2010年1月の図書紹介(2009年12月受け入れ図書)

1.山口裕幸編『コンピテンシーとチーム・マネジメントの心理学』朝倉書店(ⅴ+187頁,A5判)

 朝倉実践心理学講座全10巻の第六巻。理論編と実践編で構成され、研究者と実務家が執筆。チームで成果をあげる取組みと個のコンピテンシーを育む取組みとの両面から人的資源管理のあり方を考察している。こまやかな個別管理が求められている現在、コンピテンシーと組織経営との関係の追求は、実践的課題でもある。

2.高橋俊介著『キャリアをつくる9つの習慣』プレジデント社(135頁,B6判)

 著者は、キャリアは計画的にはつくれないとの最近のセオリーにもとづきながらも、価値を創造し、貪欲に成長している、好ましいキャリアをつくっている人に共通の9つの習慣をインタビューとアンケート調査によって析出。ネットワークの形成や仕事の見える化など、1つでも習慣化することの有効性を強調している。

3.OECD編著『公務員制度改革の国際比較』明石書店(178頁,A5判)

 公務員制度改革は日本でも長年の懸案である。公務員の削減が継続的に実施されているが、公共セクターのあり方がまず議論されるべきである。本書は賃金決定、業績評価等、OECD諸国の公務員制度の主な変化を国際比較。日本の位置がわかり、今後の議論にも資すると思われるが、翻訳がこなれていないのが残念である。

4.日本住宅会議編『格差社会の居住貧困』ドメス出版(355頁,A5判)

 日本住宅会議がほぼ隔年に発行している「住宅白書」の2009-2010年版である。52人の専門家が執筆。ハウジング・プアが脚光を浴びている中で、居住貧困の実態を多面的に分析、問題解決のための政策を市民の側から提案している。住宅は、福祉政策の基幹であり、居住権は国民の基本的権利であることを強調している。

5.若林直樹著『ネットワーク組織』有斐閣(ⅹⅴ+326+ⅹⅴ頁,B6判)

 本書の目的は、ネットワーク組織を多元的な協働を可能にする組織・システムと定義、その形態・特徴を明らかにし、実務的にも日本企業に貢献することである。経営環境の激変やネットワークの拡大に対し、組織は自律的であるとともに、革新的に対応することが可能な社会関係資産であることが求められているという。

6.竹中恵美子著『竹中恵美子の女性労働研究50年』ドメス出版(268頁,A5判)

 竹中教授自身が50年の研究軌跡をまとめた第一部と、竹中理論を信奉する女性労働運動家との交流を描いた第二部で構成されている。「関西女の労働問題研究会」という竹中シンパの運動家との交流とはいえ、竹中教授の研究成果を運動の導きの「赤い糸」と信ずる人々との幸福で稀有な交流の姿をここに見ることができる。

7.岩井浩他編著『格差社会の統計分析』北海道大学出版会(ⅹⅴ+347頁,A5判)

 格差が拡大する中で現代日本社会の格差を理論的・統計的に分析し、格差構造の実態解明を目的とする本書は、3編13章の多様なテーマの論文で編集されている。賃金格差、年金や医療格差から、土地所有、地域・環境問題等まで扱っているが、格差社会の解決には、人権認識の強化にもとづく政策転換が必要なのであろう。

8.本岡類著『介護現場は、なぜ辛いのか』新潮社(251頁,B6判)

 依然厳しい失業情勢の下、雇用吸収の場として慢性的な人手不足に悩む介護分野が注目されている。年離職率が2割を超える状況はなぜもたらされたのか。低賃金の介護労働者はどのような思いを胸に働き続けているのか。介護労働の現場の実態は? 作家による特別養護老人ホームでの5カ月間の参与観察の記録である。

9.伊藤周平著『障害者自立支援法と権利保障』明石書店(229頁,A5判)

