2027年までの3カ年で「年間休日5日増」を春の闘争方針に掲げ、初年度だけで約300組合が増加を達成
 ――自動車総連の年間休日増の取り組み

労働組合取材

トヨタや日産、ホンダなどの大手自動車メーカーと、そのグループ会社や関連する部品・販売会社など、自動車業界各社の労働組合でつくる自動車総連(金子晃浩会長)は、2025年春の総合生活改善闘争の取り組み方針で、2027年までの3カ年の取り組みとして、年間休日5日増をめざす取り組みを掲げている。2025年度には約300組合が具体的な日数増加を達成。2026年春も2025年と同様の取り組み方針を掲げたところ、大手自動車メーカーで初めて具体的な日数増を獲得する組合が出てくるなど、成果も着実に表われている。要求に至った背景や取り組み状況、課題について、自動車総連本部を取材して尋ねた。

要求の背景

魅力ある産業となるために他産業に劣後していた年間休日数に着目

自動車業界の年間休日数はこれまで約30年間変わっていなかった。年間休日数を業種・部門ごとにみると、大手完成車メーカーはいずれも121日で横並びとなっており、車体・部品メーカーは完成車メーカーとほぼ同数で平均で120日程度、販売部門や輸送部門は平均で112~113日程度となっている。

この約30年間、国民の祝日が増加したこともあって公務員や他産業では年間休日数が増加し、125~130日となっている企業も多くなっている。また、年間休日数は求職者が企業を選択する際の指標の1つにもなっており、軽んじることができない労働条件項目となっている。こうした現状を受けて、自動車総連は2025年春の闘争で年間休日増を大々的に産別方針として打ち出した。

総合生活改善闘争を担当する副事務局長の佐藤好一氏は、「労働力人口が減少するなかで、選ばれる産業、魅力ある産業になるために、公務員や他産業に劣後していた年間休日数を、時代に合わせて増やしていかなければいけないと考えた」と話す。

独自の稼働カレンダーの影響や生産性を落とせない観点も背景に

自動車業界の特徴的な仕組みに、独自の稼働カレンダーが設定されていることがある。裾野の広い自動車産業において、各完成車メーカーがバラバラのカレンダーとなっていると、それに追随するサプライヤーが休めなくなることから、自動車総連でカレンダーをおおむね統一している。休むときは全体で休み、メリハリをつけて働くため、ゴールデンウィーク・お盆・年末年始の期間は、それぞれ9〜10日程度の長期連休となっている。週5日稼働、2日休みのサイクルを維持することで、週ごとの生産台数を均一化でき、生産体制の安定化や設備の効率的な運用を可能にしたり、長期連休の間に、時間のかかる設備のメンテナンスを実施できたりするメリットがある。

ちなみに、週5日稼働・2日休みのサイクルは基本的に維持しつつも、設備メンテナンスの期間などに違いが出ることもあり、大手完成車メーカーそれぞれの稼働カレンダーは微妙に違うという。また、傘下のグループ会社や関連会社は、親会社のカレンダーに合わせて稼働日が設定されるのだが、業界カレンダーを含む産業政策を担当している副事務局長の光田聡志氏によると、「急な設備トラブル等で親会社の生産ラインが停止したら、本来休日だったところに振り替えて生産を行うこともある。その場合、部品等を納品する関連会社の稼働日にも影響して、当初のカレンダーどおりに進まないこともある」のだそうだ。

こうした独自の長期連休が設定されている稼働カレンダーがあることや、自動車の生産効率を維持する観点から、長い間、年間休日数の見直しに至らなかったという。

2025年度および2026年春(取材時点)までの取り組み

「121日未満の組合は現状の休日数から5日増」などを方針に掲げる

2025年春の総合生活改善闘争方針をみると、年間休日増に向けた取り組みでは具体的に、①現在休日数121日の組合は2027年までに5日増の126日を目指す②休日数121日未満の組合は現状の休日数から5日増をめざすこととする。なお、5日増を達成した組合については、休日数の格差是正のために引き続き126日をめざして取り組む③可能な限り早期に5日増をめざすこととするが、単年で5日の要求が難しい場合には年度ごとの段階的な達成に向けて取り組む――ことなどを掲げた。

