【主要企業の賃上げの状況】
昨年を上回る高い水準の賃上げ回答が相次ぐ。4%以上のベアを獲得する組合も
――主要企業170社の賃上げ回答一覧
春闘取材
主要企業の賃上げ交渉では、昨年を上回る高い水準の賃上げ回答を引き出す組合が目立った。また、先行して回答を引き出した自動車や電機の大手では満額回答も多かった。物価上昇を超える4%以上のベア・賃金改善を獲得した組合も少なくない。主要企業170社の賃上げ回答結果を見ながら、各業界の賃上げ回答の特徴点を紹介する。
大手メーカーすべてで要求満額か満額を上回る賃上げを獲得――自動車
自動車総連(組合員78万3,000人)の「メーカー部会」に所属する完成車メーカーの11労組はいずれも、要求に対する満額か、満額を上回る賃上げを獲得した(図表1)。
図表1

注:SUBARUは平均賃金ではない。
出所:自動車総連、金属労協公表資料
スズキでは組合の要求を上回る「総額2万500円」を経営側が回答
満額以上を獲得したのはスズキの労働組合で、組合側の要求である「総額1万9,000円」を上回る「総額2万500円」での妥結となった。
本田技研労組やマツダ労組、三菱自工労組などは要求どおりの満額を獲得。SUBARU労組は、平均賃金ではなく「基幹職で2,300円から5万100円、専任職は5,000円から4万円」と職掌に分けて資格に応じた賃上げ額を要求し、要求どおりの回答を得た。
トヨタ、日産は非公開だが要求どおりで決着
トヨタ労組は平均賃金での要求・回答内容を非公開としているが、自動車総連は「要求どおりの回答を獲得した」と説明している。なお、個別賃金の要求基準は、自動車総連が定義する「若手技能職」ポイントで36万6,210円、「中堅技能職」ポイントで43万8,230円、トヨタ労組が独自設定する「技能職EX級 技能3等級」が47万2,070円となっている。
日産労組についても、今年度の要求は「全組合員の最低限の生活水準を維持するための、賃金制度に基づく改定原資+特別配分」との文言を示して、要求額および回答内容を非公開としているが、自動車総連は「回答は要求どおりとなった」と説明した。
12組合の平均回答額は1万9,333円で1993年以降での最高水準に
自動車総連が発表した3月18日午後2時30分時点のメーカー部会の大手12組合(完成車メーカー11組合に部品メーカーの日本特殊陶業労組を加える)の、賃金カーブ維持分と賃金改善分を合わせた平均回答額(単純平均)は前年を863円上回る1万9,333円を記録し、1993年以降で最も高い水準となった。
自動車総連の金子晃浩会長は3月18日の会見で、大手メーカーの回答結果について「今後に続くすべての組合にとって大きな後押しになった。たいへん厳しいなか、各組合が自らの目指す要求水準をしっかり獲得できたことを高く評価している」と述べた。
一時金については、本田技研(5.4カ月を要求し、回答は5.3カ月)、いすゞ(「5.0+0.8カ月」を要求し、回答は「5.6カ月+5万円」)を除く9組合が満額を獲得。トヨタは前年比0.3カ月減の「7.3カ月」で、3年連続の7カ月台、スズキは前年比0.3カ月減の「6.3カ月」で、3年連続の6カ月台の水準を獲得した。なお、日産は要求を「安定的な生活を守るための最低限の水準」として、要求額および回答内容は非公開としているが、自動車総連は要求どおりの回答となったことを示している。
メーカー部会の大手12組合における平均回答月数(単純平均)は5.6カ月で、前年を0.2カ月下回った。
パナソニック、日立、富士通など6労組が要求満額の1万8,000円の水準改善を獲得――電機
電機連合(組合員56万5,000人)で、闘争行動を背景に産別統一闘争を展開する中央闘争組合(中闘組合、12組合)の回答結果をみると、パナソニックグループ労連、日立グループ連合、全富士通労連、三菱電機労連、NECグループ連合、村田製作所グループ労連の6労組が、要求に対する満額を獲得した(図表2)。中闘組合は統一して、「開発・設計職基幹労働者」(30歳相当)の個別ポイントで「1万8,000円以上」の水準改善を要求した。
図表2

