3年前に比べ、正社員数が「減った」とする事業所がほぼ3割に
 ――厚生労働省「2024年就業形態の多様化に関する総合実態調査」

国内トピックス

厚生労働省が9月26日に公表した「2024年就業形態の多様化に関する総合実態調査」の結果によると、3年前に比べて正社員数が「増えた」事業所は21.2%だったのに対し、「減った」事業所は29.6%と3割近くにのぼった。「減った」事業所とする割合は、2019年の前回調査から約3ポイント増加した。正社員以外の比率は、「ほとんど変わらない」が62.9%と約6割にのぼった。正社員以外を活用する理由は「正社員を確保できないため」が4割超となっている。

調査時点は2024年10月1日で、事業所調査と個人調査に分かれている。事業所調査は、常用労働者5人以上を雇用している1万7,435事業所を対象に実施し、8,820事業所の有効回答を得た(有効回答率50.6%)。個人調査は、調査対象の事業所で就労している労働者から就業形態別に無作為に抽出した2万3,060人を対象とし、1万4,076人の有効回答を得た(有効回答率61.0%)。

<事業所調査>

正社員数は「減った」が「増えた」を8ポイント上回る

事業所調査の結果によると、3年前(2021年)と比べ、正社員数が「増えた」が21.2%、「変わらない」が46.8%、「減った」が29.6%となっており、「減った」が「増えた」を約8ポイント上回っている。前回の2019年調査と比べると、「増えた」は2.4ポイント低下し、「減った」は3.1ポイント上昇した。

産業別にみると、「増えた」とする割合が最も高いのは「情報通信業」(30.8%)で、次いで「学術研究、専門・技術サービス業」(29.4%)、「建設業」(26.9%)、「運輸業、郵便業」(26.3%)などとなっている。

一方、「減った」とする割合が最も高いのは「金融業、保険業」(44.8%)で、次いで「複合サービス事業」(44.1%)、「電気・ガス・熱供給・水道業」(39.5%)、「運輸業、郵便業」(38.9%)などとなっている。

事業所規模別にみると、「増えた」は「1,000人以上」で51.5%、「300~999人」で43.8%、「100~299人」で34.0%、「30~99人」で27.7%、「5~29人」で19.4%。一方、「減った」は「1,000人以上」で26.7%、「300~999人」で30.9%、「100~299人」で37.8%、「30~99人」で33.9%、「5~29人」で28.6%となっている。

「1,000人以上」「300~999人」は「増えた」が「減った」を上回っているが、「100~299人」「30~99人」「5~29人」は「減った」が「増えた」を上回った。

正社員以外の労働者比率は「低下した」が「上昇した」を上回る

3年前と比べた正社員以外の労働者比率の変化をみると、「上昇した」が15.7%、「ほとんど変わらない」が62.9%、「低下した」が16.7%となっている。前回調査(2019年)と比べると、「上昇した」は0.5ポイント低下、「低下した」は2.1ポイント上昇した。

産業別にみると、正社員以外の労働者比率が「上昇した」は「電気・ガス・熱供給・水道業」(25.6%)、「教育、学習支援業」(24.6%)が特に高く、「低下した」は「宿泊業、飲食サービス業」(21.3%)、「卸売業、小売業」(18.5%)が特に高い。

事業所規模別にみると、30人以上はいずれの規模でも「上昇した」が「低下した」を上回っているが、「5~29人」では「低下した」(15.7%)が「上昇した」(14.0%)を1.7ポイント上回っている。

正社員以外の労働者比率の変化について、今後の予測変化をみると、「上昇する」が11.7%、「ほとんど変わらない」が55.4%、「低下する」が9.2%となっている。産業別にみると、「上昇する」は「複合サービス事業」(16.7%)が最も高く、「低下する」は「宿泊業、飲食サービス業」(14.5%)が最も高い。

上昇している就業形態はパートタイム労働者が突出

3年前と比べて正社員以外の労働者比率が「上昇した」事業所において、3年前と比べて労働者比率が上昇している正社員以外の就業形態をみると(複数回答)、「パートタイム労働者」(66.2%)が最も高く、次いで「嘱託社員(再雇用者)」(22.4%)、「派遣労働者(受け入れ)」(12.2%)などとなっている。

産業別にみると、多くの産業で「パートタイム労働者」の割合が最も高いものの、「鉱業、採石業、砂利採取業」「建設業」「電気・ガス・熱供給・水道業」「運輸業、郵便業」では「嘱託社員(再雇用者)」が最も高くなっている。

正社員以外の労働者がいる事業所は82.3%

各就業形態の労働者がいる事業所の割合をみると(複数回答)、「正社員がいる事業所」は94.4%、「正社員以外の労働者がいる事業所」は82.3%、「正社員のみの事業所(正社員以外の労働者がいない)」は17.7%となっている。また、正社員以外の労働者における就業形態別の割合は「パートタイム労働者がいる」(65.9%)が最も高く、次いで「嘱託社員(再雇用者)がいる」(22.3%)となっている。

