2008年8月の図書紹介(2008年7月受け入れ図書)

1.金雅美著『MBAのキャリア研究』中央経済社(3+5+266頁,A5判)

 MBA学位の取得は、経済環境の不透明感が増す中、雇用の安定、キャリア・アップの手段となるのであろうか。日本におけるMBAは、お飾り的で実際のメリットが薄い印象をうけるが、同じ儒教文化圏に属する韓国、中国の状況はどうなのであろうか。3カ国のMBA活用状況の比較から日本の問題点が示されている。

2.小山明宏著『コーポレート・ガバナンスの日独比較』白桃書房(ⅶ+233頁,A5判)

 日本でコーポレート・ガバナンスが脚光を浴びて20年が過ぎようとしているが、近年の企業不祥事の多発により、再度関心が高まっている。本書は、ドイツとの比較やエージェンシー理論に基づき、コーポレート・ガバナンスを実証的に分析することにより、机上の空論でない企業統治システムの構築を模索している。

3.森詩恵著『現代日本の介護保険改革』法律文化社(ⅲ+193頁,A5判)

 本書は、高齢者介護保障政策の中心的役割を担う介護保険制度の本質と問題点を究明するものであるが、アンケート調査によって介護支援専門員と家族介護者の実像を描き、インタビューによって介護者の4分の1を占める男性家族介護者の課題を明らかにしている。老人医療等も含めた幅広い介護問題の書となっている。

4.江口隆裕著『変貌する世界と日本の年金』法律文化社(ⅹⅰ+243頁、A5判)

 どの国でも年金は、社会保障の領域にとどまらず、税制や国家財政の根幹に関わる広がりを持っている。拠出と給付のバランス、税方式か社会保険方式か等議論百出であるが、年金制度の必要性を基本に立ち返って考察するとともに、諸外国の年金改革を紹介、負担方式、国家の役割等についての著者の解答も示している。

5.日本労働弁護団編『現代労働裁判の実践と理論』旬報社(ⅹⅵ+675+9頁,A5判)

 総評弁護団を継承した日本労働弁護団は、労働者の権利の確立と労働運動の発展を願い、様々な労働裁判事件に弁護団として参画するとともに、その時々の課題についても労働者側にたった見解を表明する活動を行ってきた。本書は、結成50周年を記念して、関与した99の労働裁判を14の分野に分けて紹介したものである。

6.谷内篤博著『日本的雇用システムの特質と変容』泉文堂(6+4+227頁,A5判)

 バブル崩壊によって、日本的雇用システムは完全に終焉を迎えたのであろうか。年俸制、成果主義、コンピテンシー等が連日マスコミを賑わしているが、労働者の多くは安定雇用を望んでいる。本書は、日本的雇用システムの特質とその多面的な変化のありさまを考察、望ましい人材マネジメントの在り方を提示している。

7.天野寛子他著『男女共同参画時代の女性農業者と家族』ドメス出版(254頁,A5判)

 女性一般の社会参画と軌を一にして、農業経営の分野においても、黙々と働くだけの存在から主体性を発揮して働く女性や女性起業家が増えてきつつあるという。女性農業者支援の現状、彼女ら自身の生き方の告白、家族経営協定の事例の紹介等、本書では、現代の女性農業者の意識と労働の実態が多面的に紹介されている。

8.中澤高志著『職業キャリアの空間的軌跡』大学教育出版(ⅳ+187頁,A5判)

 離職転職者の増加等、職業キャリアを中心とする人々のライフコースはいかなる変化を見せているのか。製造業研究開発技術者とインターネット関連従事者・経営者等に焦点をあて、住居経歴の観点から職業キャリアを分析している。2つの産業の事例比較により自らの地域で生活し労働するライフコースを追究している。

9.嶺学編著『高齢者の住まいとケア』御茶の水書房(ⅶ+321頁,A5判)

 本書は、自立した後期高齢期の生活の基礎である住まいとケアについて制度や実態を概観し、その課題を探ろうとしている。本書に収録された高齢者の共生住宅、グループホーム、下宿屋の事例報告は、高齢者の新しい住まいの一端を示して興味深い。人生最後の生活の在り方は、もっと調査研究されるべきテーマである。

10.木村保茂他著『鉄鋼業の労働編成と能力開発』御茶の水書房(ⅹⅰ十296頁,A5判)

 本書は1980年代末に組織された「企業内教育研究会」によって1990年から実施された鉄鋼業調査のうち、93~00年の特定企業の事業所事例調査の成果である。労使関係、メンテナンス労働、社外工問題、人事処遇等、特定事業所に焦点を合わせることにより、広範なテーマにもかかわらず、掘り下げた分析が可能となっている。

(日本十進分類[NDC]順に掲載)