出所:金属労協公表資料
満額回答に至らない6労組でも歯止め基準「1万2,000円以上」をクリア
中闘組合がストライキなどの闘争行動に移るかどうかを判断する、いわゆる回答の歯止め基準について、電機連合は集中回答日(3月18日)を目前に控えた3月16日に「1万2,000円以上」と設定した。
回答額は、今年は3パターンに分かれ、パナソニックなど6社が要求どおりの1万8,000円、東芝と明電舎が1万6,000円、シャープ、富士電機、沖電気、安川電機が1万5,000円となった。満額回答に至らなかった6労組も含め、12組合すべてが歯止め基準を大きく上回る水準で妥結するとともに、いずれも昨年実績と同等か、昨年を上回る水準となった。
電機連合の神保政史会長は3月18日の会見で、産業を取り巻く環境や実質賃金の向上などの観点をふまえ、前年より1,000円高い要求額を掲げた結果、「要求趣旨に沿って論議を重ね、電機産業労使として思いを共有し合えたことがこの結果を結んだ」とコメントした。
一時金については、業績連動方式を採用していない組合の交渉結果をみると、日立が「年間6.66カ月」(組合要求は年間6.8カ月)、三菱電機が年間6.1カ月(同年間6.5カ月)、富士電機が年間6.4カ月(同年間6.4カ月)、沖電気が年間4.6カ月(同年間5.0カ月)となっている。
総合重工と非鉄大手では満額か満額を超える賃金改善を獲得――鉄鋼、総合重工、非鉄
鉄鋼、造船重機、非鉄などの業界の労働組合でつくる基幹労連(組合員27万2,000人)は、春の労使交渉について、2年間を1サイクルとして考える「2年サイクル」方式をとっている。1年目は「総合改善年度」と位置づけ、労働条件全般の改善に取り組み、賃上げについては基本的に2年分の賃上げを交渉・協議する。2年目は「個別改善年度」と位置づけ、「年間一時金」や、総合組合とグループ・関連組合間の「格差改善」などを主なテーマとして取り組んでいる。
2026年度は「総合改善年度」にあたるが、基幹労連は賃金改善について、物価上昇や先行き不透明な経済情勢をふまえて、2年分の賃上げについて取り組むのではなく、2026年度・2027年度それぞれ単年度で取り組む方針とした。
要求額は昨年度と同額の1万5,000円とし、柔軟な設定を許容
方針では、賃金改善の要求について、昨年度と同額の1万5,000円と設定。ただし、業種ごとに業績にばらつきがあることをふまえ、「部門・部会ごとの置かれた状況の違いを相互に認識したうえで、一定の柔軟な設定を認め合う」こととした。
結果的に、業績が厳しかった「鉄鋼総合」部会を構成する日本製鉄、JFEスチール、神戸製鋼は要求額を産別方針どおりの1万5,000円とし、「総合重工」部会を構成する三菱重工、川崎重工、IHI、住友重機械、三井E&S、キャタピラー日本(製造委員会)、カナデビアは方針を上回る1万6,000円を要求。「非鉄総合」部会を構成する三菱マテリアル、住友金属鉱山、三井金属、DOWA、JX金属は1万5,000円とした。
総合重工では6組合が満額を獲得し、非鉄とともに満額超えの回答も
交渉の結果、「鉄鋼総合」部会では、日本製鉄が1万円、JFEスチールが7,000円、神戸製鋼が1万3,000円で決着(図表3)。中国による鉄鋼の過剰生産などによる業績の低調が響いた。「総合重工」部会では、三井E&S以外の6組合が満額獲得となり、三井E&Sは要求超えの1万7,000円(賃金等処遇改善を含む)で妥結した。「非鉄総合部会」では、三菱マテリアル、住友金属鉱山が満額回答となり、JX金属では1万6,000円、DOWAでは1万7,000円、三井金属では2万33円と、要求超えの回答となった。
図表3

