最新のデジタル技術を活用する企業ほど多くの効果を実感。新技術に精通した人材を求める企業ほど、高レベル人材の確保に重点
 ――JILPT「ものづくり産業のデジタル技術活用と人材確保・育成に関する調査」(2021年)の結果から

JILPT調査

JILPTが金属・機械関連を中心とするものづくり企業(※1)を対象に、2021年12月に行った調査(「ものづくり産業のデジタル技術活用と人材確保・育成に関する調査」(※2))の結果をみると、生産性向上やリードタイムの削減などを狙いとしてデジタル技術を活用した企業の6割以上で狙いどおりの効果を得ている。ビッグデータなど最新技術を活用している企業ほど、効果にあげる項目数が多い。最新の技術分野に精通した人材を確保したい企業ほど、技術レベルの高い人材を求める傾向も読み取れた。

※調査方法や調査対象、回答企業の属性については本稿の最後に掲載している。

1.デジタル技術の活用状況

本調査では、「デジタル技術」の定義を「ICTやIoT、AI周辺技術(画像・音声認識など)、RPAなど、製造現場で使われる新技術(これらの技術を使って収集したデータを分析し、活用することも含む)」としている。これをふまえてはじめに、ものづくり企業のデジタル技術の活用の現状を確認する。

「開発・設計・試作・実験」や「生産管理」などの工程では半数以上で活用

〈a.開発・設計・試作・実験〉〈b.製造〉〈c.生産管理〉など、全部で10種類に整理したものづくりの工程・活動ごとに、デジタル技術を「活用している」割合を、「該当する工程・活動がない」と回答した企業と無回答を除いて集計したところ、〈a.開発・設計・試作・実験〉が56.6%で最も高く、〈c.生産管理〉(52.7%)、〈f.受・発注管理、在庫管理〉(52.5%)、〈b.製造〉(51.3%)でも5割を超えた(図表1)。

図表1:デジタル技術を活用している企業の割合(単位:%)
(「該当する工程・活動がない」および無回答を除いて集計) n=3,677
画像:図表1

なお、〈a.開発・設計・試作・実験〉~〈j.生産現場の安全衛生管理〉までの工程・活動で、「活用している」との回答が1つでもあった企業を【デジタル技術活用企業】と位置づけ、全回答企業(3,677社)に占める割合を算出すると67.2%(2,472社)となった。

2.デジタル技術活用企業における取り組み状況や効果

ものづくり産業でデジタル技術を導入する企業は、どのような目的や考えを持ってデジタル技術を活用しているのか。また、デジタル技術の導入はどのような効果や取り組みに結びついているのだろうか。【デジタル技術活用企業】の回答結果に絞って紹介する。

(1)活用しているデジタル技術

「IoT」「RPA」「AI」などの新技術は大企業での活用割合が高め

まず、どのようなデジタル技術がものづくりの現場で活用されているのかを確認すると、「CAD/CAM」(72.9%)や「生産管理システム」(67.3%)などの導入割合が高い(複数回答)(図表2)。

図表2:活用しているデジタル技術はどのようなものか(複数回答)(単位:%)
デジタル技術活用企業が回答。
画像:図表2
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注1:「-」は該当する企業がいないこと(n=0)を示す。

注2:表側の従業員規模別の無回答(n=13)は、掲載を割愛している。

従業員規模別(以下、規模別)にみると、おおむねすべての項目で、規模が大きくなるほど活用する割合が高くなっていることが分かる。「IoT(モノのインターネット化)」や「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」、「AI(人工知能:画像・言語認識技術含む)」といった比較的新しい分野のデジタル技術は、300人未満ではいずれも1割以下~2割台となっているのに対して、「300人以上」では「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」が44.4%、「AI(人工知能:画像・言語認識技術含む)」が32.0%と、300人未満の各規模での割合よりも20ポイント以上高く、「IoT(モノのインターネット化)」(44.9%)でも20ポイント近く高い。

製造工程で活用している企業ではロボットの活用割合が4割弱

デジタル技術を活用しているものづくりの工程・活動別にみると、「CAD/CAM」「生産管理システム」「ICT(情報通信技術)」などの割合が高いのは、すべての工程・活動で共通している(図表3)。

図表3:各分野のデジタル技術がどの工程・活動で
活用されているのか(複数回答)
(単位:%)
デジタル技術活用企業が回答。
画像:図表3
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注:デジタル技術を活用しているものづくりの工程・活動別で、活用しているデジタル技術の分野の回答割合が高い上位3項目を網かけしている。

