2009年3月の図書紹介(2009年2月受け入れ図書)

1.古沢昌之著『グローバル人的資源管理論』白桃書房(ⅹⅳ+285頁,A5判)

 著者20年来の「日本企業の国際人的資源管理に関する研究」の成果である。「国境を越えた協同」のあり方を、文献研究、アンケート調査、事例調査、欧米との比較研究という多彩な方法で追求している。日系企業の発展には、現地適合とグローバル統合の両立、国境を越えた社会化とグローバル人事制度が鍵になるとしている。

2.伊藤元重編『リーディングス格差を考える』日本経済新聞出版社(ⅵ+250頁,B6判)

 本書は、現代日本のホットイシューである格差問題に関する既発表論文の編集著作物(リーディング)である。NIRAプロジェクトとしてまとめられた。多くの資料を渉猟し、所得・雇用・若年・教育・地域間格差を取り上げた論文や米国の事例紹介論文等で構成されている。格差問題に対する学界の努力が一望可能である。

3.チャールズ・ユウジ・ホリオカ他編『世帯内分配と世代間移転の経済分析』ミネルヴァ書房(ⅶ+176頁,A5判)

 家計経済研究所「世帯内分配・世代間移転に関する研究」の成果である本書は、家族内の経済関係の把握を目的としている。アンケート調査等による分析は、従来の一人稼ぎ手モデルが有効性を喪失し、所得格差が拡大した現在、世帯内所得分配や消費、教育・相続等による所得移転の実態把握にも有意義な方法であろう。

4.日本司法書士会連合会編『個別労働紛争解決支援の実務』青林書院(ⅹⅶ+420頁,A5判)

 本書は、市民の法的需要に一人でも多くの司法書士が対応できるように、個別紛争解決支援の実務指針として編纂された。個別労働紛争解決を支援する法制度が整備され、相談件数、訴訟事件とも増加しているが、訴額の少額化によって司法書士のニーズが増大すると見込んだ日本司法書士会連合会の対策の一つである。

5.荒木尚志他著『詳説労働契約法』弘文堂(ⅷ+312頁,A5判)

 労働契約法に関する解説書出版が一段落したと思ったところに本書が出版された。他著との比較は小子の能力を越えているが、本書の特徴は、法制定過程に関与した3人の労働法学者が制定の意義、経緯、課題を共通意見として詳論したことであるという。小ぶりな本法は、産婆役の庇護の下どう成長していくであろうか。

6.新谷勝著『新しい従業員持株制度』税務経理協会(2+8+267頁,A5判)

 平成5年に制定された日本証券業協会の自主ルール「持株制度に関するガイドライン」は、金融商品取引法等に合わせ改正(新ガイドライン)されたが、有効な買収防衛策としての安定株主づくりと株価対策として本制度の重要性が再認識されてきた。現下の株価急落に対処するため、本制度の詳細な紹介は有意義である。

7.水谷英夫著『ジェンダーと雇用の法』信山社(ⅹⅲ+286頁,B6判)

 日本は、母親になるのにベストな国ランキングで146カ国中31位であるという。このような現状の下著者は、『ジェンダーと法』に続く本書でジェンダーと平等、雇用との関わりを論じ、性差別を克服する方法を模索、職場と家庭のジェンダー平等をめざして、ジェンダー法理論、ジェンダーと雇用法を実践的に検討している。

8.三富紀敬著『イギリスのコミュニティケアと介護者』ミネルヴァ書房(ⅹⅰ+418頁,A5判)

 コミュニティによるケアについてイギリスの支援の現状と課題を歴史的及び国際比較により検討、日本の社会福祉政策への示唆を得ようとしている。イギリス等海外の介護問題をテーマとした著者3作目の「MINERVA社会叢書」。介護者のバーンアウト問題に関し、レスパイトケアやカウンセリング等の対策にも言及している。

9.九州弁護士会連合会他編『障害者の権利と法的諸問題』現代人文社(303頁,A5判)

 国の障害者政策は財政状況に影響され、措置制度から支援費制度へ、さらに応益負担原則に基づく障害者自立支援法へ大きく変化しているが、本書では障害者の権利を原点に、国際的潮流を概観するとともに、参政権や成年後見制度など実務上の問題点も分析している。障害者問題は財政とは独立的であるべきなのである。

10.佐藤博樹編集代表『ワーク・ライフ・バランス』ぎょうせい(ⅹ+325頁,A5判)

 「子育て支援シリーズ」第2巻として、仕事と子育ての両立支援の視点からワーク・ライフ・バランス(WLB)を考察、企業の取組、政府・自治体による制度促進策、国際比較や法的枠組等で本書は構成されている。両立支援からWLBに関心が移行し、労働者生活全体への配慮の中で子育て支援も検討されつつあるのである。