 「高齢者・障害者総合福祉法に向けて」との副題をもつ本書は、新自由主義政策の推進による生活破壊・社会保障崩壊を憂える著者の政策提言の書である。障害者問題は人権問題であり、本書は障害者の権利保障という観点から障害者自立支援法の諸問題を考察、同法の廃止とそれに代わる新たな総合福祉法を展望している。

10.片桐新自著『不安定社会の中の若者たち』世界思想社(ⅹ+233頁,B6判)

 本書は、1987年から5年毎に実施してきた過去5回の調査をまとめたものである。バブル経済から失われた10年、格差社会と続く不安定化の中での関西の大学生の実態と意識を追跡。大学生という社会人予備軍の価値観を知ることで、将来の社会を大胆に予測。調査報告でも社会評論でもないというユニークな図書である。

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2009年11月に労働図書館受け入れ

  1. 大山道広他編『現代経済学の潮流』東洋経済新報社(ⅷ+263頁,A5判)
  2. 吉川洋編『デフレ経済と金融政策』慶應義塾大学出版会(ⅹⅹⅹⅰ+427頁,A5判)
  3. 馮文猛著『中国の人口移動と社会的現実』東信堂(ⅹⅴ+229頁,A5判)
  4. 岩井克人著『会社はこれからどうなるのか』平凡社(373頁,文庫判)
  5. 中沢孝夫著『中小企業は進化する』岩波書店(ⅹⅴ+193頁,B6判)
  6. 松田憲二著『パートの職務明確化と公正な処遇(改訂新版)』経営書院(351頁,A5判)
  7. 土井教之編著『ビジネス・イノベーション・システム』日本評論社(ⅹⅵ+309頁,A5判)
  8. 総務省統計局統計調査部編『統計調査結果の活用事例集』総務省統計局統計調査部(20頁,A4判)
  9. エドガー・H・シャイン著『人を助けるとはどういうことか』英治出版(293頁,B6判)
  10. 小川浩一著『サービス業で働く人のトラブル対処法』東洋経済新報社(177頁,A5判)
  11. 道幸哲也著『ワークルールの基礎』旬報社(222頁,A5判)
  12. 大内伸哉著『最新重要判例200労働法』弘文堂(ⅹⅱ+225頁,B5判)
  13. 日本ドリームプロジェクト編『働きだして見つけた夢』いろは出版(157頁,B6判)
  14. ヒューマン・ライツ・ウォッチ著『小さな変革』創成社(ⅹⅱ+178頁,A5判)
  15. 光畑由佳著『働くママが日本を救う!』毎日コミュニケーションズ(199頁,新書判)
  16. 増田明利著『今日、派遣をクビになった』彩図社(222頁,B6判)
  17. 家計経済研究所編『女性の生き方と家計』家計経済研究所(251頁,A4判)
  18. アンディ・ファーロング著『若者と社会変容』大月書店(283+33頁,B6判)
  19. 横石知二著『生涯現役社会のつくり方』ソフトバンククリエイティブ(175頁,新書判)
  20. 横田増生著『フランスの子育てが、日本よりも10倍楽な理由』洋泉社(238頁,B6判)
  21. 原茂編『子どものスポーツ・学術・学習活動データブック』ベネッセ教育研究開発センター(23頁,B5判)
  22. ベネッセ教育研究開発センター編『放課後の生活時間調査報告書』ベネッセ教育研究開発センター(152頁,B5判)
  23. 横田雅弘他著『外国人学生の日本留学へのニーズに関する調査研究』明治大学国際日本学部(213頁,A5判)
  24. 竹田透著『健康に働くこととは』労働調査会(135頁,B5判)
  25. 総合研究開発機構編『アジアを「内需」に』総合研究開発機構(78頁,A5判)
  26. 加藤厚海著『需要変動と産業集積の力学』白桃書房(ⅹⅰ+240頁,A5判)
  27. 総合研究開発機構編『農業を新たな『食料産業」に』総合研究開発機構(78頁,A5判)
  28. 会田朋哉著『労働基準監督署長奮戦記』東京図書出版会(201頁,B6判)