なお、取り組み方針には、「各労連・組合の実情も考慮の上、活動の実効性を高めるために春の取り組みもしくは秋の取り組み(通年含む)で労使交渉を行うこととする」とも明記。実際に秋の期間や、通年で労使協議を行っている組合も多くなっている。

特に販売部門で休日増を獲得、一気に5日増を達成した組合も多数に

3カ年のうちの1年目となった2025年度の取り組み結果をみると、全組合数1,098組合のうち760組合が年間休日増に関する要求を行い、285組合が具体的な休日増の回答を受けた。その内訳は「1日増」が104組合、「2日~4日増」が129組合、「5日増以上」が52組合で、取り組み後の全体での平均年間休日数は、取り組み前より0.3日アップし、116.1日となった。

具体的な日数獲得に至らなかった組合についても、例えば労使で議論するための委員会の立ち上げなどを達成している。

業種別でみると、販売部門で要求・回答の獲得が著しく高くなっており、回答獲得組合数は259組合と、全体の9割以上を占めている。佐藤氏は、「販売部門はもともと年間休日数が少ないということもあり、今回の取り組み方針で掲げる以前から、『121日に追いつこう』という動きがあった。今回、自動車総連全体として旗印を掲げて取り組んだことで、より成果が出ているのではないか」と語る。

また、多くの組合では「2025年で1日増、2026年で1日増」などと、刻む形式で日数を獲得する傾向にあるが、販売部門では、2025年度の1年間だけで、年間休日数5日増を獲得した組合も比較的多くなっているという。光田氏は、「『お客様への説明がつきやすいので、連休は全部休日にしてお店を閉めます』という企業も出てきている。そういった流れと絡めて、休日を増やしてくれているところも多いのではないか」とみる。なかには、年間休日数127日まで一気に引き上げた組合もあるそうだ。

輸送部門は前進回答を多く得られず

一方、販売部門と同様にもともとの年間休日数が少ない輸送部門では、前進回答は多く得られなかった。「運搬する物量は減っていないし、人手も足りず余力がないので、なかなか厳しい」(光田氏)状況だ。

なお、増加させた休日はどのように配置するのか。稼働カレンダーは企業ごとに違うが、「長期連休があまり設定されていなかったところでは、連休を設定するように配置している会社が多い。また、販売店は平日が休みで、土日は基本的に営業しているが、一部の会社では月に何回か、日曜日を休みにするといった動きも出ており、多様になってきている」(光田氏)という。

2026年春は大手完成車メーカーのヤマハ発動機の労組が1日増を獲得

2026年春の総合生活改善闘争でも、自動車総連は3カ年のうち2年目の取り組みとして、2025年春の取り組み方針と同様に、年間休日増の取り組み方針を掲げている。取材時点(5月上旬)までで、855組合が昨年からの継続協議も含めた取り組みを進めており、うち229組合が具体的な休日増を獲得した。

前年度と今年度(取材時点まで)を合わせると、908組合が取り組みを行い、そのうち445組合が具体的な休日増の獲得まで至っている。

今春は、前年度で具体的な日数の獲得には至っていなかった大手完成車メーカーのなかからも、日数増加を獲得した組合が出た。オートバイや船舶などの製造・販売を行う大手輸送機器メーカーのヤマハ発動機では、グループ企業も含めた労働組合連合会(ヤマハ労連)で、「2026年度カレンダーにおいて、年間休日数を1日追加する」ことを要求して取り組んだ結果、グループ企業も含めた全体で統一して1日増(年間休日122日)を獲得。経営側が、ヤマハ労連の要求にポジティブな反応を示し、グループ全体で取り組もうとの姿勢を見せたことも、早いタイミングで休日増となった要因だという。

労使での協議の状況について、佐藤氏は「年間休日増の必要性は、ヤマハ発動機以外も含めて、各企業の労使でそれなりに認識はすり合わされてきている。人手不足やメリハリのある従業員・組合員の働き方を考えると、年間休日を増やさないといけないとの認識は企業側にもある」と説明する一方で、「サプライチェーンが複雑な業界なので、1社だけで進めるのが難しい」と課題も口にした。

今後の見通しと課題

サプライチェーン全体での生産性向上に向けた体制整備が課題に

今後の見通しをどのように捉えているか。佐藤氏は、「前進している企業では、年間休日121日までは着実に到達すると思うが、加盟組合全体の平均が121日を超えるようにするところには一定の難しさを感じている」と指摘。そのうえで、「休日を増やすためには、それに見合うだけの生産性が果たせないといけないという話になってくる。いかに生産力を維持できる体制を整備して、生産性を向上させるかが、さらに一歩進めるために乗り越えるべき課題ではないか」と話す。

