2022年中に賃上げを実施済み・実施予定の企業は85.7%。改定額は3年ぶりに5,000円を上回る
 ――厚生労働省「賃金引上げ等の実態に関する調査」

国内トピックス

厚生労働省は11月22日、「2022年賃金引上げ等の実態に関する調査」の結果を公表した。それによると、2022年の1人平均賃金(常用労働者の所定内賃金の平均額)の改定額(予定を含む)の平均は5,534円で、3年ぶりに5,000円を上回った。前年調査(4,694円)より840円高い。2022年中に1人平均賃金を引き上げた、または引き上げる予定の企業は85.7%で、前年調査での同割合(80.7%)を5.0ポイント上回った。

調査は2022年7月から8月にかけて実施。常用労働者100人以上を雇用する企業3,646社に調査票を配付した。有効回答企業数は2,020社(有効回答率は55.4%)。

賃上げ実施企業の割合は前年比5.0ポイント増加

2022年における賃金の改定状況(9~12月予定を含む)をみると、「1人平均賃金を引き上げた・引き上げる」企業の割合は85.7%(前年80.7%)で、前年を5.0ポイント上回っている。「1人平均賃金を引き下げた・引き下げる」が0.9%(同1.0%)、「賃金の改定を実施しない」が6.2%(同10.1%)、「未定」が7.3%(同8.2%)となっている。

「1人平均賃金を引き上げた・引き上げる」企業の割合を産業別にみると、「学術研究、専門・技術サービス業」が95.7%(同93.7%)で最も高く、次いで「建設業」が95.4%(同87.8%)、「医療、福祉」が95.2%(同86.9%)、「製造業」が94.8%(同90.7%)などの順。最も低いのは「生活関連サービス業、娯楽業」の67.8%(同66.2%)で、以下、「宿泊業、飲食サービス業」が71.1%(同56.5%)、「運輸業、郵便業」が75.6%(同64.5%)などとなっている。

企業規模別にみると、「5,000人以上」が96.0%(同94.6%)、「1,000~4,999人」が91.9%(同87.8%)、「300~999人」が90.2%(同83.6%)、「100~299人」が83.7%(同79.0%)で、企業規模が大きくなるほど高い割合となっている。

改定額は5,534円で前年比840円増

2022年中に賃金の改定を実施または予定していてその額も決定している企業と、賃金の改定を実施しない企業について、賃金の改定状況をみると、「1人平均賃金の改定額」は5,534円で前年(4,694円)より840円高い。「1人平均賃金の改定率」は1.9%で、前年(1.6%)より0.3ポイント高い。

「1人平均賃金の改定額」を産業別にみると、「建設業」が8,101円(前年6,373円)で最も高く、次いで「情報通信業」が7,919円(同6,028円)、「学術研究、専門・技術サービス業」が7,588円(同5,743円)などの順。最も低いのは「電気・ガス・熱供給・水道業」の3,670円(同4,374円)で、「宿泊業、飲食サービス業」が3,865円(同2,996円)で続く。

1人平均賃金の改定額および改定率の推移をみると、改定額は、2014年以降は5,000円台で推移していたが、コロナ禍の2020年(4,940円)と2021年(4,694円)は5,000円を下回った。2022年(5,534円)は3年ぶりに5,000円を上回った。改定率も、2020年(1.7%)、2021年(1.6%)の低下から2022年は1.9%まで回復している()。

図:1人平均賃金の改定額および改定率の推移
画像:図

(公表資料から編集部で作成)

ベアを実施済み・実施予定の企業が前年よりも増加

2022年中に賃金の改定を実施または予定している企業と、賃金の改定を実施しない企業のうち、定昇制度がある企業でのベースアップ(ベア)等の実施状況をみると、「定昇とベア等の区別あり」の割合は「管理職」で60.4%(前年56.9%)、「一般職(管理職以外の常用労働者)」で63.7%(同58.6%)となっている。

そのうち「ベアを行った・行う」割合は「管理職」で24.6%(同15.1%)、「一般職」で29.9%(同17.7%)となっている。

賃金の改定では「企業の業績」重視が多数も前年からは減少

賃金の改定を実施または予定していて、その金額も決定している企業について、賃金の改定にあたり最も重視した要素をみると、「企業の業績」が40.0%(前年47.3%)で特に高いものの、前年から7.3ポイント低下している。

次いで「重視した要素はない」が16.7%(同17.0%)、「労働力の確保・定着」が11.9%(同8.2%)、「雇用の維持」が10.7%(同9.0%)、「親会社又は関連(グループ)会社の改定の動向」が4.6%(同5.0%)、「前年度の改定実績」が3.0%(同3.6%)、「世間相場」が3.0%(同3.0%)となっている。

企業規模別にみると、いずれの企業規模でも「企業の業績」が最も高い(「5,000人以上」が48.8%、「1,000~4,999人」が40.9%、「300~999人」が39.2%、「100~299人」が40.1%)。「世間相場」は企業規模が大きくなるほど重視されている(「5,000人以上」が6.8%、「1,000~4,999人」が3.8%、「300~999人」が3.0%、「100~299人」が2.9%)。「雇用の維持」はおおむね企業規模が小さくなるほど重視されている(「5,000人以上」が3.8%、「1,000~4,999人」が5.6%、「300~999人」が11.7%、「100~299人」が11.0%)。

賃上げを要求する組合も増加

労働組合がある企業について、「賃上げ要求交渉があった」割合は73.0%で、前年(69.5%)から3.5ポイント上昇している。企業規模別にみると、「5,000人以上」が80.3%、「1,000~4,999人」が84.7%、「300~999人」が75.5%、「100~299人」が66.5%となっている。

(調査部)