出所:金属労協、基幹労連公表資料
「労使で経営競争面での課題を共有、認識することができた」と津村委員長
基幹労連の津村正男委員長は3月18日の記者会見で、先行大手の回答について「全体としては要求どおりか要求以上の回答が多い。要求どおりとならなかったところも含めて、労使で経営競争面での課題を共有、認識することができた。部門・部会でまとまりをもって成果にこだわって取り組んだ結果だと受け止めている」と評価した。
横河電機、ヤンマーなどが満額かそれ以上の回答――機械、金属
機械・金属関連の中小労組を多く抱えるJAM(組合員36万9,000人)は、今次闘争では賃金改善分として1万7,000円以上を要求する方針を掲げた。金属労協が設定した集中回答日(3月18日)までに回答を引き出す「先行グループ」と、JAMにおける相場形成役を担うそれ以外の主要組合の回答をみると、横河電機、ヤンマー、NOK、ボッシュなどがJAMの方針に沿って1万7,000円以上の要求を掲げ、経営側から満額か満額以上の回答を得た(図表4)。要求額は1万7,000円未満とはなったが、アズビル(平均1万5,600円)、全矢崎(平均1万6,000円)、村田機械(平均1万6,000円)なども要求満額を獲得した。また、ジーエス・ユアサは賃金改善1万9,000円(平均)を要求し、1万8,000円の回答を得た。コマツユニオンは1万9,000円(平均、うち500円は再雇用社員・非正規社員の配分)を要求し、回答は1万7,460円(平均、うち160円は再雇用社員・非正規社員の配分)となった。
図表4

注:特段の記載がなければ、回答額のうち、ベア・賃金改善分等のみ。
出所:JAM公表資料、連合公表資料
オークマ、島津、アズビルなど先行グループ11組合の回答平均は、1万4,985円で、賃金構造維持分とあわせると2万1,354円となった。
大手4組合のうち、住友電工など3組合が要求満額を獲得――電線
1万5,000円以上の賃金改善を要求方針とした全電線(組合員2万6,000人)では、大手4組合は揃って1万5,000円を超える賃金改善を要求した。その結果、住友電工とSWCCは1万8,000円の要求満額、古河電工は1万6,000円の要求満額を獲得した。フジクラは1万9,000円を要求し、1万8,000円で妥結した(図表5)。
図表5

出所:金属労協公表資料
繊維素材、化学繊維の大手は満額の4%相当の引き上げを獲得――化学・繊維などその他の製造業
UAゼンセン(組合員196万1,000人)の「製造産業部門」に所属する繊維・化学などの主要組合では、繊維素材や化学繊維の組合がそれぞれ「業種共闘」を組み、4%に相当する引き上げ要求に取り組み、日東紡や富士紡績、東レなどで満額を獲得した。
繊維素材の日東紡や富士紡績は4%に相当する賃金改善を獲得
UAゼンセンの「製造産業部門」の要求基準は、賃金体系維持分に加え、4%を基準に賃金引き上げを要求し、格差是正分を上積みして要求するなどという内容。同部門に所属する東洋紡やカネボウなどの繊維素材部会の組合は「業種共闘」を組み、揃って4%に相当する額の「引き上げ分」を要求し、日東紡績(引き上げ分1万3,400円)、富士紡績(同1万2,450円)は4%に相当する満額を獲得した(図表6)。
図表6

出所:連合、UAゼンセン公表資料
グンゼ、ミズノなどの衣料・スポーツ部会では、揃って引き上げ分4%以上を要求。4.0%(1万3,657円)を要求したグンゼは2.56%(8,747円)での妥結、4.41%(1万6,485円)の要求をしたミズノは3.61%(1万3,485円)での妥結となった。
化学繊維の4組合も2年連続で満額の妥結に
繊維素材部会と同様に、揃って4%に相当する額の引き上げ要求を行った化学繊維部会に所属する全東レ労働組合連合会、旭化成グループ労働組合連合会、帝人労働組合、クラレ労連クラレ労働組合は、いずれも前年に引き続き満額の4%を獲得。引き上げ額は東レが1万4,090円、旭化成が1万5,308円、帝人が1万5,090円、クラレが1万5,088円となっている。
UAゼンセン「製造産業部門」の吉山秀樹事務局長は3月18日の会見で、「同業種の組合で共闘体制をつくり、情報交換しながら闘いを進めたことが結果につながった」などと述べ、後続組合に向けた相場形成でプラスとなる回答結果を評価した。
化学部会を中心に7つの連合登録組合が満額以上の回答を獲得
JEC連合(組合員12万9,000人)は、今春闘の闘争方針に引き続き賃上げに取り組む必要性を明記したうえで、前年同様、定期昇給相当分(JEC連合では約2%)の確保を大前提に、平均所定内賃金4%(額で1万3,000円)以上のベア要求を示した。
連合登録組合全体では、回答があった24組合のうち7組合が満額以上の回答を獲得(5月21日時点の連合回答速報)。そのうち、化学部会ではトクヤマ(賃上げ分1万4,139円)や日本触媒(同1万6,000円)、ADEKA(同1万6,000円)などが満額回答を得たほか、日油(同1万6,084円)とクレハ(同1万4,500円)は満額を超える回答で妥結・収束した。塗料部会の関西ペイント(同1万9,800円)も、満額回答となっている(図表7)。
図表7

