回答した全単組で外国人社員を組織化。外国人組合員に対し、外国語で情報提供する単組・産別も
 ――外国人組合員・社員への対応と取り組み

ビジネス・レーバー・モニター産別・単組調査

JILPTが調査モニターを委嘱している労働組合に対し、「外国人組合員・従業員の状況と彼らへの対応・取り組み」を特別テーマとしてアンケートを行ったところ、9割超の単組が会社に外国人社員が「いる」と回答。外国人社員がいる単組に外国人組合員の有無を聞くと、回答した全単組が「いる」としており、なかには外国人が組合役員を務める単組もあった。外国人組合員・従業員への対応・取り組みをみると、単組では英語による情報提供などを実施。産別では外国語での情報提供のほか、外国籍社員を対象とした座談会の開催や、雇用・労働条件の実態・ニーズの把握などを行っている。

調査に回答したのは、企業別組合では11組織で、すべて製造業の企業の組合。産別では12組織から回答を得ており、内訳は製造業の産別が7組織、非製造業の産別が5組織となっている。なお、本調査では「外国人」を「日本以外の国籍を持つ人」と定義している。

<企業別組合の回答結果>

10単組に外国人組合員が在籍

まず、企業別組合の回答結果をもとに、外国人組合員の状況や、外国人組合員・従業員への対応・取り組みについてみていく。

回答組合の会社(組合がグループの組合連合組織の場合には、グループの本体企業)に、外国人社員(直接雇用している社員)が在籍しているかを尋ねると、「在籍している」が10組織、「在籍していない」が1組織で、ほとんどの組織が「在籍している」と回答した。

外国人社員が「在籍している」10組織に、外国人社員を組織化しているかを聞くと、回答のあった全9組織が、外国人組合員が「いる」と回答した。

外国人組合員数を把握しているのは3単組

外国人組合員の人数と、組合員全体に占める外国人組合員の割合を尋ねたところ、10組織のうち7組織が「把握していない」とした。人数などの回答があった3組織でみると、人数は最も少ない組織で9人、最も多い組織で46人となっており、割合は0.2~0.5%の幅となっている。

電機の単組では外国人が支部の執行委員を務める

外国人組合員が組合役員(支部での役員を含む)に就いているかを尋ねたところ、10組織から回答があり、「現在就いている人がいる」が1組織、「過去にいたが、現在はいない」が1組織、「過去も現在もいない」が6組織、「わからない」が2組織だった。

「現在就いている人がいる」のは【電機】の単組で、支部の執行委員に外国人がいるという。「過去にいたが、現在はいない」とする【化学】の単組は、複数の外国人が支部の代表委員を務めたと報告した。

労使協議の報告書や組合広報誌の英文化に取り組む単組も

組合が外国人組合員や外国人従業員のために対応していることや、取り組んでいることを自由記述で尋ねたところ、複数の単組から英語による情報提供の取り組みが報告された。

【自動車】の単組は、労使協議の報告書や組合広報誌を英文化。【電機】の単組では、新入社員向けに英語による組合説明を実施している。【医薬品】の単組は、組合加入の際に使用できる労組説明資料について、英語版を準備しているという。

【化学】の単組は、「外国人組合員は日本語ができて、日本文化に理解がある人がほとんどである」ことから、特別の対応は実施しておらず、彼らが組合役員になる際も特別の対応はしていない状況。ただし、「過去に、日本語をほぼ話すことができない人が組合員となった際は、組合の受け入れ教育を英語で実施するなどの対応は行った」という。そのほか、「組合員でない外国人社員がグループ会社で増えてきているが、そのことに対する対応・取り組みの情報は労組として把握していない」ことも報告した。

【化繊】の単組は、上部団体では相談窓口の設置など具体的な取り組みが進んでいるが、単組としては「人数が限定的であることから、特段の取り組みはまだしていない」ことを、今後の課題にあげた。

外国人組合員の政治活動への関わりについても報告が

組合としての政治活動と、外国人組合員の関わりについても報告があった。【化学】の単組では政治活動について、「(外国人)自身には選挙権がないなかで、組合の活動としての必要性を理解してもらったうえで、自身の選挙権とは切り分けて活動してもらった」としている。

<産別組合の回答結果>

産別組合に対しても、外国人組合員や外国人従業員に対して対応していることを尋ねたところ、雇用・労働条件などの実態やニーズの把握、外国語での情報提供、外国籍の社員を対象とした座談会の開催などの取り組みがあがった。また、産別の構成組織が対応していることを聞いたところ、外国語での情報提供や相談窓口の設置が報告された。

D&Iの一環として外国籍組合員の悩みに対応

生保労連は、「ダイバーシティ&インクルージョンに関する取組み」の1つとして、外国人等(障がい者含む)が差別や偏見を受けることなく、誰もが安心と働きがいをもって仕事に従事できる環境の整備や、助け合い・支え合う職場風土の醸成に向けた取り組みを推進。外国人関連では、職場に外国籍の組合員が増えている実態などをふまえ、①雇用・労働条件等の実態およびニーズの把握②日常的な困難への配慮(コミュニケーション・ギャップの解消、文化・風習への配慮等)――などの個別課題に取り組んでいる。

外国語での情報提供や相談窓口の設置に取り組む構成組織も

基幹労連の加盟組合では、組合の機関紙などを外国語で作成している組織や、宗教上の配慮などの対応をする組織があるほか、製造現場においては、作業標準書や看板を外国語で表記する事例がみられるとしている。

電機連合の構成組織にも、機関紙や共済の案内といった組合の発行物を英文化していたり、外国人労働者向けの相談窓口を設置している事例があるという。

外国籍社員を対象に座談会を開催して産別としてサポート

日建協によると、「外国籍社員の方は労働組合自体について知識が少ない場合が多いので、(加盟組合が)丁寧に労働組合について説明していると聞いている」。ただし、「言語の壁もあり苦労しているという声があがってきている」ことから、日建協としては、そうした悩みを構成組織で共有・解決できるようにサポート。その一環として、外国籍社員を対象とした座談会も開催しており、「外国籍社員が抱える課題」や「より働きやすくするためにはどうしたらいいか」といったテーマについて話し合っている。

全建総連は、特定技能外国人の適正で円滑な受け入れを推進する建設技能人材機構(JAC)の正会員として、建設分野における外国人材の適正な受け入れなどについて取り組んでいる。加盟組合では、外国人組合員への労働環境などの聞き取りを実施している。

2024年1・2月号 ビジネス・レーバー・モニター産別・単組調査の記事一覧

【①外国人組合員や外国人従業員への対応・取り組み】

  • 回答した全単組で外国人社員を組織化。外国人組合員に対し、外国語で情報提供する単組・産別も――外国人組合員・社員への対応と取り組み

【②2023年定期大会で決定・補強した運動方針や大会の特徴】