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2009年1月に労働図書館受け入れ

  1. 神田昌典他著『10年後あなたの本棚に残るビジネス書100』ダイヤモンド社(123頁,B6判)
  2. 慶応義塾大学法学部編『慶応の教養学』慶応義塾大学法学部(ⅶ+451頁,A5判)
  3. 杉村芳美著『職業を生きる精神』ミネルヴァ書房(ⅹⅲ+301+6頁,B6判)
  4. 田島弓子著『ワークライフ"アンバランス"の仕事力』ディスカヴァー・トゥエンティワン(225頁,B6判)
  5. 慶応義塾大学法学部編『地域研究』慶応義塾大学法学部(ⅵ+291頁,A5判)
  6. 慶応義塾大学法学部編『政治・社会』慶応義塾大学法学部(ⅶ+329頁,A5判)
  7. 高橋洋一著『霞が関をぶっ壊せ!』東洋経済新報社(ⅹⅵ+270頁,B6判)
  8. ネクストドア著『新地方公務員になろう』インデックス・コミュニケーションズ(206頁,B6判)
  9. 功刀達朗他編著『社会的責任の時代』東信堂(ⅹⅰ+286頁,A5判)
  10. 慶応義塾大学法学部編『商事法』慶応義塾大学法学部(ⅵ+273頁,A5判)
  11. 常木淳著『法理学と経済学』勁草書房(ⅹ+173頁,A5判)
  12. マッテオ・モッテルリーニ著『経済は感情で動く』紀伊國屋書店(316頁,B6判)
  13. 今井健一他編『中国 産業高度化の潮流』日本貿易振興機構アジア経済研究所(ⅴ+286頁,A5判)
  14. 佐藤幸人編『台湾の企業と産業』日本貿易振興機構アジア経済研究所(ⅷ+325頁,A5判)
  15. 岡本次郎著『オーストラリアの対外経済政策とASEAN』日本貿易振興機構アジア経済研究所(ⅷ+316頁,A5判)
  16. 坂中英徳他著『移民国家ニッポン』日本加除出版(189頁,B5判)
  17. ISSコンサルティング編『経営プロフェッショナルはいかに自分を高めたか』ダイヤモンド社(ⅷ+242頁,B6判)
  18. 江副浩正著『リクルートのDNA』角川書店(215頁,新書判)
  19. 立石泰則著『企業栄えて、我ら疲弊す』草思社(255頁,B6判)
  20. デーブ・ウルリヒ他著『人が生み出す会社の価値』日経BP社(358頁,A5判)
  21. 杉山秀文著『「名ばかり管理職」リスクを見直す!』日本法令(296頁,A5判)
  22. 川喜多喬他著『人材育成キーワード99』泉文堂(232頁,B6判)
  23. 原田泰他著『物価迷走』角川書店(221頁,新書判)
  24. 竹森俊平著『資本主義は嫌いですか』日本経済新聞出版社(283頁,B6判)
  25. ナン・リン著『ソーシャル・キャピタル』ミネルヴァ書房(ⅹⅵ+371頁,A5判)
  26. 雨宮処凛著『怒りのソウル』金曜日(140頁,B6判)
  27. 蓼沼謙一著『労働時間法論』信山社出版(ⅷ+635+4頁,A5判)
  28. 唐津博他編『労働法重要判例を読む』日本評論社(287頁,A5判)
  29. 太田光他著『我働くゆえに』講談社(139頁,新書判)
  30. 職業能力開発研究会編『詳解職業能力開発の現状改訂3版』雇用問題研究会(379頁,A5判)
  31. 榑松佐一著『トヨタの足元で』風媒社(182頁,B6判)
  32. 清水直子著『おしえて、ぼくらが持ってる働く権利』合同出版(150頁,A5判)
  33. 坂巻美和子著『女性の再就職力』北辰堂出版(158頁,B6判)
  34. 竹内裕著『日本の賃金』筑摩書房(204頁,新書判)
  35. 石垣修一著『企業年金運営のためのエリサ法ガイド』中央経済社(2+23+418頁,A5判)
  36. キース・P.アムバクシア著『年金大革命』金融財政事情研究会(428頁,A5判)
  37. 東武労組女性労働運動史研究会編『発車オーライ』ドメス出版(208頁,A5判)
  38. メディア総合研究所編『貧困報道』花伝社(83頁,A5判)
  39. マイケル・エリック・ダイソン著『カトリーナが洗い流せなかった貧困のアメリカ』ブルース・インターアクションズ(ⅹⅰ+293+28頁,A5判)
  40. 石渡嶺司他著『就活のバカヤロー』光文社(278頁,新書判)