過半数の企業が新卒採用活動の長期化を予測。採用・選考活動の終了予定時期を見通せない企業も2割強
 ――東京商工会議所「2025年新卒者の採用、インターンシップに関する調査」結果

国内トピックス

「売り手市場」で新卒採用に苦戦し活動の長期化を見込む企業が増えている――。東京商工会議所(小林健会頭)が、企業の新卒者の採用・選考活動の動向を把握するために実施した調査結果から、こんな実態がわかった。9割近くの企業が2025年の新卒者の採用を同水準もしくは増やす計画のなか、採用・選考活動を「2024年9月まで」とする企業は22.9%だったのに対し、「2024年10月以降」が54.2%で「未定、分からない」も22.9%あるなど、終了時期を見通せない企業が少なくない。

企業の新卒採用意欲は旺盛

調査結果によると、2025年の新卒者の採用計画人数については、前年と「同水準(同数・20%未満の増減)」とする企業が59.9%で最も多かった。「増やす(「大幅に増やす(50%以上)」と「増やす(20%以上50%未満)」の合計)」と答えた企業は28.8%あった一方、「減らす(20%以上50%未満)」とした企業はわずか1.1%。実施する予定のない企業も0.4%に過ぎないなど、人手不足の状況下で企業の新卒採用の意欲は高い様子がうかがえる。

4分の3の企業で「希望者が集まらない」

採用を実施する企業に選考活動の終了予定時期を聞いたところ、新卒者の正式な内定日である10月1日より前の「2024年9月まで(「24年6月まで」と「24年7月~9月」の合計)」とした企業は22.9%にとどまる反面、「2024年10月以降(「24年10月~12月」と「25年1月~3月」の合計)」が54.2%と過半数を占めたことに加え、「未定、分からない」(22.9%)との回答も少なくなかった。

こうした状況について、東商では「『売り手市場』により新卒採用に苦戦している企業が多い中で、2025年新卒者の採用・選考活動の終了予定時期を見通せない企業が一定数あることがうかがえる」とみている。実際、採用・選考活動の課題(複数回答)を聞いた問いからも、「希望者が集まらない」が73.4%で最多。次いで「求める人材からの応募がない」(49.6%)、「内々定・内定後の辞退が多い」(34.3%)が続くなど、欲しい人材の確保に苦戦する状況がわかる。

4割弱の企業が初任給を「3%以上」引き上げ

また、2025年新卒者の初任給については、「引き上げた(引き上げる予定)」企業が52.2%と半数以上を占めた。引き上げ率は、「1.0%以上2.0%未満」が一番多く24.5%。次いで、「2.0%以上3.0%未満」(19.6%)、「4.0%以上5.0%未満」(15.4%)、「5.0%以上」(14.7%)、「3.0%以上4.0%未満」(7.0%)など。「3.0%以上」が37.1%を占めている。

初任給を引き上げる理由(複数回答)は、「人材を確保するため」が83.2%で断然多かったほか、「物価上昇に対応するため」も51.0%などとなっている。

汎用能力活用型インターンの実施企業は4分の1にとどまる

2022年6月に文部科学省・厚生労働省・経済産業省の合意によって示された大学生等のインターンシップの取り扱いの定義では、学生の情報を採用選考時に活用できる「汎用的能力・専門活用型インターンシップ」の要件については、就業体験や職場の社員による指導・フィードバックの実施、5日以上の実施期間などの基準が設けられた。調査は、こうしたインターンシップの取り扱いに関しても尋ねている。

それによると、一定の条件を満たせば採用選考時に学生の情報を活用できるインターンシップを、「実施した、実施する予定がある」と回答した企業は24.8%にとどまり、「実施していない、実施する予定もない」の32.3%を下回った。

調査は今年4月下旬~5月上旬、新卒者や既卒者の採用を検討している会員企業と大学等が交流する「就職情報交換会」の参加企業314社を対象にWebアンケートシステムで実施。274社の回答を集約した。回答率は87.3%。

(調査部)

2024年7月号 国内トピックスの記事一覧