出所:連合公表資料
「職務主義型」の人事制度を導入している三菱ケミカルは、賃上げ分1万6,260円に「要求4%に対する0.6%分を月例とは別に一時金として支給する一律3万円を含む」内容で決着した。同社は賃上げについて、所定内賃金4%の要求に対し「サーベイデータに基づき、比較対象の企業との年収差で劣後する水準でなく、物価上昇を考慮しても3.4%で十分」と回答。これに対し労組側は、「同業他社や採用競争となる企業は満額回答も予想されるなか、3.4%では不服」として交渉を継続したという。
最終的に組合側は本給以外での配分交渉に切り替えて原資獲得に臨み、「交渉の基礎となる組合員平均所定内賃金は月額40万6,500 円で、要求に対する不足分の0.6%は月2,439円、年間にすると2万9,268 円になる」ことから、3万円を一時金として支給することで賃上げ要求4%相当の原資を獲得した格好だ。
また、三菱ガス化学は、組合側の賃上げ分1万6,500円の要求に対し、1万5,271円の回答が示され、配分については「一律定額1万2,000 円、加算18~34 歳 5,500 円、35~41歳 5,100~500円。別途、再雇用組合員に一律1万7,500 円のベア実施」とすることで合意。「賃金カーブにおいて、(水準が他社より劣るわけではないものの)18~40歳強までの賃金が、他社と比較して優位性があまりみられない」として、18~34歳までを「現状の課題層」、35~41歳までは「今後課題になり得る層」とみて原資を増やす対応となった。
具体的な配分は、【18~34歳1万7,500円、(1万2,000+5,500)】【35歳:1万7,100 円(1万2,000+5,100)】【36歳1万6,700円(1万2,000+4,700)】【37歳:1万6,300 円(1万2,000+4,300)】【38歳:1万5,400円(1万2,000+3,400)】【39歳:1万3,500 円(1万2,000+1,500)】【40歳:1万3,000円(1万2,000+1,000)】【41歳:1万2,500円(1万2,000+500)】【42~59歳:1万2,000 円】【再雇用者:1万7,500 円(定昇なし)】となっている。
味の素労働組合、サッポロビール労働組合が満額かつ高水準の回答
フード連合(組合員11万9,000人)の加盟組合では、ニチレイ労働組合(ベア1万4,000円)、キッコーマン労働組合(ベア1万4,000円)、味の素労働組合(ベア1万6,000円)、日清オイリオグループ労働組合(ベア1万3,000円)、明治労働組合(ベア1万4,000円)、サッポロビール労働組合(ベア1万6,000円)などが、要求に対する満額獲得となった(図表8)。
図表8

注:日本ハムは日本ハムユニオンとしての回答額。
出所:連合公表資料
ゴム連合(組合員4万4,000人)に加盟する大手では、横浜ゴムの経営側は、組合の要求(賃金改善分1万3,000円)を上回る賃金改善分1万7,000円を回答。このほかでは、TOYO TIRE(賃金改善分1万2,000円)、ブリヂストン(賃金改善分1万3,000円)、住友理工(賃金改善分1万8,145円)などが要求満額を獲得している。
図表9

出所:連合公表資料
流通部門、総合サービス部門ではイオングループの高水準での早期妥結が相場を引っ張る――流通、サービスなど
UAゼンセンの「流通部門」と「総合サービス部門」では、イオングループの組合が高い引き上げ水準での早期妥結で、全体の相場を引っ張った。
UAゼンセンの賃金闘争では、各加盟組合が経営側から受けた回答で妥結するかどうかの最終決定(妥結承認)を、UAゼンセン本部が行う。「流通部門」からみていくと、今年の闘争で部門のなかで最初に妥結承認を受けたのは、GMS(総合スーパー)部会に所属するイオングループ労働組合連合会イオンリテールワーカーズユニオンで、回答のヤマ場より約1カ月早い2月19日に決着(全体では妥結2号)。正社員組合員については、引き上げ分(ベア分含む)1万5,144円(4.54%)を含む総額1万9,637円(5.89%)で妥結した(図表10)。短時間組合員のパートタイマー時給については、総額101.8円〈8.38%、内訳は制度昇給16.0円(1.32%)、引き上げ額85.8円(7.06%)〉を引き出した。
図表10

