販売員の地位向上、安全衛生面の確保などによって従業員の満足度の向上を目指す
 ――日本百貨店協会が労働環境改善に向けた行動指針を策定

業界の動き

全ての従業員にとって働きやすく魅力ある労働環境のさらなる改善を目指すとして、日本百貨店協会(会長:村田善郎・髙島屋社長)は5月24日、「百貨店店舗における労働環境改善に向けた行動指針」を策定した。行動指針は、販売員の地位向上、安全衛生面の確保や、ワークライフバランスの充実など5本柱からなっている。協会では、行動指針の策定により、「各百貨店における取り組みがさらに推進され、販売スタッフをはじめとした従業員の満足度が向上し、ひいてはお客様満足につながることを期待する」としている。

策定の背景に、販売スタッフの人手不足など

行動指針を策定した背景について、協会では、「販売スタッフの人手不足は、単に労働力が不足するということだけではなく、高質な接客サービスを提供する百貨店ならではの業態価値そのものに関わる重要な課題」であり、「社会においても働き方改革を求める声は年々高まってきている」ことをあげる。

行動指針の策定によって、「店舗で働く従業員の半数以上が、百貨店内に出店するお取引先の販売スタッフとなるため、百貨店が直接雇用する社員等のみならず、お取引先からの派遣販売員を含めた全ての従業員にとって働きやすく魅力ある労働環境の改善を目指す」と強調している。

従業員のストレスを軽減し、気持ち良く働くことができる環境に

行動指針は、①販売業務の魅力訴求、販売員の地位向上②従業員施設の充実化、安全衛生面の確保③従業員のワークライフバランスの充実④店舗内業務の効率化と利益最大化による労働生産性の向上⑤情報共有・フォローアップ――の5つの柱からなる。

具体的には、「販売業務の魅力訴求、販売員の地位向上」では、取引先各社と連携し、「百貨店における販売業務の魅力を広くアピールする」とともに、「地域における百貨店の役割についての理解を深めることで、販売員の社会的地位の向上に努める」としている。

「従業員施設の充実化、安全衛生面の確保」では、従業員のストレスを軽減し、気持ち良く働くことができるよう、「社員食堂、トイレ、ロッカー等の各種従業員施設の改良に努める」とともに、感染症対策など安全衛生面の取り組みを徹底することで、安心して業務に専念できる環境を整えることを打ち出している。

「従業員のワークライフバランスの充実」では、店頭で働く従業員のワークライフバランスを充実させるため、「営業時間の短縮、休業日の増加等を推進」すると明記。ただ、これについては「各百貨店が、それぞれの店舗が置かれた立地、企業規模、競合の有無、顧客特性の状況を十分に考慮した上で検討を進める」とした。

「店舗内業務の効率化と利益最大化による労働生産性の向上」では、百貨店と取引先との情報共有化やIT技術の積極的な活用を通じて、「店舗における販売付帯業務を省力化し、従業員の業務負担を軽減する」と明記。それと同時に、「新しい時代に即した顧客サービスを実現する」ことによって「双方の利益最大化に向けた取り組みを推進し、労働生産性の向上を目指す」としている。

最後の「情報共有・フォローアップ」では、各店舗における取り組み事例に関する情報共有を積極的に推進するとともに、業界の持続的な取り組みとなるように、その進捗状況をフォローアップするとしている。

(調査部)

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