また、工程・活動ごとに、どの分野のデジタル技術が比較的高い割合で活用されているかをみていくと(規模の小さい企業の割合が他に比べて特に高い〈j.生産現場の安全衛生管理〉を除いてみる)、やはり〈a.開発・設計・試作・実験〉では、「CAD/CAM」を活用している企業が9割(90.7%)に達する。〈b.製造〉では、「ロボット」を活用する企業も4割近くに及ぶ(37.9%)。〈d.品質管理〉では、「IoT(モノのインターネット化)」「AI(人工知能:画像・言語認識技術含む)」「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」といった比較的新しいデジタル技術分野を活用する企業割合も比較的高い(それぞれ32.1%、15.7%、20.2%)。このほかでは、〈g.設備間のネットワーク化〉で、「IoT(モノのインターネット化)」(37.8%)を活用する企業割合が比較的高いのが目立つ。

(2)デジタル技術を活用する狙いと活用後の効果

狙いと活用後の効果はいずれも「生産性の向上」がトップ

企業はどのような狙いでデジタル技術を導入しているのか。また、導入によりどういった効果が出たのだろうか。結果(「狙い」「活用後の効果」それぞれ24ある選択肢を筆者において同じ性質のグループにカテゴリー分けして12に集約した結果)をみると(複数回答)、デジタル技術を活用する狙いについては、「生産性向上」が89.4%で最も割合が高く、次いで「作業負担軽減」(69.8%)、「品質向上」(61.6%)、「コスト削減」(45.1%)などの順で高くなっている(図表4)。デジタル技術の活用後に効果が出たものとしても、「生産性向上」が最も高い割合となっており(74.2%)、次いで「作業負担軽減」(53.1%)、「品質向上」(43.9%)、「職場環境改善」(29.3%)などの順で高く、おおむね、狙いの回答順位と同様となっている。

図表4:デジタル技術を活用する狙いと活用後の効果(複数回答)(単位:%)
デジタル技術活用企業が回答。n=2,472
画像:図表4

注:集約したカテゴリーの内容は、次の通り。【生産性向上】=「開発・製造等のリードタイムの削減」「生産性の向上」「生産態勢の安定(設備や装置の安定稼働など)」「在庫管理の効率化」。【作業負担軽減】 =「過去と同じような作業がやりやすくなる(仕事の再現率向上)」「ベテラン技術の見える化・データ化による技能継承円滑化」「安全に仕事・作業ができる環境の整備」「作業負担の軽減や作業効率の改善」。【品質性向上】=「高品質のものの製造」「不良率の低下」「新製品開発や新技術開発がしやすくなる」。 【コスト削減】=「製造経費の削減」。【職場環境改善】=「労働時間の短縮や休暇・休日の増加」「社内コミュニケーションの円滑化」。【人員配置改善】=「人手不足の解消」「人材の最適配置」。【サービス向上】=「顧客への細やかな対応や迅速な対応」。【業績改善】=「業績の改善」。【販路拡大】=「取引先・販売ルートの拡大」「市場調査能力の向上」「取引先など社外コミュニケーションの円滑化」。【コロナ禍対応】=「新型コロナウイルス感染症拡大とその後の社会変化への対応」。

リードタイムの削減や生産性向上を狙いとした多くの企業で狙いどおりの効果

狙いどおりの効果が出ている状況となっているのかどうかを確認するため、デジタル技術を活用する狙い別に、デジタル技術の活用後に効果が出たものの回答割合をみた。結果は図表5のとおりとなり、「開発・製造等のリードタイムの削減」「生産性の向上」「過去と同じような作業がやりやすくなる(仕事の再現率向上)」「取引先など社外コミュニケーションの円滑化」などについては、それらを狙いとしてあげた各企業で、効果が出たものとしてトップの回答割合となっており、狙いどおりの効果があがっている項目とみることができる。

図表5:デジタル技術を活用する狙いの回答別にみた、デジタル技術活用後に
出た効果(複数回答)
(単位:%)
デジタル技術活用企業が回答。
画像:図表5
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注1:表頭のデジタル技術活用後に効果が出たものの「その他」(n=16)、「狙いは特にない/効果は特にない」(n=29)および無回答(n=205)、表側のデジタル技術を活用する狙い別の「その他」(n=27)、「狙いは特にない/効果は特にない」(n=9)および無回答(n=36)は図表から割愛している。