サプライチェーンが一体化している自動車業界では、特に部品メーカーで、完成車メーカーが製造する順番に合わせて関連する部品を製造・納入するパターンの製造スケジュールとなるところが多い。そうした構造上、完成車メーカーの年間休日が増加しなければ、サプライヤーは休日増に取り組みにくいため、サプライチェーン全体で生産性を上げていく必要がある。

ただし、光田氏は「現状でも生産・人員体制がぎりぎりの状況で製造している部品メーカーも多く、休日が増えたとしても、稼働台数が少なかったり効率化が進んでいなかったりすると、長時間労働・休日出勤をしないと間に合わない状況になってしまう」と難しさを語る。ただ休日を増やすだけでなく、稼働日の労働時間が極端に増えることがないように体制を整えることが重要になってくる。

ほかにも、光田氏は「業種をまたいで仕事のやり方を変えることで効果が出るのであれば、そういった組合員の声も集めていきたい」と説明。例えば、「組合員から『会社のここを変えてくれればもっと生産性があがるのではないか』という声を集めて、完成車メーカーに投げかけたり、製造会社と販売会社の稼働日のズレによって苦しんでいる物流業者の声を、製造会社と販売会社の双方に伝えたりできるのではないか」と考えている。

なお、2026年春の取り組みでは、年間で121日を超える休日数を獲得した部品メーカーも出てきている。「部品によっては、納入タイミングを調整できれば、あらかじめ作り貯めしておいて、納入時期が来たら提供するということもできるのではないか」(佐藤氏)とのことだ。

稼働カレンダーに関する経営者団体への提案も実施

自動車総連は毎年6月頃に、自動車メーカーの経営者団体である、一般社団法人日本自動車工業会(自工会)に対して、次年度の稼働カレンダーに関する要請を実施しており、この要請もふまえて、各社は10~11月頃に、次年度の稼働カレンダーを決定している。この要請についても、以前と比べて変化が出てきている。

これまでは単純に稼働カレンダーの設定を要請するだけだったが、特に2027年以降のカレンダーについては、「『休日を増やすのであれば、〇月〇日と、△月△日に配置したらどうか』といった提案をするようにしている」(光田氏)。日数を増やしてから各社で調整すると、休日の配置が各社でばらばらになる恐れがあり、下請け企業が休日を増やしにくくなることにもつながるので、要請時点で提案・議論していくような形にしているそうだ。

また、現在は「A社とB社で、製造する車の部品の規格がわずかに違う」といったこともよく起こっているが、自工会では2026年1月から取り組む重要テーマについて、これまでも取り組んできた7つの課題をより社会実装に向けて発展させた「新7つの課題」として決定しており、そのなかでは部品の材料や品質についての基準などを統一することも盛り込まれているという。そうした規格の統一が実現していけば、生産性の向上にもつながっていきそうだ。

2027年度以降も継続しつつ、より進化した取り組みを検討

2027年度は、年間休日増の3カ年の取り組みの最終年度となるが、佐藤氏は「これまでの取り組みの総括をして次につなげていくことを検討している。ここまで取り組むなかで、生産性向上など、年間休日を増やすために必要な課題も見えてきているので、そういったものも合わせて掲げながら、継続していく形で、取り組みをより進化させていきたいと考えている」と話す。

特に生産性向上に向けた取り組みは、会社ごとだけではなく、産業全体の議論も必要となってくる。光田氏は、「将来的には、自動車総連が産業別労働組合として、自動車メーカーや部品メーカーなどの業界団体と議論して、産業全体の取り組みもそこで打ち出せるようになり、かつ各労使でも生産性向上や年間休日増、産業の魅力を高める取り組みなどの話ができているという環境をめざしたい」とコメントした。

(田中瑞穂、荒川創太)

組織プロフィール

  • 自動車総連
  • 本部所在地:東京都港区高輪4-18-21 View-well Square(ビューウェル スクエア)
  • 上部団体:連合
  • 会長:金子晃浩(金属労協・議長を兼務)
  • 組合員数:78万3,000人(厚生労働省・労働組合基礎調査)

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