2008年9月の図書紹介(2008年8月受け入れ図書)

1.山口一男他編著『論争 日本のワーク・ライフ・バランス』日本経済新聞出版社(323頁,B6判)

 本書は、経済産業研究所主催シンポジウム「ワーク・ライフ・バランスと男女共同参画」の結果を編集したものである。家庭と職場のあり方、少子化対策等4つのテーマに関して8人の論客が報告し、議論を闘わせている。編者の適切なまとめにより、会場との質疑応答も含めシンポジウム全体が1つの作品となっている。

2.五十嵐仁著『労働政策』日本経済評論社(ⅹⅳ+349頁,B6判)

 20年間『日本労働年鑑』を編集してきた著者によれば、労働者に厳しい社会経済情勢の中でも、人も会社も壊れないようにするための労働政策があるという。人類の生存と持続的発展を可能にする社会の実現のため労働政策とともに、経営倫理の確立と労働組合活動に期待するだけでなく「特上の国」日本を追求している。

3.篠原收著『男女共同参画社会を超えて』新水社(181頁,A5判)

 本書は、企業のダイバーシティ(多様性)への取組状況と外国人労働者の受入状況を分析することにより、多様性の現状と課題を考察している。多様性が受容、尊重される社会が確立される方法を模索、性や国籍等でなく個人の能力等によって評価される社会の到来を望み、外国人共生基本法の早期制定に期待を寄せている。

4.大津和夫著『置き去り社会の孤独』日本評論社(242頁,B6判)

 我々は<つながり>の中で生かされているとみる著者は、<つながり>をもてないネットカフェ難民、年長フリーター等は社会から<置き去り>にされていると言う。本書は置き去り社会の実態、発生理由、欧州の取組みの検証により、置き去りにされる人々への共感を基に、置き去りのない国のための提言を行っている。

5.上野千鶴子他編『ケアという思想』岩波書店(ⅹ+246頁,A5判)

 介護保険法施行により高齢者ケアの世界は一変したが、その後8年を経て、制度や運用上の問題も浮き彫りになってきた。本書は「ケア、その思想と実践」双書全6巻の第1巻である。双書自体は、サービス利用者、ワーカー等各側面からケアをめぐる理論と実践を紹介しているが、本書は、思想的側面が焦点となっている。

6.川口章著『ジェンダー経済格差』勁草書房(ⅶ+282頁,A5判)

 ジェンダー経済格差の原因は、性差と社会規範に求められるが、本書は、①ゲーム理論によるジェンダー経済格差の分析、②日本的雇用制度と家庭内性別分業の相互依存関係の解明、③我が国でワーク・ライフ・バランスが実現可能な政策の議論、等を目的にしているが、達成度いかんは、専門家の判断に任せるしかない。

7.下山昭夫著『少子高齢社会の福祉・介護サービス職』学文社(ⅴ+217頁,A5判)

 本書は、介護保険制度施行後の要介護高齢者に対するサービスの担い手である「福祉・介護サービス職」の労働実態、就労意識、労働市場動向等を考察するとともに、介護保険施設や居宅介護サービス事業所の経営も分析している。老後を託すにたる福祉・介護労働者の確保・定着が望まれているが、著者の危機感は強い。

8.金沢夏樹他編『雇用と農業経営』農林統計協会(ⅶ+274頁,A5判)

 農業における雇用の歴史は中世まで遡ることができるようだが、現在の農業・農村における激しい人口減少、高齢化の進展等の影響はどのようなものであるのか。農業におけるボランティア労働、外国人研修・技能実習制度等の新たな動きを紹介するとともに、海外事例を参考に、雇用確保、人材育成の方策を模索している。

9.鈴木幸毅他編著『企業社会責任の研究』中央経済社(4+4+198頁,A5判)

 環境問題の深刻化、企業不祥事の多発等、企業と社会との共生が危機に陥っているが、本書は、企業統治、労働・人権、等の企業社会責任(CSR)の主要領域を、13人の研究者が理論的・実証的・歴史的に検討している。百花繚乱的な構成であるが、企業の置かれている社会的状況の厳しさを映し出しているのであろう。

10.篠塚英子他編著『少子化とエコノミー』作品社(265頁,A5判)

 お茶の水女子大学に設置されたCOEプログラムの成果「ジェンダー研究のフロンティア」双書の第3巻の本書は、日本社会のジェンダー問題、特に少子化や就業、婚姻等多様な問題を同じ儒教文化圏の中国・韓国との比較を通して解明しようとしている。中国・韓国のバネル調査に基づき分析されているのが強みである。