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注1:正社員組合員の引き上げ率は、UAゼンセン公表資料で判明していない箇所は記載していない。
注2:短時間(パート)組合員で未確認としたセルについては、公表資料では確認できなかった。
出所:連合、UAゼンセン公表資料
流通で妥結が2番目となったのは住生活関連部会に所属するマキヤグループ労働組合で、3月4日に、正社員組合員については総額2万957円(6.53%)、パートタイマーの時給については総額75.0円〈6.59%、内訳は制度昇給5.0円(0.44%)、引き上げ額70.0円(6.15%)〉で妥結した(全体では妥結5号)。
イオン九州は賃金体系維持分も合わせた賃上げ率で6%を超える水準を獲得
GMS(総合スーパー)の正社員組合員の交渉では、イオンリテールワーカーズユニオンのほかにも、イオングループ労働組合連合会イオン九州ユニオン(1万4,419円、4.99%)、平和堂労働組合(1万4,000円、4.48%)、FUJIユニオン(1万2,423円、4.36%)が4%以上の引き上げ分を獲得。イオン九州ユニオンは、賃金体系維持分も合わせた賃上げ率全体では6.42%と、6%を超える水準となっている。
スーパーのイズミヤ・阪急オアシスは7%を超える水準を勝ち取る
スーパーマーケットの正社員組合員の引き上げ分の獲得状況をみると、イズミヤ・阪急オアシス労働組合が2万1,406円(7.25%)と、7%を超える水準を獲得しており、いなげや労働組合(1万6,536円、4.73%)、ダイエーユニオン(1万4,008円、4.09%)、原信労働組合(1万3,017円、4.08%)も4%を超える水準。パートタイマーの時給では、カスミユニオン(90.0円、7.02%)が7%を超える引き上げ回答を引き出している。
「流通部門」の今回の要求基準は、正社員組合員については、ミニマム水準に未達の場合は総額で1万8,500円以上(7.0%以上)、部門到達基準に未達の場合は、賃金体系維持分がわかっている場合は引き上げ額1万4,000円(5.0%)以上、賃金体系維持分がわからない場合は総額1万8,500円以上(7.0%以上)とした。短時間(パートタイマー)組合員の要求基準は、正社員組合員と同等かそれ以上を要求するとし、正社員と職務の内容が異なる・同じ短時間組合員では、昇給制度がある場合は6.0%(70円)以上の引き上げ、制度がない場合は8.0%(総額90円)以上の引き上げなどとした。
「流通部門」の桂義樹事務局長は3月18日の会見で、同時点までに妥結した70組合中30組合が4%超の引き上げ総額を獲得したことや、パートタイマーは66組合中21組合が総額90円超を獲得し、前年同期(4組合)と比べてもかなり高い結果となっていると報告した。
総合サービス部門での妥結承認第1号はすかいらーく労働組合
UAゼンセンの「総合サービス部門」では、フードサービス部会に所属するすかいらーくグループ労働組合連合会すかいらーく労働組合が、UAゼンセンのなかで最も早く、2月19日に妥結承認を受けた。正社員組合員については引き上げ分が1万5,300円(4.0%)、賃金体系維持分を合わせた総額で2万173円(5.28%)、パートタイマーの時給では総額71.3円〈6.39%、内訳は制度昇給6.3円(0.56%)、引き上げ額65.0円(5.82%)〉との内容を引き出した。
同部門で妥結が2番目となったのは、ホテル・レジャー部会に所属するイオングループ労働組合連合会イオンファンタジー労働組合で、3月4日に、正社員組合員については引き上げ分(ベア分含む)1万6,000円(4.5%)を含む総額1万9,115円(5.38%)、パートタイマーの時給については総額90.8円〈6.94%、内訳は制度昇給10.8円(0.83%)、引き上げ額80.0円(6.11%)〉で妥結した(全体では妥結3号)。
同日には人材サービス部会のイオングループ労働組合連合会イオンディライトアカデミーも、正社員組合員について総額で2万5,269円(7.80%)、パートタイマーの時給について引き上げ額95.0円(6.94%)で妥結した(全体では妥結4号)。
フードサービス部会ではジョリーパスタで5%を超える引き上げ水準に
フードサービス部会では、すかいらーくのほかに、ジョリーパスタユニオン(1万6,224円、5.01%)が5%を超える引き上げを勝ち取り、ジョイフル労働組合(1万1,479円、4.07%)、サイゼリヤユニオン(1万1,694円、4.05%)、トリドールグループ労働組合(1万2,977円、4.03%)が4%以上の引き上げを獲得した。
なお、「総合サービス部門」の今年の要求基準は、正社員組合員については格差是正分1%以上を加えたうえで、金額要求では1万8,000円以上、率要求では金額要求を下回らないことを前提に、賃金体系維持分に加え5.0%以上で賃金を引き上げるなどとした。短時間(パートタイマー)組合員については、制度昇給分に加え、時間額を65円、5%基準で引き上げるとし、制度昇給が明確でない場合は総額で時間額85円、7%基準で引き上げるなどとした。
「総合サービス部門」の髙井哲郎事務局長は3月18日の会見で、同時点までで妥結した46組合中18組合で満額もしくはそれ以上の回答で妥結するなど、高めの賃上げ額が定着してきていると報告し、「早い段階で、労使で繰り返し議論を進めた結果」と評価した。
全日通は前年実績を上回ったが、ヤマト運輸は大きく減額
運輸労連(組合員15万5,000人)加盟の大手組合の回答結果では、全日通が総額で1万2,000円と前年より1,000円高い水準で決着したが、ヤマト運輸は総額で7,017円となり、前年の実績を大きく下回った(図表11)。
図表11

