生理休暇を取得していない割合が8割超に
 ――日本医労連女性協議会「3休(年休・生休・連休)アンケート」結果

国内トピックス

日本医労連(佐々木悦子委員長)の女性協議会はこのほど、医療や介護・福祉の現場で働く女性労働者の年次有給休暇、生理休暇、連続休暇の取得状況等の実態を調査した、「3休(年休・生休・連休)アンケート」結果を発表した。それによると、8割以上の女性が生理休暇を取得していないことが明らかとなっており、人員不足や休暇を取りづらい雰囲気から、年次有給休暇などの取得も十分に進んでいない状況がうかがえた。医労連は医療・介護・福祉従事者の大幅増員や、母性保護制度の改正、利用向上に向けた運動を促進する必要性を訴えている。

日本医労連独自で3休に関する調査を行うのは初めてとなる。調査は2022年4月~6月15日に、全国の加盟組織内にある医療・介護・福祉現場で働く女性労働者を対象に実施。加盟組織を経由して各単組・支部(事業所ごとの労働組合)に、調査票の送付と、グーグルフォームを活用して、回収・集計を行い、29県医労連の9,155人から回答を得た。

半数が年休を10日以内しか取得できず

調査では、はじめに年次有給休暇(以下、「年休」)について、取得状況や使用目的などを尋ねている。

昨年度、年休をどれだけ取得したかをみると、「6~10日」が32.8%で最も割合が高く、次いで「11~15日」(19.4%)、「1~5日」(16.3%)となっており、労働基準法改正後に義務化された年休の5日以上取得に満たない労働者も一定数いる状況がみられた。また、年休を1日も取得しなかった人も0.9%となっており、全体の約5割が10日以内の年休しか取得できていなかった。

年休の主な使い方をみると(複数回答)、「休養」が54.5%で最も割合が高く、次いで「子どもの関連行事」(32.1%)、「自分の病気・通院」(29.1%)などの順で高くなっている。

なお、2年前の2020年4月に、日本医労連の上部団体である全労連の女性部が加盟単一産業別組合向けに実施した「女性労働者の労働実態および男女平等・健康実態調査」(以下、「全労連女性部調査」)においても、年休の使い方(3つまで回答:選択肢は今回調査と同様)について尋ねる設問があり、その調査で日本医労連だけの回答をまとめた結果では「旅行・趣味」の割合は42.6%と、4割を超えていた。しかし、今回調査では「旅行・趣味」は2割台(24.6%)にとどまっており、日本医労連は「新型コロナの影響による自粛と、医療や介護・福祉労働者にいまだにかけられ続けている行動制限が大きく影響している」と推測している。

正規雇用で人員不足を理由に年休を取得しなかった割合は非正規雇用の2倍に

年休を取得しなかった(できなかった)理由を尋ねたところ(3つまで)、「人員不足」が39.4%で最も割合が高く、次いで「自分や家族のための急な用事のために残しておく」(25.4%)、「職場に迷惑がかかる」(20.1%)、「取りづらい雰囲気がある」(19.4%)が続く。

「人員不足」の割合を雇用形態別にみると、正規雇用(42.7%)が非正規雇用(21.9%)の約2倍にのぼっている。また、職種別にみると、「看護職」(46.0%)や「放射線・検査」(41.7%)が4割を超える状況となっている。

生理休暇を取得しない理由は「周りが誰も取っていない」がトップ

調査では続いて生理休暇の取得状況や、月経に関する不調の症状について尋ねている。

生理休暇の取得状況をみると、「取っていない」(82.7%)が8割を超える一方、「毎潮時取っている」(4.0%)と「時々取っている」(3.3%)を合わせた割合は7.3%となり、取得している割合は1割にも満たなかった。「取っていない」割合は全労連女性部調査(選択肢は今回調査と同様)では64.9%となっており、今回調査では2年前と比べ増加傾向であることがうかがえた。

生理休暇を取っていないと回答した人(n=7,573人)に対し、取っていない理由を尋ねたところ(複数回答)、「周りが誰も取っていない」が43.9%で最も割合が高く、次いで「必要ない」(32.4%)、「仕事が多忙で雰囲気としてとりづらい」(27.8%)、「人員不足」(18.8%)、「上司に言いづらい」(18.5%)の順で高くなっている。また、「制度があることを知らなかった」(11.2%)も1割にのぼっており、自由記述でも制度に関する説明・周知が不足している状況が読み取れた。

月経に関する不調を感じる人の4分の3は月経時に鎮痛剤を服用

月経に関する不調としてどのような症状があるかをみると(複数回答)、「月経痛(腰痛・腹痛・頭痛等)あり」が59.5%で最も割合が高く、次いで「月経による体調不良・精神不安あり」(33.8%)、「月経の不調(月経前症候群PMS)あり」(31.7%)などが高くなっている。

「無月経(3カ月以上停止・閉経等)」のみの回答と無回答を除いた人(n=4,774)に対し、月経時(PMS含む)に鎮痛剤を服用するか尋ねたところ、「毎潮時飲む」(36.0%)と「ときどき飲む」(40.3%)を合わせた76.3%の人が鎮痛剤を服用していた。

生理休暇を取っていない理由の自由記述においても、「痛み止めを飲めば働ける」「婦人科治療薬で生理を止めている」などの回答がみられており、不調の症状があっても休暇を取得せず、薬の服用で対応している人が少なからずいることがうかがえた。

更年期に対する休暇を求める割合も4割超に

調査ではほかにも、連続休暇の取得状況について確認。2022年3月を基準に、連続2日以上の休みを何回取得したかをみると、全体の3分の1(33.3%)が「1カ月に1回取得」、4分の1(25.6%)が「1カ月に2回取得」していた。

また、年次有給休暇・生理休暇・連続休暇以外に特に必要だと思う休暇制度を尋ねたところ、「更年期休暇」が42.5%で、突出して高い割合となった。自由記述では、更年期の症状が生理より辛いとする意見もあり、「生理休暇と同様に、女性の身体の変化に伴う休暇が必要」とする記述もみられた。

「春闘で母性保護制度改正や利用向上にむけた運動を」(佐々木委員長)

佐々木悦子委員長は、「労働者の約7割が女性である医療・介護・福祉現場では生理休暇をはじめとした母性保護制度の活用が重要な課題」と指摘。慢性的な人員不足等で制度が十分に活用されていない実態を改善するため、医療・介護・福祉現場の大幅増員を訴えると同時に、2023年春闘において制度改正、利用向上にむけた運動を促進していく考えを示した。

(調査部)