死傷者数が1,106人で前年から279人増加
 ――厚生労働省が2023年の「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確定値)をとりまとめ

労働災害をめぐる最新状況

厚生労働省は5月31日、2023年の「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確定値)をまとめた。死傷者数は1,106人で前年から279人増加。そのうち死亡者数は前年から1人増えて31人となった。2019年以降の5年間の合計を業種別にみると、死傷者数も死亡者数も「建設業」が最も多い。死亡事例では、発症時・緊急時の措置の確認や周知ができていないケースが大半を占めたと報告している。

死傷者数は3年連続の増加

職場での熱中症による死亡者および休業4日以上の業務上疾病者の数(以下、死傷者数)は、2023年は1,106人で、前年の827人から279人増加。死傷者のうち死亡者数は31人となった(前年は30人)。死傷者数は2年連続で増加している。

業種別の死傷者数を2019年以降の5年間の合計でみると、最も多かったのは「建設業」(886人)で、次いで「製造業」(846人)、「その他」(701人)、「運送業」(583人)、「商業」(435人)、「警備業」(428人)、「清掃・と畜業」(272人)、「農業」(95人)、「林業」(36人)の順となっている。死亡者数では、「建設業」が54人で最も多く、「製造業」と「警備業」の18人がこれに続き、「商業」が11人など。

「7月」「8月」の発生が圧倒的に多い

死傷者数の月別の状況を2019年以降の5年間の合計でみると、「8月」(2,165人)が最も多く、これに「7月」(1,227人)が続き、以下「6月」(418人)、「9月」(333人)などと続く。また、時間帯別の状況を5年間の合計でみると、「11時台」(528人)、「14時台」(527人)、「15時台」(540人)が500人以上にのぼり、「9時台以前」(487人)と「10時」(423人)、「16時」(444人)が400人台となっている。

年齢別の状況を5年間の合計でみると、多い順に「65歳以上」(674人)、「45~49歳」(545人)、「50~54歳」(515人)、「55~59歳」(513人)、「60~64歳」(427人)、「40~44歳」(381人)、「35~39歳」(333人)、「20~24歳」(276人)などとなっており、50代以降で多くなる。

WBGTの把握を確認できなかった事例も25件あり

調査結果に盛り込まれている2023年の熱中症による死亡災害の事例をみると、被災者は男性が30人で、女性が1人。発症時・緊急時の措置の確認や、周知をしていたことを確認できなかった事例が28件あったという。

また、暑さ指数(WBGT)の把握を確認できなかった事例が25件あった。WBGTとは、気温に加え、湿度、風速、輻射(放射)熱を考慮した暑熱環境によるストレスの評価を行う暑さの指数で、厚生労働省では事業主に対して、WBGTを活用した熱中症予防対策を求めている。

熱中症予防のための労働衛生教育の実施を確認できなかった事例も18件あった。

(調査部)

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