出所:連合公表資料
公益の大手各社では1万3,000円前後の賃金改善の回答が相次ぐ――電力各社、NTTグループ・KDDI、JP
「賃金カーブ維持分の確保を大前提に、3%以上の月例賃金引き上げに取り組む」方針を掲げた電力総連(組合員20万1,000人)傘下の労組に電力各社が示した回答をみると、各登録組合が定期昇給分を確保したうえで、平均方式では関西電力が組合の要求(1万3,000円)を3,000円上回る1万6,000円の賃上げで決着。また、九州電力は1万5,500円、中国電力は1万2,000円、北海道電力も「社員平均3%の月例賃金引き上げ」で収束した。このほか、東京電力ホールディングス傘下の東京電力フュエル&パワーと中部電力が折半出資し、火力発電・ガス事業を手がけるエネルギー企業のJERAも、組合要求の2万2,000円より2,400円高い2万4,400円で妥結している(図表12)。
一方、個別銘柄方式では、東北電力と四国電力、沖縄電力が1万3,000円、北陸電力は1万1,200円などとなった。なお、年俸制を採用している東京電力HDは、東電労組の「すべての社員の年収水準の5%引き上げ」要求に対し、「年収水準4.6%引き上げ」で妥結したことを公表している。
図表12

出所:連合公表資料
NTTは「グレード賃金」への配分増も含む総額1万3,000円の賃金改善
NTTグループ企業の労組でつくるNTT労働組合(組合員約14万1,000人)は、26春闘で主要5社(NTT持株、NTT東日本、NTT西日本、NTTドコモ、NTTデータ)に対し「制度による昇給(査定昇給)分を除き、グレード賃金および成果手当を3.75%(1万5,000円相当)改善」することを求めた。これに対し、会社側は月例賃金の改善分について、組合要求には届かなかったものの、過去最高となる1万3,000円(特別手当への反映分を含む総額)を回答して妥結・収束した(図表13)。賃上げは13年連続。
具体的な内容は、グレード賃金については1人平均2,000円相当(特別手当への反映分も含め1人平均総額3,000円相当)、成果手当は1人平均1万円相当を改定する。グレード賃金はこれまでの3倍近い増額となった。物価を上回る賃上げの実現とグレード賃金への配分増にこだわり、交渉を積み重ねたことが奏功した格好だ。
このほか、情報労連の構成組織では、KDDIも組合が「定期昇給相当分を含めて5%以上」を要求し、「ベア8,000円+昇給加算+賞与加算+定期昇給相当分にて5.1%」の回答が示された。会社側の発表によると、総合職のうち非管理職社員に対し、月額8,000円のベアと定期昇降給を月平均1万円実施。さらに、高評価者に対し月平均1万2,000円の特別昇給と、年平均40万8,000円の特別賞与を支給する。会社側は、これらを合計した賃上げ率が平均で5.1%になるとしている。
図表13