注2:デジタル技術を活用する狙いの回答別で、デジタル技術の活用後に効果が出たものの回答割合が高い上位3項目を網かけしている。

効果は活用している工程・活動別に大きな違いなく生産性の向上がトップ

また、デジタル技術を活用する狙い、および活用後に効果が出たものについて、それぞれ、デジタル技術を活用しているものづくりの工程・活動別にみると、工程・活動間での回答傾向はおおむね違いがなく、ほとんどの工程・活動で、狙い、効果ともに、「生産性の向上」「開発・製造等のリードタイムの削減」「作業負担の軽減や作業効率の改善」「在庫管理の効率化」などが上位を占める(図表6、図表7)。そのなかで、〈e.コスト管理〉や〈f.受・発注管理、在庫管理〉などでは、活用する狙いの上位に「製造経費の削減」が入ってくるが、活用後に効果が出たものの上位には「過去と同じような作業がやりやすくなる(仕事の再現率向上)」がのぼった。

図表6:ものづくりの工程・活動別にみた、デジタル技術を
活用した狙い(複数回答)
(単位:%)
デジタル技術活用企業が回答。n=2,472
画像:図表6
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注:回答割合の上位5位までの結果だけを図表にした。

図表7:ものづくりの工程・活動別にみた、デジタル技術活用後に出た効果(複数回答)(単位:%)
デジタル技術活用企業が回答。n=2,472
画像:図表7
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注:回答割合の上位5位までの結果だけを図表にした。

新分野の技術を活用する企業ほど多くの項目で効果があがる

活用しているデジタル技術の違いによって、デジタル技術活用後の効果の程度に違いがあるのかどうか確認するために、活用しているデジタル技術の分野別に、デジタル技術活用後に出た効果の項目数をみてみた。すると、「16個以上」で効果が出たとした企業の割合が、「ビッグデータ」(18.1%)や「VR/AR/MR/SR(仮想現実等)」(12.5%)、「AI(人工知能:画像・言語認識技術含む)」(11.6%)、「IoT(モノのインターネット化)」(10.2%)、「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」(10.2%)などで比較的高かった。全体として、新しい分野のデジタル技術を活用する企業ほど、多くの効果をあげる企業が多い状況が見て取れる(図表8)。

図表8:デジタル技術の分野別にみた、デジタル活用後に
出た効果の個数(複数回答)
(単位:%)
デジタル技術活用企業が回答。
画像:図表8

注:表側の活用しているデジタル技術別の「その他」(n=55)および無回答(n=9)は掲載を割愛した。

(3)デジタル技術活用後に出た効果の業績や労働生産性への影響

人員配置や業績の改善に効果が出た企業の3割が売上も増加傾向

デジタル技術活用後に出たどのような効果が、企業の業績にプラスの影響をもたらしているのか。クロス集計により、傾向だけを眺めてみる。

直近の決算での年間の【売上高】と【営業利益】について3年前からの変化を尋ねた設問で、それぞれ3年前と比較して「大幅に増加(15%以上)」と回答した企業と「増加(5%以上15%未満)」と回答した企業の合計の回答割合を、デジタル技術活用後に効果が出たものの回答別にみたところ、【売上高】については、「人材の最適配置」(31.8%)、「人手不足の解消」(31.0%)といった人員配置の改善効果を得られた企業で増加企業が比較的多くなっている(図表9)。

図表9:デジタル技術活用後に出た効果の回答別にみた、年間売上高が3年前より増加した割合(複数回答)(単位:%)
デジタル技術活用企業が回答。n=2,472
画像:図表9

注1:回答割合の上位7位までの結果だけを図表にした。

注2:直近の決算での年間の売上高の3年前からの変化を尋ねた設問で、3年前と比較して「大幅に増加(15%以上)」と回答した企業と「増加(5%以上15%未満)」と回答した企業の合計の回答割合を示している。

【営業利益】については、「業績の改善」(33.5%)、「社内コミュニケーションの円滑化」(32.5%)、「労働時間の短縮や休暇・休日の増加」(32.3%)などの順で増加割合が高かった(図表10)。

図表10:デジタル技術活用後に出た効果の回答別にみた、年間営業利益が3年前より増加した割合(複数回答)(単位:%)
デジタル技術活用企業が回答。n=2,472
画像:図表10

