コロナ禍による不安感を持つ人は3割程度に減少
 ―厚生労働省「新型コロナウイルス感染症に係るメンタルヘルスとその影響に関する調査」2021年度調査結果

国内トピックス

新型コロナウイルス感染症の拡大にともない、2021年の4~9月までは約5割弱の人が神経過敏や落ち込みなど、何らかの不安等を感じていたが、感染者数が落ち着いた10~11月ではこうした不安を抱える人は30%未満に減少したことが、このほど厚生労働省が実施した「新型コロナウイルス感染症に係るメンタルヘルスとその影響に関する調査」結果で明らかになった。調査は、新型コロナウイルス感染症の拡大とこれにともなう行動制限等が、不安やストレスなど国民の心理面に与えた影響を把握するために実施したもの。インターネット調査で、15歳以上の8,322人から回答を得た。

10~11月期では不安が「どれもなかった」人が7割

何らかの不安等を感じた人の割合を時系列でみると、同様の調査対象で実施した前回の2020年度調査の2~3月期以来、5割程度の状況が続いていたが、感染拡大が落ち着いた2021年の10~11月では27.3%と3割未満に減少した。

不安の内容を詳しくみると(複数回答)、「そわそわ、落ち着かなく感じた」「神経過敏に感じた」と回答した人の割合は2021年4~6月期、7~9月期はともに20%を超えていたが、10~11月期はそれぞれ12.4%、9.7%と半減した()。また、「気分が落ち込んで、何が起こっても気が晴れないように感じた」のは、11.3%、12.4%と推移していたが8.8%へとやや低下した。10~11月期では、「どれもなかった」とする人が72.7%と7割以上となっている。

図:メンタルヘルスの状況(2021年10~11月)(複数回答)
画像:図

なお、性別にみると、前回2020年度調査の2~3月期以降、すべての期間でどの不安の項目の回答割合も女性のほうが高くなっているが、その差は徐々に縮小している。

不安要因は「自分や家族への感染」や「収入」「生活の変化」

新型コロナウイルスの感染拡大に際して不安に思ったことについて聞いたところ(複数回答)、10~11月期は、「自分や家族の感染への不安」をあげる人が42.4%と最も高く、次いで「自分や家族の仕事や収入に関する不安」10.8%、「自粛等による生活等の変化に対する不安」10.6%が続く。就業形態別にみると、特に「(新型コロナウイルス感染拡大の影響による失職・離職による)無職」や「家族従事者」で「自分や家族の仕事や収入に関する不安」の回答割合が高いのが目立った(それぞれ31.7%、29.2%)。

新型コロナウイルス感染拡大前に比べ、食事・飲酒量や睡眠時間、運動量などが変化したかを問うと、「食事の量」「睡眠時間」「運動量」「飲酒量」「喫煙量」「カフェインの量」「ギャンブルに使う時間」のいずれも、「減ったまま」とする割合が「増えたまま」という回答を上回っている。なかでも、「運動量」は20%が「減ったまま」と答えており、割合が高い。

生活に関して困ったことや、ストレスを感じたのはどのようなことだろうか(複数回答)。回答をみると、「旅行やレジャーができないこと」(47.2%)が最も回答割合が高く、「新型コロナウイルスの流行(コロナ禍)がいつ終わるかわからないこと」(43.0%)、「医療用品・衛生用品(マスクなど)が入手困難なこと」(24.0%)などが続く。一方で、「困ったことやストレスに感じたことはない」との回答も15.8%(調査対象が同じ前回の2020年度調査では12.7%)あった。

こうした不安やストレスを解消するため、何をしているかを尋ねたところ(複数回答)、「手洗いやマスクの着用、人との距離を取る、できる限り自宅にいるようにするなどの予防行動」が58.2%と、前回調査の7割超からは減少したものの依然として高く、「スマートフォンやインターネットを使って情報を検索」(27.1%)が続く。一方で、「特に何もしていない」(16.7%、前回10.6%)や「特に不安やストレスはない」(10.0%、前回5.0%)と答えた人が前回から増加しており、コロナ禍の長期化にともない、人々の反応や対応にも変化が生じてきていることがうかがえる。

不安やストレスの解消方法と、実際のストレスの解消度の関係をみると、「ストレスを解消できている」人では解消方法として「運動などで体を動かす」をあげた人が39.3%と最も高くなっている。逆に、ストレスや不安の解消が「できていない」とした人では、解消方法として「スマートフォンやインターネットを使って情報検索」と答えた人の割合が45.0%で最多だった。ネットやスマホで情報を集めるより体を動かすほうが不安やストレス解消には効果的という結果となっている。

2割強が心の健康が悪化と回答 ――女性でより高い傾向

心の健康の変化についても聞いている。この1年でコロナ禍によって自分の心の健康が「悪化した・やや悪化した」と回答したのは22.3%で、「変わらない」が74.9%、「良くなった・やや良くなった」は2.8%だった。性別・年代別にみると、どの年代でも女性の方が「悪化・やや悪化」と答えた割合が高い。

新型コロナウイルス感染症の感染拡大は生活スタイルにも少なからぬ影響を及ぼしたが、ポジティブな影響もあったのだろうか。半数以上が「良い影響は特にない」(56.9%)と答えているものの、「家族と過ごす時間が増えた」(24.4%)、「対人関係のストレスが減った」(13.4%)、「睡眠時間が増えた」(7.9%)など、良い影響を指摘する声もあった。

勤務先が新型コロナウイルス感染症予防のために実施している取り組みは(複数回答)、「打合せ時のマスク着用や換気」79.8%、「オンライン会議の実施」37.4%、「在宅勤務(テレワーク)」25.3%、「自宅待機」20.2%、「時差出勤やローテーション勤務」19.0%、などの順となっている。経年変化をみると、在宅勤務や時差出勤・ローテーション勤務、自宅待機については、2020年度調査に比べて3~6ポイント程度、実施割合が減少している。

コロナ禍の経験や生活の変化が、今後の心の健康に影響を与える可能性について不安があるか聞いたところ、「不安はない」が36.5%、「不安である」が23.1%、「どちらともいえない」が40.4%だった。性別・年代別にみると、女性の30歳代~50歳代までの各年代で3割以上が「不安」としており、相対的に不安感が強くなっている。

(調査部)

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