監督指導した特定技能外国人を使用する事業場の約76%で法令違反
――厚生労働省「外国人技能実習生または特定技能外国人を使用する事業場に対する2024年の監督指導、送検等の状況」
国内トピックス
厚生労働省は9月26日、全国の労働局や労働基準監督署が2024年に外国人技能実習生または特定技能外国人を使用する事業場に対して行った、監督指導や送検等の状況をとりまとめた。今回初めて公表した特定技能外国人を使用している事業場における状況では、監督指導した事業場の76.4%で労働基準関係法令違反が認められた。
〈特定技能外国人を使用する事業場に対する監督指導、送検等の状況〉
違反事項のトップは「安全基準」
特定技能外国人を使用している事業場で、2024年に監督指導を行ったのは5,750事業場。このうち、労働基準関係法令違反が認められたのは76.4%にあたる4,395事業場だった。
主な違反事項をみると、機械等を安全に使用するための措置を講じていないなどの「安全基準」が24.0%で最も高く、次いで、割増賃金の全部もしくは一部を支払わない「割増賃金の支払い」(17.2%)、健康診断で異常の所見がある場合に行う医師等からの意見聴取を行っていない「健康診断結果についての医師等からの意見聴取」(16.7%)、36協定の未締結や協定範囲を超える時間外労働などの「労働時間」(15.4%)、定められた年次有給休暇を付与していないなどの「年次有給休暇」(12.2%)など。「賃金の支払」や「労働条件の明示」(ともに10.3%)なども1割を超えている。
違反率は「建設」が8割超に
特定技能外国人が多い主な業種に対する監督指導の状況をみると、違反率(監督指導実施事業場に占める違反事業場の割合)が最も高いのは「建設」の81.1%で、次いで「農・畜産」(78.7%)、「工業製品製造」(76.6%)、「社会福祉施設」(76.1%)、「食料品製造」(75.0%)の順となっている。
業種別に最も割合の高い主な違反事項をみると、「食料品製造」と「工業製品製造」では「安全基準」(それぞれ40.4%、33.2%)、「社会福祉施設」と「建設」では「割増賃金の支払い」(それぞれ29.3%、24.4%)、「農・畜産」では「賃金の支払い」(24.2%)となっている。
特定技能外国人からの申告内容の多くは「賃金・割増賃金の不払い」
特定技能外国人から労働基準監督署等に対して、労働基準関係法令違反の是正を求めてなされた申告の件数は107件。
主な申告内容は、「賃金・割増賃金の不払い」が90件で大多数を占め、以下、解雇の予告等が適正でない「解雇手続きの不備」(15件)、賃金が下限額を下回って支払われている「最低賃金額未満」(6件)となっている。
また、重大・悪質な同法令違反の事案として送検した件数は7件。
内訳は、「安全基準」が5件、会社が従業員に貸し付けた金額を給与から一方的に差し引く「前借金相殺の禁止」が1件、注文者が関係請負人に仕事を発注する際に労働災害を防止するための措置などを講じていない「注文者の措置」が1件となっている。
〈技能実習生を使用する事業場に対する監督指導、送検等の状況〉
労働基準関係法令違反が認められた事業場数は4年連続増加
技能実習生を使用している事業場で、2024年に監督指導を行ったのは1万1,355事業場。このうち、労働基準関係法令違反が認められたのは73.2%にあたる8,310事業場だった。同法令違反が認められた事業場数は、前年(7,602事業場)から708事業場上回り、4年連続で増加している。
主な違反事例をみると、「安全基準」が25.0%で最も高く、次いで「割増賃金の支払い」(15.6%)、「健康診断結果についての医師等からの意見聴取」(14.9%)、「労働時間」(12.4%)、就業場所の換気や照明などが適切でない「衛生基準」(12.0%)、「年次有給休暇」(11.1%)などとなっている。
「建設」や「農・畜産」で高い違反率
技能実習生が多い主な業種に対する監督指導の状況をみると、違反率は「建設」が79.9%と最も高く、次いで「農・畜産」(75.9%)、「食料品製造」(73.6%)、「機械・金属製造」(69.0%)、「繊維・衣服製造」(67.9%)の順となっている。
主な違反事項で最も割合の高いものをみると、「食料品製造」と「機械・金属製造」では「安全基準」(それぞれ37.9%、27.5%)、「建設」と「繊維・衣服製造」では「割増賃金の支払い」(それぞれ23.3%、17.5%)、「農・畜産」では「賃金の支払い」(22.6%)となっている。
技能実習生からの申告件数・送検件数は前年より減少
技能実習生から労働基準監督署等に対して、労働基準関係法令違反の是正を求めてなされた申告の件数は112件で、前年(141件)より29件減少した。
主な申告内容は、「賃金・割増賃金の不払い」が88件、「解雇手続きの不備」(20件)、「最低賃金額未満」(9件)となっている。
また、重大・悪質な同法令違反の事案として送検した件数は16件で、前年(27件)より11件減少。内訳は、「安全基準」が4件、「労働時間」が3件、労働基準監督署等に必要な事項を報告していなかった「報告等」が3件などとなった。
(調査部)
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