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2008年7月に労働図書館受け入れ

  1. 小川浩他著『アップルとグーグル』インプレスR&D(239頁,B6判)
  2. ラニー・エーベンシュタイン著『最強の経済学者ミルトン・フリードマン』日経BP社(359頁,B6判)
  3. 白石嘉治他編『ネオリベ現代生活批判序説』新評論(318頁,B6判)
  4. 石河康国著『労農派マルクス主義(上)』社会評論社(405+8頁,A5判)
  5. ロイド・ガードナー他編著『アメリカ帝国とは何か』ミネルヴァ書房(ⅷ+362+4頁,A5判)
  6. 今井弘道編『発展する東アジアと法学の課題』成文堂(10+326頁,A5判)
  7. 大塚勇一郎他編著『経済学における数量分析』産業統計研究社(ⅶ+164頁,B5判)
  8. マッテオ・モッテルリーニ著『経済は感情で動く』紀伊國屋書店(316頁,B6判)
  9. 脇田成著『日本経済のパースペクティブ』有斐閣(ⅷ+254頁,A5判)
  10. 藤村幸義著『老いはじめた中国』アスキー(229頁,新書判)
  11. 中尾武彦著『アメリカの経済政策』中央公論新社(ⅷ+249頁,新書判)
  12. 今井正幸他著『市場経済下の苦悩と希望』彩流社(ⅲ+280頁,B6判)
  13. 今井賢一著『創造的破壊とは何か』東洋経済新報社(ⅷ+270頁,A5判)
  14. 斎藤智文著『働きがいのある会社』労務行政(335頁,A5判)
  15. 中小企業総合研究機構編『ベンチャー企業創業時に関する調査研究』中小企業総合研究機構(ⅳ+204頁,A4判)
  16. エイドリアン・J.スライウッツキー著『大逆転の経営』日本経済新聞出版社(401頁,B6判)
  17. 末吉孝生著『新規事業の立ち上げ方』日本能率協会マネジメントセンター(205頁,A5判)
  18. シンシア・シャピロ著『外資系キャリアの出世術』東洋経済新報社(319頁,B6判)
  19. 藤村博之他著『ものづくり中小企業の人材確保戦略』雇用開発センター(ⅲ+201頁,A5判)
  20. 平井謙一著『人事評価者の心構えと留意点』生産性出版(181頁,A5判)
  21. 唐鎌直義編『生活保護』旬報社(103頁,A5判)
  22. 東京管理職ユニオン監修『偽装管理職』ポプラ社(207頁,B6判)
  23. 綾目広治他編『経済・労働・格差』冬至書房(ⅴ+259頁,B6判)
  24. 日本労使関係研究協会他編『多様な雇用形態をめぐる法的諸問題』日本労使関係研究協会(304頁,A4判)
  25. 週刊SPA!編集部編『天職への階段』扶桑社(271頁,B6判)
  26. 日本ILO協会他編『雇用平等法制の比較法的研究』日本ILO協会(304頁,A4判)
  27. 家村啓三他著『パートの賃確(賃金の確保)』社労think(150頁,B6判)
  28. 山川隆一著『労働契約法入門』日本経済新聞出版社(219頁,B6判)
  29. 竹田誠著『王子製紙争議(1957~60)』世界出版(ⅴ+246頁,A5判)
  30. 連合通信編集部編『労働組合とNPO』連合通信社(64頁,A5判)
  31. 村田毅之著『日本における労使紛争処理制度の現状』晃洋書房(ⅶ+219頁,A5判)
  32. 学習院大学経済経営研究所編『経営戦略としてのワーク・ライフ・バランス』第一法規(ⅷ+267頁,B5判)
  33. 富樫利一著『血価の証言』彩流社(318頁,B6判)
  34. アントニオ・ネグリ他著『ディオニュソスの労働』人文書院(465頁,A5判)
  35. 大庭健著『いま、働くということ』筑摩書房(265頁,新書判)
  36. 戒能民江編著『国家/ファミリーの再構築』作品社(281頁,A5判)
  37. 大正大学社会福祉学会記念誌編集委員会編『しなやかに、凛として』中央法規出版(341頁,A5判)
  38. 堀内真由美著『大英帝国の女教師』白澤社(253頁,B6判)
  39. 横田雅弘研究代表『年間を通した外国人学生受入れの実態調査』一橋大学留学センター(123頁,A4判)
  40. 馬渕浩一著『技術革新はどう行われてきたか』日外アソシエーツ(254頁,A5判)