【賃上げの全体状況】
賃上げの流れが「大都市圏のみならず全国的に広がる」
――連合の2026春季生活闘争「地方連合会合同記者会見」
春闘取材
連合(芳野友子会長)は2026春季生活闘争が最終盤を迎える5月27日、地方連合会合同記者会見を開き、各都道府県の賃上げ回答額・率を公表した。春闘期に地方連合会を集めた会見は、昨年に続き2度目。会見には、奈良県を除く46都道府県の地方連合会の会長が出席した。賃上げ状況について、仁平章・総合政策推進局長(会見当時、現在は副事務局長)は、「今の賃上げの流れは、大都市圏のみならず全国的な広がりがあると読み取れる」として、未決着の中小労組だけでなく、組合のない地方・地場の中小零細企業や未組織労働者にも賃上げ相場を波及させる必要性を訴えた。一方、今春闘では、中小受託取引適正化法(取適法)が2026年1月に施行されたことなどを受けて、連合の複数の産別組織が価格転嫁の「出前相談会」を開催し、継続的な賃上げ実現のための交渉力の強化を図っている。
「中小企業含め高い賃上げを日本全体に波及させるにはこれからが勝負」(芳野会長)
冒頭、芳野会長は会見の目的を、「春闘がいまだ終わっておらず、現在も継続していることを社会に訴え、その勢いを継続する」ことだと説明した。会見時の直近の回答集計(5月7日時点)で、平均賃金方式で回答を引き出した4,046組合の加重平均が1万6,733円・5.05%となっていたことをふまえ、「春闘の基本方針に掲げた5%以上の賃上げ目標を現時点では達成しており、人への投資を起点とする好循環が回っていく賃上げが当たり前の社会に向けて前進した」と評価。
春闘交渉の期間中に中東情勢が激変したことについては、「日本経済や国民生活への影響が懸念されたものの、危機感を持ちつつも今後の動向を冷静に見極め、交渉を進めた労使が多かった」との見方を示す一方、「3月月内決着ゾーンを設定して取り組んできたが、4月までに賃金改定を行う企業は日本の企業の半分程度」だった点も指摘した。
そのうえで、「中小企業なども含めて高い賃上げを日本全体に波及させるにはこれからが勝負」だと述べ、中小組合の賃上げに向けた機運醸成に注力していく考えを鮮明にした。
全規模で23、中小では17地域が賃上げ率5%超
この日、配付された全地方連合会の全規模および300人未満の賃上げ額・率(加重平均)を集約した「地場共闘集計結果」をみると、都道府県によって集計日が3月末~5月中・下旬、賃上げ率も全体、中小ともに3%台~7%台までばらついている(図表)。産業構成も各地で異なっており単純な比較はできないものの、賃上げ率5%を超える地域が全体で23、中小も17みられる。なお、岩手、群馬、岐阜、滋賀、奈良、長崎の6県は、集計日が5月にもかかわらず、全体・300人未満ともに賃上げ率が5%超。大阪も全体では5%を超える賃上げ率となっている。
図表:2026春季生活闘争 地方連合会 地場共闘集計結果(連合本部集約 5月25日時点)

注:-(ハイフン)は地方連合会として非公表など。
(連合の会見配付資料から編集部で作成)
300人未満の賃上げ率が5.31%で全体(5.16%)を上回る――連合岩手
また、会見では連合岩手と連合香川が、春闘交渉の最新状況を報告した。連合岩手の回答集計(5月22日時点)は、全体で1万5,536円・5.16%、300人未満では1万4,079円・5.31%と、いずれも率で5%を超えたうえに300人未満が全体を上回っている。この段階での状況について、伊藤裕一会長は、「現時点での中間的な評価」としたうえで、「一昨年が岩手で2000年以降、最高水準だった。昨年、今年と若干数値は落ちているが、率だけで言えば本部集計を上回っており、特に中小組合が健闘している」と話した。そして、要因として①要求目安を毎年、本部の目安から上積みしている②他の地方連合会同様、地方版政労使会議を開催している③まだ十分とは言えない価格転嫁の円滑化に向けて(金融機関などの)団体を追加し、(実施項目も一部改正する形で)「価格転嫁の円滑化による地域経済の活性化に向けた共同宣言」を締結した④1時間あたり60円以上の賃上げを行った企業等に従業員1人あたり6万円を支給する「物価高騰対策賃上げ支援金」が実施されている――ことなどをあげた。
価格転嫁が進んだ中堅単組で大幅引き上げが――連合香川
