2009年10月の図書紹介(2009年9月受け入れ図書)

1.松下啓一著『市民協働の考え方・つくり方』萌書房(ⅷ+131頁,B6判)

 パブリック・プライベート・パートナーシップ(PPP)に関心が向けられるようになってきた。市場と政府の失敗を乗り越える解決策が求められるようになってきたからである。本書では、行政と市民の関係を協働というキーワードを手掛かりに模索、市民の主体的活動が行政に絡めとられる恐れにも目配りをきかせている。

2.宮島喬編『移民の社会的統合と排除』東京大学出版会(ⅹⅱ+216+ⅹⅹⅲ頁,A5判)

 欧州の多くが社会の発展を移民に負っているが、フランスへの移民に関して、雇用・教育・政治等の社会的統合に焦点をあて、その現状と課題を分析。移民受入れ論議が再燃しているが、本書は、フランス的平等と統合理念、労働力以外での自己実現、移民の運動、なども視野に収めた「移民と社会」研究会の成果である。

3.三菱UFJリサーチ&コンサルティング著『若い人財を辞めさせない』ダイヤモンド社(206頁,B6判)

 不況のせいかリテンションばやりである。多大な費用をかけて育成した人材(財)に去られるのは大いなる損失であり、人材流出倒産も危惧しなければならない。本書では、若年世代の特徴を掴むことによって定着を高めようと報酬面と非報酬面から接近している。リテンションを成功させるコツも紹介する実践書である。

4.中村眞人著『仕事の再構築と労使関係』御茶の水書房(ⅹⅳ+205頁,A5判)

 企業と労働の多様な現実を考察している産業・労働社会学的な研究書である。企業別労働組合と労使関係を中心に、労働時間とメンタルヘルス、職場小集団活動、企業系列の展開と海外直接投資など、野放図ともいえるくらいに広範なテーマに取り組んでいる。さらに、これらの分析に基づき、今後の課題も展望している。

5.濱口桂一郎著『新しい労働社会』岩波書店(ⅷ+212頁,新書判)

 現代社会の根幹である雇用システムは、国際競争の激化、世界同時経済危機等により再構築を迫られている。著者は、歴史的視点とEU等との国際比較に基づき、非正規等の雇用・労働、賃金・労働時間、労使関係等の政策課題に対し、関係者間の合意形成に留意しつつ、現実的でありながら独創性な処方箋を提示している。

6.日本婦人団体連合会編『女性白書2009』ほるぷ出版(293頁,A5判)

 継続刊行物「女性白書」の2009年版である。今年度の副題は「女性差別撤廃条約30年」。国連で条約が採択されて30年、日本も1985年に批准、男女雇用機会均等法の制定等をもたらした。性差別は、人種差別と並んで人類が解決すべき人権問題の1つであり、状況を継続的に把握することは、平等社会の進展に不可欠である。

7.中村二朗他著『日本の外国人労働力』日本経済新聞出版社(ⅷ+294頁,A5判)

 既存統計から外国人労働者の影響を実証的に把握するという問題意識に基づく、5人の研究者の5年間の研究会活動の成果。複数のマイクロデータを用い、日本で働く外国人労働者100万人の影響を地道に追究、共著でありながら、統一性のある著書として執筆者名を非表示、外国人労働者政策の立案に必読の文献である。

8.宮城まり子著『産業心理学』培風館(ⅷ+259頁,B6判)

 「変容する労働環境への適応と課題」との副題をもつ本書は、「心理学の世界」シリーズの教養編、基礎編、専門編計35巻の中の専門編の1冊である。リーダーシップやメンタルヘルス、ワークモチベーションや能力開発等の組織と個人が直面する多様な基本的課題に対し、WIN-WINな解決策を示している教科書である。

9.愛知淑徳大学ジェンダー・女性学研究所編『ジェンダーの交差点』彩流社(263+7頁,B6判)

 本書は、ジェンダーの視点に基づく多様な学問分野の論文で構成されている。いずれの論文も、ジェンダーが歴史的・政治的・社会的価値観と密接に結びついていることを示しているという。家事労働、単親家庭政策、歴史教科書問題、メディアリテラシー等、何の脈絡もないようにみえる多様なテーマが掲載されている。

10.広野八郎著『外国航路石炭夫日記』石風社(374頁,A5判)

 1928年11月~1931年6月までの「海上労働日記」と題された9冊の日記の再版である。日本郵船インド航路の火夫見習として乗船した著者は、2年半後過酷な労働により病気で下船するが、その後著者は、葉山嘉樹の著書に感激、葉山宅に寄食したという。戦前の激動の時代の下級船員の労働と生活が克明に描かれている。

