改善基準告示改正のトラック運転の拘束時間短縮で、3割弱が「ダイヤが厳しくなる」、約1割が「運行が維持できなくなる」と回答
 ――運輸労連の「職場安全点検調査結果」

国内トピックス

トラック運輸業界を主に組織する産業別労働組合の運輸労連(成田幸隆委員長)が昨年12月に公表した「職場安全点検調査結果」の報告書によると、改善基準告示の改正で、今年4月1日からトラック運転者などの拘束時間が短縮されることの影響について、加盟単組の職場に勤める人の27.5%が「ダイヤが厳しくなるが可能」、11.9%が「運行が維持できなくなる」と回答していることが分かった。労働時間の短縮で必要と思われることを聞くと、約65%の人が「時間あたりの賃金アップ」と答えた。

調査は昨年6月に実施。運輸労連では毎年調査を行っている。調査票を各地連・都府県連および全国単組本部を通じて、1万935枚を加盟単組の職場に配布した。集計できた回答数は4,674票となっている。

トラック運転者では拘束時間は年間で原則3,300時間に短縮される

トラック運転者、タクシー・ハイヤー運転者、バス運転者それぞれについて、労働時間に関する「改善基準告示」(厚生労働大臣告示)が改正され、今年4月1日からトラック運転者については、1年の拘束時間が現行の3,516時間から原則3,300時間(最大3,400時間)に短縮される。また1カ月の拘束時間は、原則293時間(最大320時間)が原則284時間(最大310時間)に短縮され、1日の休息期間についても、継続8時間から「継続11時間を基本とし、継続9時間」に変更となる。

調査はこれらの改善基準告示の影響を尋ねた。「改善基準告示が改正され、2024年4月1日より原則、年間3,300時間、月間284時間に短縮されることによる運行への影響」を聞くと、「特に問題ない」が60.6%、「ダイヤが厳しくなるが可能」が27.5%、「運行が維持できなくなる」が11.9%で、前回調査から「特に問題ない」が7.4ポイント減少し、「ダイヤが厳しくなるが可能」が5.9ポイント、「運行が維持できなくなる」が1.5ポイントそれぞれ増加した。

主な事業別にみると、「貸切(区域)」では「特に問題ない」が58.2%、「ダイヤが厳しくなるが可能」が27.6%、「運行が維持できなくなる」が14.1%で、不特定多数の荷主の貨物を運ぶ「特積み(宅配、路線貨物)」が「特に問題ない」59.3%、「ダイヤが厳しくなるが可能」30.5%、「運行が維持できなくなる」10.2%となっており、「貸切(区域)」のほうがやや強く影響を見込んでいる。

改正による労働時間の短縮で必要と思われることを聞いたところ、「時間あたりの賃金アップ」が65.5%、「運行人員の確保」が29.3%、「違反事業者への罰則強化」が5.2%で、「時間あたりの賃金アップ」を求める声が最も多かった。同割合は前回調査から6.5ポイント増加している。

現在の拘束時間を約1割が「ときどきオーバー」

現在の改善基準告示の順守状況も聞いている。1日の拘束時間を「13時間以内、最長16時間まで、15時間超は週2回まで」、1カ月の拘束時間を「293時間まで(労使協定締結時は320時間まで延長可)」(条件:1年間の合計が3,516時間以内 293時間を超える月は6カ月以内)とする改善基準告示が守られているかをみると、「守られている」が88.7%、「ときどきオーバーする」が10.5%、「ほとんど守られていない」が0.8%で、ときどきオーバーすると答えた人が約1割いた。「ときどきオーバーする」の割合は3年連続で増加した。

これを主な事業別にみると、「守られている」の割合は、「貸切(区域)」が87.8%、「特積み(宅配、路線貨物)」が89.2%。「ときどきオーバーする」の割合は、「貸切(区域)」が11.2%、「特積み(宅配、路線貨物)」が10.3%となっており、「ときどきオーバーする」の割合についてはわずかだが「貸切(区域)」のほうが高くなっている。

「守られていない」場合、どの基準が守られていないか尋ねた結果をみると、「1カ月293時間以内」が36.3%、「1日13時間以内」が43.5%、「1日最大16時間以内」が20.2%となっており、「1日13時間以内」が最も守られていない。ただ、「1日13時間以内」は前年調査から7.5ポイント低下しており、「1カ月293時間以内」が3.8ポイント増加、「1日最大16時間以内」が3.7ポイント増加となっている。「1日最大16時間以内」は3年連続での増加となっている。

1日あたりの運転時間も約1割が「ときどきオーバー」

1日あたりの運転時間が「2日平均で1日9時間以内、連続運転時間は4時間以内」との基準については、「守られている」が88.2%、「ときどきオーバーする」が11.2%、「ほとんど守られていない」が0.6%だった。ただ、前年調査と比べると「ときどきオーバーする」の割合が3.4ポイント増加している。

これを主な事業別にみると、「守られている」の割合は、「貸切(区域)」が86.4%、「特積み(宅配、路線貨物)」が90.3%。「ときどきオーバーする」の割合は、「貸切(区域)」が12.9%、「特積み(宅配、路線貨物)」が9.4%となっており、「貸切(区域)」のほうが3ポイント以上高い。

「守られていない」場合、どの基準が守られていないか尋ねた結果をみると、「1日9時間以内」が63.1%、「連続運転時間」が36.9%で、「1日9時間以内」のほうが、守られていない割合が高い。ただ、前回調査から「1日9時間以内」は8.5ポイント減少し、「連続運転時間」が8.5ポイント増加している。

休息時間や休日労働の基準は9割超が順守

1日の休息時間は継続して8時間以上(分割する場合1回4時間以上で合計10時間以上)必要とする基準については、「確保できている」が91.4%、「ときどき確保できない」が7.9%、「ほとんど確保できない」が0.7%で、90%超が確保できていた。

休日労働を2週間に1回しかできない基準についても、「守られている」が91.4%、「ときどき2回以上出勤することがある」が7.9%、「ほとんど2回以上出勤する」が0.7%で、守られているとする割合が圧倒的に高かった。

時間外労働の上限時間数を知らない人が2割弱

「時間外労働の上限は、労使で協定した時間までとなっているが、その時間数を知っているか」との問いに対する回答割合をみると、「知っている」が81.3%、「知らない」が18.7%で、知らないとの回答が2割弱あった。前回調査と比べると、「知っている」が2.4ポイント減少し、そのぶん、「知らない」が増加した。

2022年1年間の時間外労働時間数を尋ねると、「100時間以内」が15.6%、「101~200時間」が10.6%、「201~300時間」が19.0%、「301~400時間」が10.7%、「401~500時間」が15.9%、「501~600時間」が11.3%、「601~700時間」が8.6%、「701~800時間」が4.0%、「801~960時間」が2.8%、「961時間以上」が1.5%。

前回調査では「100時間以内」(17.8%)が最も割合が高く、次いで「301~400時間」(17.5%)が高かったが、今回は「401~500時間」の回答割合が最も高かった。

(調査部)