正社員以外を活用する理由は「正社員を確保できないため」が4割超

正社員以外の労働者がいる事業所について、正社員以外の労働者を活用する理由をみると(複数回答)、「正社員を確保できないため」(41.0%)が最も高く、次いで「即戦力・能力のある人材を確保するため」(31.6%)、「1日、週の中の仕事の繁閑に対応するため」(29.1%)、
「高年齢者の再雇用対策のため」(28.9%)などとなっている。前回調査と比べると、「正社員を確保できないため」は2.9ポイント上昇、「1日、週の中の仕事の繁閑に対応するため」は2.6ポイント低下となっている。

正社員以外の労働者がいる事業所について、正社員以外の労働者を活用するうえでの問題点をみると(複数回答)、「良質な人材の確保」(53.6%)が最も高く、次いで「定着性」(51.5%)、「仕事に対する責任感」(46.1%)などとなっている。前回調査と比べると「良質な人材の確保」は3.2ポイント低下となっている。

<個人調査>

女性は4割弱が「家庭の事情と両立しやすいから」正社員以外を選ぶ

個人調査によると、正社員以外の労働者に対して現在の就業形態を選んだ理由を尋ねたところ(3つまでの複数回答)、「自分の都合のよい時間に働けるから」(40.1%)が最も高く、次いで「家庭の事情(家事・育児・介護等)と両立しやすいから」(26.4%)、「家計の補助、学費等を得たいから」(24.9%)、「通勤時間が短いから」(24.8%)などとなっている。

男女別にみると、男性は「自分の都合のよい時間に働けるから」(28.9%)が最も高く、次いで「専門的な資格・技能を活かせるから」(24.8%)、「自分で自由に使えるお金を得たいから」(22.5%)などとなっている。女性は「自分の都合のよい時間に働けるから」(46.5%)が最も高く、次いで「家庭の事情(家事・育児・介護等)と両立しやすいから」(37.2%)、「家計の補助、学費等を得たいから」(30.8%)などとなっている。

4人中3人が今後も「現在の会社で働きたい」

正社員以外の労働者について、今後の就業に対する希望をみると、「今後も会社で働きたい」が88.3%と圧倒的に多くなっており、「独立して事業を始めたい」が1.4%、「仕事を辞めたい」が3.3%、「その他の希望」が5.9%となっている。

「今後も会社で働きたい」の内訳は「現在の会社で働きたい」が76.9%、「別の会社で働きたい」が11.4%となっている。

「今後も会社で働きたい」と回答した人の、今後の働き方に対する希望をみると、「現在の就業形態を続けたい」が78.3%、「他の就業形態に変わりたい」が21.2%となっている。「他の就業形態に変わりたい」の内訳は「正社員に変わりたい」が18.1%、「正社員以外の他の就業形態に変わりたい」が3.2%となっている。

「正社員に変わりたい」と回答した人にその理由を尋ねたところ(3つまで複数回答)、「より多くの収入を得たいから」(80.7%)が最も高く、次いで「正社員の方が雇用が安定しているから」(64.7%)、「専門的な資格・技能を活かしたいから」(20.5%)、「より経験を深め、視野を広げたいから」(17.5%)、「自分の意欲と能力を十分に活かしたいから」(17.5%)、「キャリアを高めたいから」(16.9%)などとなっている。

雇用の安定性への満足度は正社員と正社員以外とで開き

仕事の内容・やりがい、賃金などの満足度を尋ねた質問において、「満足」または「やや満足」とする割合から「不満」または「やや不満」とする割合を差し引いた満足度D.I.をみると、正社員は「雇用の安定性」(66.3ポイント)、「仕事の内容・やりがい」(60.0ポイント)などが高くなっている。正社員以外の労働者は「仕事の内容・やりがい」(63.3ポイント)、「正社員以外の労働者との人間関係、コミュニケーション」(56.9ポイント)などが高く、「雇用の安定性」(46.0ポイント)は正社員との間に開きがある(図表)。

図表:現在の職場での満足度D.I.
画像:図表

(公表資料から編集部で作成)

兼業を行った割合は「正社員」7.6%、「正社員以外」14.6%

2024年9月の1カ月に、現在勤務する会社とは別の仕事(兼業)を行った人の割合は、「正社員」が7.6%、「正社員以外の労働者」が14.6%となっている。

「正社員以外の労働者」について、兼業を行った割合を男女別にみると、男性が18.5%に対して女性は12.3%となっている。また、就業形態別にみると、「臨時労働者」(34.6%)が最も高く、次いで「パートタイム労働者」(16.8%)、「契約社員(専門職)」(13.4%)などとなっている。

(調査部)