死亡者数は過去最少となるも、休業4日以上の死傷者数は3年連続で増加
 ――厚生労働省が2023年の労働災害発生状況を公表

労働災害をめぐる最新状況

厚生労働省が5月27日に発表した2023年の労働災害発生状況によると、2023年1月~12月までの新型コロナウイルス感染症への罹患によるものを除いた労働災害の死亡者数は、前年から19人減って755人となり、統計を取り始めた1974年以降で最少となった。一方、休業4日以上の死傷者数は13万5,371人となり、前年より3,016人増えて、3年連続で増加した。

死亡者数の事故の型では「墜落・転落」が最多

2023年の労災発生による死亡者数は755人。これを「事故の型」別にみると、「墜落・転落」が204人(27.0%)で最も多く、次いで「その他」(167人、22.1%)、「交通事故(道路)」(148人、19.6%)、「はさまれ・巻き込まれ」(108人、14.3%)、「激突され」(47人、6.2%)、「飛来・落下」(43人、5.7%)、「崩壊・倒壊」(38人、5.0%)の順で多くなっている。

前年と比べると、「墜落・転落」(12.8%減)、「激突され」(20.3%減)、「崩壊・倒壊」(26.9%減)は2桁の割合で減少したが、「その他」(16.8%増)、「交通事故(道路)」(14.7%増)は2桁の割合で増加した。

業種別では、最も多い建設業が223人、次いで製造業が138人、陸上貨物運送事業が110人などとなっている。トップの建設業は前年に比べると20.6%も減少しており、全産業に占める割合も前年の36.3%から29.5%に大幅に低下した。

死傷者数の「事故の型」では「転倒」が最多

休業4日以上の死傷者数は前年から3,016人増えた。「事故の型」別にみると、「転倒」(3万6,058人)が最も多く、次いで「その他」(2万8,051人)、「動作の反動・無理な動作」(2万2,053人)、「墜落・転落」(2万758人)、「はさまれ・巻き込まれ」(1万3,928人)、「切れ・こすれ」(7,598人)、「激突」(6,925人)の順となっている。

前年と比べると、「動作の反動・無理な動作」が5.6%増、「その他」が4.2%増などとなっている。

業種別では、製造業が2万7,194人で最も多く、以下、小売業も含む商業(2万1,673人)、社会福祉施設も含む保健衛生業(1万8,786人)、陸上貨物運送事業(1万6,215人)などが続く。

死傷者数の60歳以上割合は約30%

休業4日以上の死傷者数13万5,371人に占める60歳以上の割合は29.3%(3万9,702人)で、同割合は上昇傾向が続いている。

60歳以上の男女別の労働災害発生率(千人率)を30代と比べると、男性は60歳以上が3.91で、30~34歳が1.93、35~39歳が2.07。女性は60歳以上が4.16なのに対し、30~34歳が0.98、35~39歳が1.01となっており、男性は約2倍、女性は約4倍となっている。なお、千人率の算定式は「労働災害による死傷者数/平均労働者数×1,000」。

「事故の型」別・年齢階層別・男女別に千人率を算出すると、男性の場合、「墜落・転落」では、60歳以上(平均0.93)は20代平均(0.26)の約3.6倍となっている。一方、女性の場合、「転倒による骨折等」では、60歳以上(平均2.41)は20代平均(0.16)の約15.1倍と、大きな差となっている。

外国人の千人率は「技能実習」や「特定技能」で高い

外国人の千人率を在留資格別にみると、「身分に基づく在留資格」が3.67、「技能実習」が4.10、「特定技能」が4.31、「技術・人文知識・国際業務」が1.17、「その他の専門的・技術的分野の在留資格」が2.58、「特定活動」が2.25、「資格外活動」が0.81となっている。

千人率は、外国人労働者全体の平均では2.77で、すべての労働者の平均(2.36)を上回っている。なお、厚生労働省の第14次労働災害防止計画では、外国人労働者の千人率を2027年までに全体平均以下とするアウトカム指標を定めている。

外国人労働者の死傷者数割合を業種別にみると、「製造業」が48.3%で最も高く、次いで「建設業」(17.6%)が高くなっている。

(調査部)

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