
  30. 松久信夫著『出社は月に3日でいい』東洋経済新報社(190頁,B6判)
  31. 田中健吾著『ソーシャルスキルと職業性ストレス』晃洋書房(ⅷ+179頁,A5判)
  32. 稲盛和夫著『働き方』三笠書房(189頁,B6判)
  33. 本田重道著『なぜ、私の歳をきくの?』飛鳥新社(184頁,B6判)
  34. 清水康之他著『闇の中に光を見いだす』岩波書店(63頁,A5判)
  35. 杉村宏著『人間らしく生きる』左右社(230頁,B6判)
  36. 高崎経済大学附属産業研究所編『地方公立大学の未来』日本経済評論社(ⅶ+200頁,A5判)
  37. 角方正幸他著『就業力育成論』学事出版(151頁,B6判)
  38. 中田亨著『防げ現場のヒューマンエラー』日科技連出版社(ⅷ+151頁,A5判)
  39. ジェームズ・リーズン著『組織事故とレジリエンス』日科技連出版社(ⅷ+356頁,A5判)
  40. 橘川武郎他著『地域再生あなたが主役だ』日本経済評論社(ⅴ+236頁,B6判)