主な受け入れ図書

2008年6月に労働図書館受け入れ

  1. 石原俊彦他編著『自治体職員がみたイギリス』関西学院大学出版会(229頁,A5判)
  2. 宇野重昭他編『転機に立つ日中関係とアメリカ』国際書院(374頁,A5判)
  3. 山本和彦他著『ADR仲裁法』日本評論社(ⅹⅵ+407頁,A5判)
  4. 金湛著『中国の経済発展と格差』晃洋書房(ⅴ+168頁,A5判)
  5. 山本薫子著『横浜・寿町と外国人』福村出版(238頁,A5判)
  6. 江波戸哲夫著『リーダーシップ原論』プレジデント社(410頁,B6判)
  7. ビジネス・エシックス研究班編『ビジネス・エシックスの新展開』関西大学経済・政治研究所(220頁,A5判)
  8. 環境管理システム研究会編『中小企業の社会的責任経営』西日本新聞社(225頁,A5判)
  9. 樋口兼次他著『現代中国の集団所有企業』時潮社(280頁,A5判)
  10. 石塚史樹著『現代ドイツ企業の管理職職員の形成と変容』明石書店(264頁,A5判)
  11. 大久保力著『新しい魅力ある職場の条件』保険六法新聞社(195頁,B5判)
  12. 角直紀他著『女性を活用できない会社に未来はない!』講談社(246頁,B6判)
  13. 松本順市著『上司はなぜ部下が辞めるまで気づかないのか?』ナナ・コーポレート・コミュニケーション(174頁,B6判)
  14. 吉田寿著『ミドルを覚醒させる人材マネジメント』日本経済新聞出版社(278頁,B6判)
  15. 伊藤健市著『資源ベースのヒューマン・リソース・マネジメント』中央経済社(ⅷ+7+241頁,A5判)
  16. 荒井千暁著『人を育てる時代は終わったか』PHPエディターズ・グループ(206頁,B6判)
  17. 西田ひろ子編著『グローバル社会における異文化間コミュニケーション』風間書房(ⅶ+310頁,A5判)
  18. ゲイリー・ハメル著『経営の未来』日本経済新聞出版社(ⅹⅳ+344頁,B6判)
  19. 現代産業社会と人間関係研究班編『現代社会における人間関係の諸相』関西大学経済・政治研究所(85頁,A5判)
  20. 草尾光一著『脳・心臓・精神疾患』新日本法規出版(8+513頁,A5判)
  21. 佐藤治彦編著『使い捨て店長』洋泉社(190頁,新書判)
  22. ヒュー・コリンズ著『イギリス雇用法』成文堂(ⅷ+305頁,A5判)
  23. 吉尾清著『社会保障の原点を求めて』関西学院大学出版会(352頁、A5判)
  24. 福澤徹三著『自分に適した仕事がないと思ったら読む本』幻冬舎(175頁,新書判)
  25. 金子雅臣著『部下を壊す上司たち』PHP研究所(251頁,B6判)
  26. ジャネット・ハンター著『日本の工業化と女性労働』有斐閣(ⅵ+376頁,A5判)
  27. 伊藤健市著『インターナショナル・ハーヴェスター社従業員代表制の研究』関西大学出版部(ⅹⅹⅳ+612頁,A5判)
  28. ヒューマンルネッサンス研究所編著『男たちのワーク・ライフ・バランス』幻冬舎ルネッサンス(222頁,B6判)
  29. 高橋保著『女性をめぐる法と政策』ミネルヴァ書房(ⅹⅳ+448頁,A5判)
  30. 伊藤るり他編『国際移動と「連鎖するジェンダー」』作品社(266頁,A5判)
  31. 金井淑子著『異なっていられる社会を』明石書店(336頁,B6判)
  32. 金澤史男編著『公私分担と公共政策』日本経済評論社(ⅹⅴ+475頁,A5判)
  33. 青山薫著『「セックスワーカー」とは誰か』大月書店(382+ⅹⅹⅹ頁,B6判)
  34. 高林秀明著『障害者・家族の生活問題』ミネルヴァ書房(ⅴ+239頁,A5判)
  35. 増田雅暢著『これでいいのか少子化対策』ミネルヴァ書房(ⅶ+210頁,A5判)
  36. 滝内大三著『女性・仕事・教育』晃洋書房(ⅲ+260頁,A5判)
  37. 上島国利編『働く人のうつ病』中山書店(ⅹⅱ+278頁,B5判)
  38. 福地保馬著『労働者の疲労・過労と健康』かもがわ出版(142頁,A5判)
  39. 宮尾克著『現代のコンピューター労働と健康』かもがわ出版(140頁,A5判)
  40. 榎一江著『近代製糸業の雇用と経営』吉川弘文館(6+329+7頁,A5判)