注1:回答割合の上位7位までの結果だけを図表にした。

注2:直近の決算での年間の営業利益の3年前からの変化を尋ねた設問で、3年前と比較して「大幅に増加(15%以上)」と回答した企業と「増加(5%以上15%未満)」と回答した企業の合計の回答割合を示している。

「人材の最適配置」に効果が出た企業では6割で労働生産性が向上

企業の労働生産性(※3)への影響はどうだろうか。企業の3年前からの労働生産性の変化について尋ねた設問で、3年前と比較して「向上した」と回答した企業と「やや向上した」と回答した企業合計での回答割合を、デジタル技術活用後に効果が出たものの回答別にみると、「人材の最適配置」の効果が得られた企業で61.9%と最も割合が高く、次いで「労働時間の短縮や休暇・休日の増加」(57.2%)、「取引先・販売ルートの拡大」(55.3%)などの順で高くなっている(図表11)。

図表11:デジタル技術活用後に出た効果の回答別にみた、労働生産性が3年前より向上した割合(複数回答)(単位:%)
デジタル技術活用企業が回答。n=2,472
画像:図表11

注1:回答割合の上位7位までの結果だけを図表にした。

注2:自社の労働生産性の3年前からの変化をどう考えているか尋ねた設問で、3年前と比較して「向上した」と回答した企業と「やや向上した」と回答した企業の合計の回答割合を示している。

また、同業同規模の他社と比べた労働生産性の状況について尋ねた設問で、他社と比べて「高い」と回答した企業と「やや高い」と回答した企業の合計の回答割合を、デジタル技術活用後に効果が出たものの回答別にみると、やはり「人材の最適配置」の効果が得られた企業で最も高い割合となった(40.3%)(図表12)。

図表12:デジタル技術活用後に出た効果の回答別にみた、同業同規模と比べて労働生産性が高い割合(複数回答)(単位:%)
デジタル技術活用企業が回答。n=2,472
画像:図表12

注1:回答割合の上位7位までの結果だけを図表にした。

注2:同業同規模の他社と比べて自社の労働生産性をどう考えているか尋ねた設問で、「高い」と回答した企業と「やや高い」と回答した企業の合計の回答割合を示している。

(4)デジタル技術を活用できる人材の配置が求められている工程・活動

デジタル技術を活用できる人材の配置が求められる工程のトップは「生産管理」

デジタル技術を活用できる人材の配置が求められている工程・活動を規模別にみると(複数回答)、おおむね規模が大きくなるほど割合が高い。「設備間のネットワーク化」は「49人以下」(19.4%)で約2割にとどまっているのに対し、「300人以上」(48.9%)では半数近くにのぼった(図表13)。

図表13:デジタル技術を活用できる人材の配置が求められている工程・活動(複数回答)(単位:%)
デジタル技術活用企業が回答。
画像:図表13
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注:表側の従業員規模別の「無回答」(n=13)は、掲載を割愛している。

(5)デジタル技術の活用を進めるにあたって先導的な役割を果たした社員

中小企業は経営トップ主体でデジタル技術活用を推進する傾向に

デジタル技術の活用を進めるにあたって先導的な役割を果たしたのはどういった社員なのかを規模別にみると(複数回答)、「経営トップ」については規模が小さくなるほど割合が高く、中小企業では経営トップが主体となってデジタル技術活用を推進していることがうかがえる。一方、「社内で特にデジタル技術に精通した社員」「デジタル技術を利用・活用した部門のリーダー社員」「工場長やデジタル技術を利用・活用した部門のトップ」については、規模が大きくなるほど割合が高くなった(図表14)。

図表14:デジタル技術の活用を進めるにあたり、先導的な役割を果たした社員(複数回答)(単位:%)
デジタル技術活用企業が回答。
画像:図表14

注1:「-」は該当する企業がいないこと(n=0)を示す。

注2:表側の従業員規模別の「無回答」(n=13)は、掲載を割愛している。

(6)デジタル技術を活用した工程・活動でものづくり人材の配置や異動の変化があったか

半数以上の企業で人員配置を変更せず業務効率・成果の向上に

デジタル技術を活用した工程・活動でものづくり人材の配置や異動など現場の変化があったかどうか尋ねたところ(複数回答)、「そのままの人員配置で、業務効率や成果が上がった」が52.3%にのぼった。半数以上の企業では、人員の配置を変更することなく、業務効率や成果が向上していた(図表15)。