一方、連合香川の回答集計は、4月末までで全体1万6,177円・5.24%、300人未満1万3,152円・5.21%で、中小労組が昨年実績を大きく上回っているという。福家良一会長は、「中小の妥結状況を昨年対比してみると、昨年を上回る賃上げを獲得した組合は特に中堅で大幅に引き上げたところがあるなかで、下回った組合では大きく下がったところが少なく、トータルで昨年を上回る結果になった」と解釈。大幅に引き上がった単組では「企業の経営努力もあって価格転嫁が進んだことでベアを獲得できた。先行きが不透明ななかでも、交渉で賃上げノルムを意識し取り組んだ組合が多く、それが中小の引き上げにつながった」などと説明した。自治体が実施する賃上げ支援策の利用状況についても触れ、国の「物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金」活用事業のなかで、県が実施した「香川県事業者の未来への投資を応援する総合補助金」の申請が「相当な件数あった」としている。
なお、会見の前には、大手労組の賃上げの中小労組等への波及や組織拡大などにつなげようと、東京・丸の内で、2026春季生活闘争「連合アクション全国賃上げ波及5.27街頭アピール行動」を展開。地方連合会の代表者が、各地域の状況を交えて賃上げの重要性や春季生活闘争の意義、格差是正、価格転嫁・適正取引、労働組合の必要性などを訴えた。
取適法の施行を受けて産別組織が「出前相談会」を開催
適正取引の実現に向けては、適切な価格転嫁を通じて中小企業の賃上げを加速させることを目的とした「中小受託取引適正化法(取適法)」が、2026年1月から施行されている。こうした動きを受けて、今春闘では複数の産別組織が、価格転嫁の「出前相談会」を開いた。相談会については、「基本的なモデルは示したものの、それぞれの各産別がやりやすい形にアレンジして実施した。共通しているのは、『講義を聴く場ではない』ということ。『現場でこんなことがあるが、どう捉えたらよいか』『これは取適法の観点からどうなのだろう』などといったやりとりは必ずしている」(連合・仁平氏)という。
労使双方の意識は高まる一方で、値上げに踏み切れないところも――JEC連合
今春闘で、全組合の要求方針に取引価格の適正化を求める内容を盛り込んだJEC連合(堀谷俊志会長)は、春闘の基礎知識や価格転嫁を主なテーマとして300人未満の中小組合向けに実施している「中小応援フォーラム」の場で、「適正な価格転嫁・適正取引のための出前相談会」を同時開催。出前相談会では、公正取引委員会や中小企業庁から取適法の概要説明を受けるとともに、直接質問できる時間を設けて交渉力の強化につなげた。
JEC連合は取引の適正化について、「労使双方、世間の動きも相まって意識は高まっている一方、今春闘においても受注減の恐れから値上げに踏み切れないところも存在しており、世間全体での取り組みがまだまだ必要」だと指摘している。
中小が昨年水準並みの回答を堅持するなかで格差は縮小
JEC連合の賃上げ回答状況(6月3日現在)をみると、全体(179組合)の定昇込みの単純平均は1万5,542円(4.79%)、加重平均が1万9,332円(5.39%)。回答額は加重平均で前年(2万599円)に比べ、1,267円マイナスとなっている。ただしJEC連合では、「25春闘では、一部の大手組合等の大幅な賃上げにより加重平均値を引き上げた」と分析しており、そうした事情をふまえれば、「26春闘の成果としては一定程度の評価ができる」と捉えている。
また、規模別では、300人以上(74組合)が単純平均1万8,596円(5.29%)、加重平均1万9,753円(5.44%)なのに対し、300人未満(105組合)は単純平均1万3,597円(4.41%)、加重平均1万5,113円(4.89%)で、「中小組合が昨年水準並みの回答を堅持するなかで、格差は縮小している」とする。
参考までに、今年2月の「連合オンライン」では、特集記事で出前相談会を実施した産別(交通労連・情報労連)のインタビュー記事を掲載している。相談会では「各業界から苦境を訴える声が相次ぎ、春季生活闘争で適正取引を求めることの重要性が改めて認識されている」という。
(新井栄三)
2026年7月号 春闘取材の記事一覧
【賃上げの全体状況】
- ベースアップなどの「賃上げ分」は3年連続で3%台を維持。実質賃金プラスを確保へ。中小組合の賃上げは健闘と言える状況に ――労働組合の回答集計でみる2026年賃上げ額・賃上げ率の最新状況
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