派遣労働者の賃金が1.7%上昇して1万5,968円に
 ――厚生労働省が2022年度の「労働者派遣事業報告書」を公表

国内トピックス

労働者派遣料金や、派遣労働者の賃金も高まりがみられる。厚生労働省が3月29日に発表した「労働者派遣事業報告書」(2022年度報告)集計結果(速報値)によると、労働者派遣の対価として派遣先から派遣元事業主に支払われる派遣料金(8時間換算、消費税を含む)は平均2万4,909円で、前年の2万4,461円から1.8%上昇。派遣労働者の賃金(8時間換算)も1万5,968円で、前年の1万5,698円から1.7%上昇した。

「情報処理・通信技術者」の派遣料金は1.5%上昇

派遣料金を主な職種別にみると、「製造技術者」が2021年度2万6,701円→2022年度2万7,110円(前年比1.5%増)、「情報処理・通信技術者」が同順(以下同じ)で3万2,394円→3万2,871円(同1.5%増)、「その他の技術者」が2万9,865円→3万445円(同1.9%増)、「その他の専門的職業従事者」が2万4,608円→2万4,815円(同0.8%増)、「一般事務従事者」が1万6,828円→1万7,145円(同1.9%増)、「会計事務従事者」が1万8,154円→1万8,394円(同1.3%増)、「事務用機器操作員」が1万8,937円→1万9,408円(同2.5%増)、「製品製造・加工処理従事者」が1万5,666円→1万6,073円(同2.6%増)、「機械組立従事者」が1万6,841円→1万7,156円(同1.9%増)、「製品検査従事者」が1万5,668円→1万6,074円(同2.6%増)、「運搬従事者」が1万5,212円→1万5,592円(同2.5%増)、「包装従事者」が1万3,693円→1万4,038円(同2.5%増)と、軒並み上昇している。なお、前年比は編集部で計算したもの。

賃金は1.7%上昇

派遣労働者の賃金は1万5,968円で、前年の1万5,698円から1.7%上昇した。

主な職種別にみると、「製造技術者」が2021年度1万6,830円→2022年度1万7,104円(前年比1.6%増)、「情報処理・通信技術者」が1万9,886円→2万120円(同1.2%増)、「その他の技術者」が1万8,417円→1万8,802円(同2.1%増)、「その他の専門的職業従事者」が1万6,004円→1万6,172円(同1.0%増)、「一般事務従事者」が1万1,435円→1万1,656円(同1.9%増)、「会計事務従事者」が1万2,120円→1万2,246円(同1.0%増)、「事務用機器操作員」が1万2,622円→1万2,865円(同1.9%増)、「製品製造・加工処理従事者」が1万726円→1万956円(同2.1%増)、「機械組立従事者」が1万1,264円→1万1,460円(同1.7%増)、「製品検査従事者」が1万601円→1万855円(同2.4%増)、「運搬従事者」が1万630円→1万846円(同2.0%増)、「包装従事者」が9,519円→9,729円(同2.2%増)となっている。前年比は編集部で計算したもの。

キャリアアップに資する教育訓練の方法は「Off-JT」が3分の2

労働者派遣法は派遣元・派遣先に対して、派遣労働者のキャリアアップに資する教育訓練を行うことを義務づけている。たとえば派遣元は、派遣労働者の入社から3年間は、教育訓練の機会を毎年8時間以上提供しなければならない。

報告書によると、教育訓練を受講した派遣労働者は入社1年目が198.4万人、入社2年目が32.7万人、3年目が20.6万人、4年目以降が39.3万人となっている。

労働者派遣法の基準を満たす教育訓練の、1人あたりの平均実施時間は入社1年目が11時間、2年目が10時間、3年目が11時間、4年目以降が10時間となっている。

訓練の方法は、「Off-JT」が67.1%で最も高く、「計画的なOJT」が31.7%、「OJT(計画的以外)」が1.2%となっている。

雇用安定措置の実施内容は「新たな派遣先の提供」が最多

労働者派遣法は、個人単位の期間制限(同じ組織単位で3年)に達する見込みの派遣労働者が引き続き就業を希望する場合、派遣終了後の雇用を継続させるための措置(雇用安定措置)を講じることを、派遣元に義務づけている。具体的には、「派遣先への直接雇用の依頼」「新たな派遣先の提供」「派遣元での無期雇用」「その他安定した雇用の維持を図るために必要な措置」のいずれか。

報告書によると、措置の対象となった派遣労働者数は112万9,409人で、措置の状況は「新たな派遣先の提供」が59万8,207人(対象者に占める割合は53.0%)で最も多く、以下「派遣先への直接雇用の依頼」が6万1,261人(同5.4%)、「その他安定した雇用の維持を図るために必要な措置」が6万329人(同5.3%)、「派遣元での無期雇用」が1万3,897人(同1.2%)となっている。

このうち、派遣期間が3年になることが見込まれ、かつ派遣労働者が引き続き就業を希望している場合に限ってみると、措置の対象となった派遣労働者数は9万2,862人で、措置の状況は「新たな派遣先の提供」が4万8,786人(対象者に占める割合は52.5%)で最も多く、以下「派遣先への直接雇用の依頼」が1万7,723人(同19.1%)、「その他安定した雇用の維持を図るために必要な措置」が1万1,390人(同12.3%)、「派遣元での無期雇用」が9,364人(同10.1%)となっている。

労働者派遣法は派遣元事業主に対し、運営状況の報告書を厚生労働大臣に提出するよう定めている。このほど公表された2022年度の集計は、報告対象期間(各派遣元事業主の事業年度)の末日が2022年4月1日から2023年3月31日の期間内に属する報告について集計したもの。

(調査部)