図表15:デジタル技術を活用した工程・活動でものづくり人材の配置や異動などの現場の変化はあったか(複数回答)(単位:%)
デジタル技術活用企業が回答。n=2,472
画像:図表15

(7)デジタル技術の活用を進めるために強化した経営・人事施策の取り組み

活用推進のため大企業の8割で経営・人事施策の取り組みを強化

デジタル技術の活用を進めるために強化した経営・人事施策の取り組み状況をみると、「強化した取り組みがある」が63.3%、「強化した取り組みは特にない」が35.4%となった。規模別にみると、「強化した取り組みがある」企業の割合は規模が大きくなるほど高くなっており、「300人以上」(78.1%)では約8割にのぼる(図表16)。

図表16:デジタル技術の活用を進めるために強化した
経営・人事施策の取り組み状況
(単位:%)
デジタル技術活用企業が回答。n=2,472画像:図表16

注:従業員規模別の「無回答」(n=13)は、掲載を割愛している。

「強化した取り組みがある」と回答した企業(n=1,565)の具体的な取り組み内容をみると(複数回答)、「会社全体のデジタル技術活用促進に向けた意識改革」(45.8%)、「経営層のデジタル技術活用に向けた理解の促進」(45.1%)、「会社のデジタル技術活用方針の説明・明確化」(43.8%)がそれぞれ4割を超えた(図表17)。

図表17:「強化した取り組みがある」と回答した企業の具体的な取り組み内容(複数回答)(単位:%)
n=1,565
画像:図表17
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(8)デジタル技術の活用を進めるために強化した人材育成・能力開発の取り組み

8割以上の企業でデジタル技術活用推進のために人材育成・能力開発の取り組みを強化

つづいて、デジタル技術の活用を進めるために強化した、人材育成・能力開発の取り組み状況をみると、「強化した取り組みがある」が84.7%、「強化した取り組みは特にない」が14.1%となった。規模別にみると、いずれの規模も「強化した取り組みがある」の割合が高い(図表18)。

図表18:デジタル技術の活用を進めるために強化した人材育成・能力開発の取り組み状況(単位:%)
デジタル技術活用企業が回答。n=2,472
画像:図表18

注:従業員規模別の「無回答」(n=13)は、掲載を割愛している。

「強化した取り組みがある」と回答した企業(n=2,093)の具体的な取り組み内容をみると(複数回答)、「作業標準書や作業手順書の整備」(47.3%)や「OFF-JTの実施」(42.6%)が4割を超え、「身につけるべき知識や技能の明確化」(36.5%)、「ベテランから継承すべき技能・技術についての指導・訓練」(32.7%)も3割を超えた(図表19)。

図表19:「強化した取り組みがある」と回答した企業の具体的な取り組み内容(複数回答)(単位:%)
n=2,093
画像:図表19
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OFF-JTを強化した企業の半数以上でデジタル技術に特化したOFF-JTを実施

なお、強化した取り組みとして「OFF-JTの実施」をあげたデジタル技術活用企業(n=891)における、デジタル技術に特化した内容のOFF-JTの実施状況をみると、「実施している」が56.0%、「実施していない」が43.4%となった。規模別にみると、「実施している」の割合は規模が大きくなるほど高くなっており、「300人以上」では7割を超えている(図表20)。

図表20:デジタル技術に特化した内容のOFF-JTの実施状況(単位:%)
デジタル技術活用企業が回答。n=891画像:図表20

注:従業員規模別の「無回答」(n=6)は、掲載を割愛している。

「実施している」と回答した企業(n=499)の具体的な内容をみると(複数回答)、「一般的なデジタル技術に関する知識・技術の習得」(45.5%)が最も割合が高く、次いで「デジタル技術の自社への導入・活用・応用」(44.5%)、「他社で開発されたデジタル技術を応用した製品・サービスをつかいこなす」(36.9%)、「プログラミング・システム開発」(27.3%)などの順で高くなっている(図表21)。

図表21:「実施している」と回答した企業の具体的な取り組み内容(複数回答)(単位:%)
n=499
画像:図表21
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(9)デジタル技術の活用に向けたものづくり人材の確保に向けた取り組み

半数の企業が既存人材への研修・教育訓練でデジタル活用に向けたものづくり人材を確保

デジタル技術の活用に向けたものづくり人材の確保に向けて実施していることをみると(複数回答)、「自社の既存の人材に対してデジタル技術に関連した研修・教育訓練を行う」が48.5%で最も高くなっている。