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2009年7月-2009年8月に労働図書館受け入れ

  1. ニッセイ基礎研究所編『図解20年後の日本』日本経済新聞出版社(230頁,A5判)
  2. 藤谷忠昭著『個人化する社会と行政の変容』東信堂(ⅹ+304頁,A5判)
  3. 国立国会図書館編『オーストラリア・ラッド政権の1年』国立国会図書館(ⅱ+162頁,A4判)
  4. 大村敦志著『新しい日本の民法学へ』東京大学出版会(ⅹⅳ+552頁,A5判)
  5. ジョージ・A.アカロフ他著『アニマルスピリット』東洋経済新報社(ⅹⅴ+278+45頁,B6判)
  6. 生活経済政策研究所編『ポスト新自由主義の世界秩序』生活経済政策研究所(6+73頁,A5判)
  7. ポール・シュライヤー著『OECD生産性測定マニュアル』慶應義塾大学出版会(ⅹ+171頁, B5判)
  8. 猪木武徳著『戦後世界経済史』中央公論新社(ⅳ+406頁,新書判)
  9. 上野泰也著『「依存症」の日本経済』講談社(222頁,B6判)
  10. 機械振興協会経済研究所編『ASEANのFTAによる域内及び対日貿易への影響』機械振興協会(177頁,A4判)
  11. 機械振興協会経済研究所編『モノづくり産業の新規創業における"中高年企業家"の実態と可能性』機械振興協会(ⅱ+93頁,A4判)
  12. 中同協40周年記念誌刊行委員会編『時代を創る企業家たちの歩みⅡ』中小企業家同友会全国協議会(205頁,A5判)
  13. 中小企業総合研究機構編『少子化時代における中小企業と子育て関連ビジネス・・・』中小企業総合研究機構(101+13+52頁,A4判)
  14. 中小企業総合研究機構編『サービス産業における中小企業人材と情報の活用・・・ 』中小企業総合研究機構(102+96頁,A4判)
  15. 小嶌典明著『職場の法律は小説より奇なり』講談社(270頁,B6判)
  16. 原田泰他著『世界経済同時危機』日本経済新聞出版社(230頁,B6判)
  17. 日本社会心理学会編『社会心理学事典』丸善(ⅹⅷ+684頁,A5判)
  18. 広井良典他著『土地・資産をめぐる格差と社会保障及び関連政策』全国勤労者福祉・共済振興協会(139頁,B5判)
  19. P.ヴァン・パリース著『ベーシック・インカムの哲学』勁草書房(ⅷ+494頁,A5判)
  20. 日本経団連事務局編著『Q&A改正労基法早わかり』日本経団連出版(149頁,A5判)
  21. 総合研究開発機構編『終身雇用という幻想を捨てよ』総合研究開発機構(26頁,A4判)
  22. 高齢・障害者雇用支援機構編『事業協同組合における障害者雇用事例』高齢・障害者雇用支援機構(67頁,A4判)
  23. 笠木恵司著『キャリア・チャレンジ』日本経済新聞出版社(351頁,A5判)
  24. 連合総合生活開発研究所編『広がるワーク・ライフ・バランス』連合総合生活開発研究所(301頁,A4判)
  25. 島田隆司著『日本型ワークシェアリングのしくみ』中経出版(94頁,B6判)
  26. 林千代編『五味百合子女性福祉論集』ドメス出版(349頁,A5判)
  27. 苅谷剛彦著『教育と平等』中央公論新社(290頁,新書判)
  28. 藤井泰他編『地域社会における教師の仕事と生活』松山大学総合研究所(6+153頁,A5判)
  29. 横田雅弘研究代表『中国における日本と諸外国への留学生送出し要因の比較研究』明治大学国際日本学部(112頁,A4判)
  30. 寿山泰二他著『大学生のためのキャリアガイドブック』北王路書房(ⅵ+157頁,A5判)
  31. 機械振興協会経済研究所編『グリーン・ネットワークの動向と新たな省エネビジネスの展望』機械振興協会(ⅳ+142頁,A4判)
  32. 機械振興協会経済研究所編『日本自動車メーカーの海外展開と国内基盤強化の方向性』機械振興協会(ⅱ+21頁,B6判)
  33. 機械振興協会経済研究所編『航空宇宙産業における人材有効活用に向けたネットワーク構築』機械振興協会(95頁,A4判)
  34. 機械振興協会経済研究所編『デジタル家電産業におけるグローバル活動の新展開と国際競争力』機械振興協会(238頁,A4判)
  35. 国立国会図書館編『経済分野における規制改革の影響と対策』国立国会図書館(129頁,A4判)
  36. 得丸美津枝著『飲食店のクレーム&トラブル接客対応術』旭屋出版(275頁,A5判)
  37. 機械振興協会経済研究所編『機械製造業のアジア展開に伴う物流システムの高度化・・・』機械振興協会(86頁,A4判)
  38. 金弘錫他著『新流通・経営概論』成山堂書店(ⅷ+117頁,A5判)
  39. 日本在外企業協会編『インドビジネスリスクハンドブック』日本在外企業協会(115頁,B5判)
  40. 阿部紘久著『文章力の基本』日本実業出版社(206頁,B6判)