出所:連合公表資料
JPは組合員の生活を守る「個々でみての年収維持」を堅持
国内最大の単一労組である日本郵政グループ労働組合(JP労組、組合員21万8,000人)は、26春闘で郵便・物流事業の縮小などで日本郵便の業績が厳しい半面、資金運用などが比較的好調なゆうちょ銀行とかんぽ生命の経営状況には同様の深刻さがみられないなどの実情をふまえ、①正社員の定期昇給の完全実施②組合員個々でみての年収維持③初任賃金および若年層の賃金改善④全号俸の賃金改善⑤時給制契約社員の賃金改善――の優先順位を定めて交渉に臨んだ。正社員の賃上げについては、連合方針の「5%以上」を念頭に、基準内賃金を前年より4,000円低い1万1,000円引き上げることを要求。一時金は前年同様、年間4.6月を求めることとした。
全正社員に1人あたりベア6,200円(1.9%)
交渉の結果、賃上げ分については、グループ統一のベースアップ1人あたり6,200円を引き出した(図表14)。水準は、2007年の郵政民営化後以降で最大だった25春闘の1万円を3,800円下回る。ベア分の賃上げ率は正社員の月例賃金の1.9%に相当し、定期昇給分5,800円(基準内賃金1.8%に相当)も含めると3.7%の賃金改善となる。
図表14

出所:連合公表資料
ベアの実施は4年連続。ベア分の配分については、25春闘では5,000円を全社員一律に基本給の改善分としたうえで、残りの財源を一般職や地域基幹職、総合職などの若年層を中心とした賃金改善に充てたが、今回は中高年層の賃金改善も意識してシニア職も含む全正社員に1.9%の改善が図られる。JP労組の試算によると、若年層で平均4,000円台、中高年層は7,000円台のベアになるという。
4社の総合職とゆうちょ銀行とかんぽ生命のエリア基幹職等に初任給調整給を上乗せ
そのうえで、4社の総合職とゆうちょ銀行、かんぽ生命のエリア基幹職等には、初任給調整給を適用することも合意した。具体的には、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の総合職とエリア基幹職等には4,200円(基準内賃金1.3%の改善に相当)の初任給調整給を上乗せして支給。2社の基準内賃金は、上記ベア分・定昇分とあわせて合計5.0%の改善になる。
初任給調整給は、ベア分をグループ統一とするなか、別途、採用市場で初任給が急激に上昇している金融関係市場に対抗するためにとられた措置。これにより、2社の初任給は2万4,500円アップするとともに、30代前半頃までの若年層にも傾斜配分される。基本賃金に初任給調整給の項目を設けることで、初任給をはじめ若年層の賃金改善を図り、人材の確保・定着につなげる考えだ。
年間一時金の差は0.5月まで拡大
一方、年間一時金については、年収の維持を重視しつつ、各社の業績等をふまえた結果、日本郵政・日本郵便が4.0月(前年比0.3月マイナス)、ゆうちょ銀行が4.5カ月(同0.1月プラス)、かんぽ生命が4.4カ月(同0.1月プラス)で決着。初めて会社間で大きく差がつく形になった。
今春闘での日本郵便の交渉は当初、経営側から「定期昇給すらできない」との回答が示されていたという。「そこからベア1.9%を引き出し、組合員個々の年収が維持できる一時金水準を算出したら4.0月だった。その後、昨年の年収を誰一人下回らないことを重視して交渉を重ね、一時金の引き下げを0.3月にとどめた。そのうえで、ゆうちょ銀行とかんぽ生命は、資金運用が上手く行っている分、組合員の期待に応えて欲しいと主張した」(福田千秋書記次長)。この結果、組合員の生活を守るための「個々でみての年収維持」が堅持された格好だ。
(田中瑞穂、奥村澪、荒川創太、新井栄三)
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【賃上げの全体状況】
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- 賃上げの流れが「大都市圏のみならず全国的に広がる」 ――連合の2026春季生活闘争「地方連合会合同記者会見」
【主要企業の賃上げの状況】
- 昨年を上回る高い水準の賃上げ回答が相次ぐ。4%以上のベアを獲得する組合も ――主要企業170社の賃上げ回答一覧