規模別にみると、「デジタル技術に精通した人材を新卒採用する」と「デジタル技術に精通した人材を中途採用する」については、規模が大きくなるほど割合が高く、中小企業になるほど外部から人材を登用することのハードルが高くなる傾向がうかがえる(図表22)。

図表22:デジタル技術の活用に向けたものづくり人材の確保に向けて実施していること(複数回答)(単位:%)
デジタル技術活用企業が回答。画像:図表22

注:表側の従業員規模別の「無回答」(n=13)は、掲載を割愛している。

「自社の既存の人材に対してデジタル技術に関連した研修・教育訓練を行う」と回答したデジタル技術活用企業(n=1,200)が、どのような方法でものづくり人材の確保を行っているかみると(複数回答)、「社内での研修・セミナーの実施」は300人未満ではいずれも4割台となっているのに対し、「300人以上」(55.9%)では5割を超えている(図表23)。

図表23:どのような方法でものづくり人材の確保を行っているか(複数回答)(単位:%)
デジタル技術の活用に向けたものづくり人材の確保に向けて実施していることとして「自社の既存の人材に対してデジタル技術に関連した研修・教育訓練を行う」との回答があった企業が回答。
画像:図表27
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注1:「-」は該当する企業がいないこと(n=0)を示す。

注2:表側の従業員規模別の「無回答」(n=8)は、掲載を割愛している。

2割の企業でAIやRPAなどに精通した人材確保を希望

デジタル技術人材を自前で確保している企業(「自社の既存の人材に対してデジタル技術に関連した研修・教育訓練を行う」「デジタル技術に精通した人材を新卒採用する」「デジタル技術に精通した人材を中途採用する」「出向・派遣等により外部人材を受け入れる」のいずれかを選択したデジタル技術活用企業。n=1,812)は、どのような分野のデジタル技術に精通したものづくり人材を重点的に確保したいと考えているのだろうか。

結果をみると(複数回答)、「CAD/CAM」をあげる企業が50.7%で最も割合が高く、次いで「生産管理システム」(46.6%)、「ICT(情報通信技術)」(33.7%)、「プログラミング」(31.2%)などの順で高い(図表24)。比較的新しいデジタル技術の分野である「IoT(モノのインターネット化)」(30.8%)は約3割にのぼっており、「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」(19.6%)、「AI(人工知能:画像・言語認識技術含む)」(19.4%)でも約2割にのぼる。

図表24:どのような分野のデジタル技術に精通したものづくり人材を重点的に確保したいか(複数回答)(単位:%)
デジタル技術人材を自前で確保している企業が回答。n=1,812画像:図表24

ビッグデータは7割が独力で課題発見・解決できるレベルの人材を確保したいと考える

デジタル技術人材を自前で確保している企業にはまた、どのようなレベルの人材を重点的に確保したいと考えているかについても尋ねた(複数回答)。すると、「社内で、独力で課題発見と解決ができるレベル」が46.1%で最も割合が高く、次いで「社内で要求された作業が担当できるレベル」(39.0%)、「社内で要求された作業を、独力で担当できるレベル」(37.5%)、「社内で高度な技術を持っていると評価されるレベル」(24.5%)などの順で高くなっている(図表25)。

図表25:デジタル技術に精通したものづくり人材として重点的に確保したい人材のレベル(複数回答)(単位:%)
デジタル技術人材を自前で確保している企業が回答。画像:図表25

注:表頭のどのようなレベルの人材を重点的に確保したいかの無回答(n=100)、表側のどのような分野のデジタル技術に精通したものづくり人材を重点的に確保したいかの「その他」(n=17)および「無回答」(n=129)は掲載を割愛した。

ものづくり人材を重点的に確保したい分野別にみると、「ビッグデータ」では「社内で、独力で課題発見と解決ができるレベル」をあげる企業が69.1%と約7割にのぼり、同レベルをあげる割合は「AI(人工知能:画像・言語認識技術含む)」(59.8%)、「制御技術」(59.2%)、「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」(59.0%)などでも高い。また、「ビッグデータ」「VR/AR/MR/SR(仮想現実等)」では「社内で高度な技術を持っていると評価されるレベル」「自社の業界で高度な技術をもった人材として評価されるレベル以上」をあげる割合も目立って高くなっており、「ビッグデータ」ではそれぞれ50.5%、20.6%、「VR/AR/MR/SR(仮想現実等)」ではそれぞれ47.7%、25.0%となっている。

