公務職場で働く人の半数がカスハラを経験
 ――自治労連アンケート調査結果

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自治労連(福島功委員長、11万5,000人)がこのほど公表した、「カスタマーハラスメント調査」結果によると、調査に回答を寄せた自治体で働く労働者約7万1,200人の半数近くが「職場で1度でもカスハラを受けた経験がある」と答え、そのうち4割強が「健康状態に影響を及ぼした」とするなど、公務職場で働く人の深刻な実態が浮き彫りになった。カスハラを受けたことがある人の4人に1人は、被害に遭っても誰にも相談できずにいたこともわかっている。

調査は、自治労連が自治体・自治体関連職場の状況を把握して、春闘の統一要求の基礎資料にすることなどを目的に例年、行っている「働くみんなの要求・職場アンケート」に、今回初めて「カスタマーハラスメントに関する項目」を盛り込んだもの。2024年9月から2025年3月にかけて、自治労連組合員や組合未加入者、管理職員、会計年度任用職員、臨時・非常勤職員、外郭団体職員、委託・派遣労働者等を対象に、アンケート用紙やオンラインで調査。7万1,191人からの回答を集約した。

具体的な内容は「侮辱・大声で威圧するなど乱暴な言動」がトップ

調査結果によると、今までに職場でカスハラを受けた経験が「頻繁にある」と答えたのは5.7%、「時々ある」は36.3%、「1度だけある」が5.6%で、1度でもカスハラを受けたことがある(「頻繁にある」+「時々ある」+「1度だけある」)人の割合は合計で47.6%と、半数に迫る数値。1度でもカスハラを見た(同僚が受けた)ことがある人の割合は56.2%(「頻繁にある」7.6%+「時々ある」44.6%+「1度だけある」4.1%)とさらに高く、半数を超えた。

カスハラの主な内容(複数回答)は、受けたカスハラ・見たカスハラともに、「侮辱・大声で威圧するなど乱暴な言動」(受けたカスハラ84.4%・見たカスハラ84.7%)が最多で、以下、「明らかな嫌がらせによる長時間の拘束(窓口・電話など)」(同48.8%・54.0%)、「不必要・執拗な上司への面会要求」(同28.8%・30.4%)、「不当な謝罪の要求(口頭・文書など)」(同26.3%・28.1%)、「不必要・執拗な別部署・行政相談窓口への苦情」(同22.9%・24.0%)の順。上位5項目は、それぞれ同じ内容となった。

43.7%が健康状態に悪影響

そうしたカスハラを受けた結果、43.7%の人が、憂うつ・体調不良・食欲不振等の健康状態に影響を及ぼしたことを訴えている。このうち、2.3%は「休まざるを得なくなった」と答えた。自治労連は、「カスハラが休職や退職、職員採用試験の受験者数減につながり、職場の人員不足に影響を与えることも考えられる」としている。

2割の人が「誰にも相談せずに我慢」

カスハラを受けたことがある人に、被害を誰かに相談したかを尋ねたところ、55.2%の人が「相談した」と答える半面、約2割(19.2%)の人は「相談せず我慢した」と回答。「相談したくてもできなかった(「相談したかったが相談する相手が分からなかった」+「相談せず我慢した」)」人の割合は24.7%と、およそ4人に1人が被害に遭っても誰にも相談できずにいたことがわかった。なお、相談した人は、84.4%が「上司に相談した」としており、ほかには「同僚に相談した」が12.0%、「家族や友人に相談した」が2.1%で、「組合に相談した」人は0.4%だった。

労組が相談先に選ばれていない実情について、自治労連の嶋林弘一書記次長は、「カスハラ対策における労働組合の役割は、直接的に行為者に働きかけるというよりは、自治体当局に対して職員への安全配慮義務を果たして適切な対応を取るよう求めること。この役割のなかには、カスハラへの対処が難しいものであることなどを理由として適切な対応を取ろうとしない当局に対して、職場を代表する立場を生かして適切な対応を求めることも含まれている。このことを踏まえれば、労働組合への相談は、本来、被害に遭った際の有効な行動の1つとして位置付けられるものと考えられるが、そうしたことが職場に浸透していない現状が調査結果に表れた」とみている。

28.5%は「相談しても解決しなかった」

カスハラ被害を相談した結果、約7割(71.5%)の人が「解決した」ものの、相談しても解決しなかった(「解決していない」18.0%+「対応してくれなかった」10.5%)人も約3割(28.5%)いた。自治労連は、「カスハラ被害に遭った際に『上司に相談した』人が極めて多かったにもかかわらず、それでも解決しないことは深刻な問題」だと指摘。その一方で、「管理職などの職員に対して、カスハラ対策の十分な周知や教育がなされていなければ、対応できないのは必ずしも責められることではない」などと主張するとともに、「カスハラ対策は、管理職であっても個人に責任を集中させるのではなく、組織全体でルールづくりや相談体制を確立させ、1人で悩む人をつくらないものとするべき」だと訴えている。

ちなみに、先述のカスハラ被害を「相談せず我慢した」人の割合を年代別でみると、「50代」(22.5%)や「60代以上」(24.0%)の高さが目立つ。嶋林書記次長は、「50代のベテラン職員や60代の再任用職員、役職定年の職員などは、内部の上司への相談では、元部下だったり年下の職員が対応することが想定され、相談しづらいのではないか」と推察。「こうした事情も含め、中高年齢層には特に外部に相談窓口が必要」だとして、「具体的には、不当要求への対応、法的な対応など実効性を考えると、弁護士が最適ではないか」と指摘している。

なお、職場にカスハラに対する相談窓口(パワハラ・セクハラ等の相談窓口と一体のものを含む)が設置されているか「わからない」人の割合は6割超(62.7%)。カスハラの対策マニュアルや指針等があるか「わからない」人の割合も約7割(70.6%)で、取り組みの「周知を行うことの重要性がわかる結果」(自治労連)となっている。

必要な取り組みは複数人体制の整備や対応マニュアルの策定

カスハラの解決に向けて必要な取り組み(3つまで選択)では、「クレーマーなどに複数人で対応するための体制整備(人員増)」が66.2%でトップ。次いで、「職場ごとでの対応マニュアルの策定」(50.2%)、「職場内の相談窓口の整備・体制強化」(39.7%)、「カスハラ対応の研修の実施・強化」(38.8%)、「第三者相談窓口(弁護士等)の整備」(36.9%)などが続く。

自治労連は2025年12月6日に開いた春闘討論集会で、春闘方針案として①職場の労働安全衛生をめぐる課題の前進をめざして「労安連続講座」をオンラインで開催する(ハラスメントの課題もテーマの1つとして学習を進める)②職場訪問運動を通じて、職場での「対話と学びあい」を深め、「職場自治研」を進める――ことを提案した。また、国・自治体の制度・施策を住民要求の視点で検証し、住民の正当な要求をハラスメントとして扱わないために、研さんすることが必要だとの認識を示している。

(調査部)