(10)デジタル技術の活用・導入において先導的な役割を果たすことができる人材に必要だと考えること

自社の整備・装置や工程の仕事を熟知した人材を重視する割合がトップ

デジタル技術の活用・導入において先導的な役割を果たすことができる人材に必要だと考えることをみると(複数回答)、「自社が保有する設備・装置や、担当する工程(開発・設計、製造、品質管理等)での仕事を熟知している」が60.2%で最も割合が高く、次いで「自社が保有する技術や製品について熟知している」(51.7%)、「デジタル技術を自社の事業で活用・応用できる能力(生産性向上、技術革新など)」(47.2%)、「会社の経営方針やものづくり方針を理解している」(45.1%)などの順で高くなっている(図表26)。

図表26:デジタル技術の活用・導入において先導的な役割を果たすことができる人材に必要だと考えること(複数回答)(単位:%)
デジタル技術活用企業が回答。n=2,472
画像:図表26

3.今後のデジタル技術活用に向けた動き

今後、デジタル技術はどのような工程・活動で活用されていくのか。また、活用するうえでの課題はどのようなところにあるのか、全回答企業を対象とした回答結果についてみていく。

大企業を中心に今後も「生産管理」や「製造」で活用強化の方向

すべての回答企業に対して、今後デジタル技術の活用に新たに取り組む、活用を強化する予定があるのはどの工程・活動かを尋ねると(複数回答)、「生産管理」や「製造」をあげる割合が「300人以上」では6割台に及んだ(それぞれ62.1%、65.9%)(図表27)。

図表27:今後デジタル技術の活用に新たに取り組む、活用を強化する予定がある工程・活動(複数回答)(単位:%)
画像:図表27
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注:表側の従業員規模別の「無回答」(n=23)は掲載を割愛している。

すでにデジタル技術を活用している工程・活動の今後の方向性はどうなっているのだろうか。デジタル技術を活用しているものづくりの工程・活動別に、今後デジタル技術の活用に新たに取り組む、活用を強化する予定がある工程・活動の回答割合をみると、ものづくりの中核的な工程・活動ともいえる「製造」や「生産管理」では、すでに活用していても今後も活用を強化するとする企業が多くなっている(図表28)。

図表28:ものづくりの工程・活動別にみた、今後デジタル技術の活用に新たに取り組む、活用を強化する予定がある工程・活動(複数回答)(単位:%)
画像:図表28
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注:デジタル技術を活用しているものづくりの工程・活動別で、今後デジタル技術の活用に新たに取り組む、あるいは活用を強化する予定がある工程・活動の回答割合が高い上位3項目を網かけしている。

デジタル技術導入にかかるノウハウ不足を課題に感じる割合がトップに

デジタル技術を活用していくうえでの課題について、【デジタル技術活用企業】と【デジタル技術未活用企業】(「活用している」工程・活動が1つもなかった企業)に分けて結果をみると(複数回答)、【デジタル技術活用企業】【デジタル技術未活用企業】ともに「デジタル技術導入にかかるノウハウの不足」(それぞれ59.5%、57.0%)の回答割合が高く、また、【デジタル技術活用企業】のほうがより人材不足や予算不足を課題視する傾向にある(図表29)。【デジタル技術未活用企業】では、「デジタル技術導入の効果がわからない」(31.0%)、「他に優先する課題がある」(25.0%)、「デジタル技術の導入・活用に向けた経営ビジョンや戦略がない」(24.5%)など、導入以前の課題をあげる割合が高い。

図表29:デジタル技術を活用していくうえでの課題(複数回答)(単位:%)
画像:図表29

※1 本調査の対象企業は、製造業全てではなく、一部の業種であることに留意が必要。 対象業種は、「調査の概要」に記載。

※2 調査は 郡司正人(リサーチフェロー)、藤本 真(主任研究員)、荒川創太(主任調査員)、田中瑞穂(調査員)の4人が担当した。

※3 「従業員1人当たりの付加価値」と定義。本調査では、売上・利益の向上や組織力のアップなどに結びつく、生産工程の効率化や製品の高付加価値など自社の「強み」を伸ばす取り組みを実施することを「労働生産性を向上させる」と捉えることとしている。

回答企業の属性(単位:%)

画像:回答企業の属性と調査の概要
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(田中 瑞穂)