推定組織率は16.3%で前年を下回る過去最低水準に
 ――厚生労働省が2023年「労働組合基礎調査」結果を公表

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厚生労働省が昨年12月に公表した2023年「労働組合基礎調査」結果によると、労働組合に加入している人が雇用者に占める割合を示す「推定組織率」は16.3%と、前年に記録した過去最低水準を更新した。労働組合員数は前年と比べ5万人超減少し、1,000万人を下回ったが、女性やパートタイム労働者の労働組合員数は前年から増加した。

調査は労働組合や労働組合員を産業別、企業規模別、加盟上部組合別にみた分布状況など、労働組合組織の実態を明らかにすることを目的に毎年実施。すべての労働組合を対象に、6月30日現在の状況について7月に調査を行い、集計している。

労働組合数の対前年比減は2000年以来続く

個人加入形式で支部・分会などの下部組織を持たない「単位組織組合」と、個人加入形式で下部組織を持つ「単一組織組合」をあわせた、「単一労働組合」における労働組合数は2万2,789組合となっている。同組合数は前年に比べ257組合(1.1%)減少しており、単一労働組合数が前年から減少するのは2000年以来、24年連続となった。

労働組合員数は993万7,654人となり、前年から5万4,719人(0.5%)減少。前年に引き続き、1,000万人を下回っている。

推定組織率は、こうした組合員数の状況に加え、雇用者数(総務省「労働力調査」6月原数値)が6,109万人と前年に比べ61万人増加したことから、16.3%と前年(16.5%)から0.2ポイント低下し、1947年の調査開始以来、過去最低の水準となった。

女性の労働組合員数は347万 3,000人で、前年に比べ2,000人(0.0%)の増加。推定組織率(女性雇用者数に占める女性労働組合員数の割合)は、前年(12.5%)より0.1ポイント低下し、12.4%となった。

パートタイム労働者は増加し141万人に

パートタイム労働者の労働組合員数は141万人となり、前年(140万4,000人)に比べ6,000 人(0.4%)増加した。全労働組合員数に占める割合は14.3%と、前年(14.1%)から0.2ポイント上昇。一方で、推定組織率(パートタイム労働者数に占めるパートタイム労働者の労働組合員数の割合)は8.4%と、前年(8.5%)から0.1ポイント低下した。

「公務」や「製造業」で労働組合員数が前年より減少

労働組合員数を産業別にみると、「製造業」が262万4,000人(全体の26.6%)と最も多く、次いで「卸売業、小売業」が154万人(同15.6%)、「建設業」が84 万5,000人(同8.6%)、「運輸業、郵便業」が81万4,000人(同8.2%)などと続いている。

対前年差で増加幅が大きかった産業をみると、「宿泊業、飲食サービス業」が1万2,000人(3.8%)増、「サービス業(他に分類されないもの)」が8,000人(3.8%)増などとなっている。一方、減少幅が大きかった産業では、「公務(他に分類されるものを除く)」が2万2,000人(2.9%)減、「製造業」が2万人(0.8%)減、「運輸業、郵便業」が1万6,000人(1.9%)減、「金融業、保険業」が1万5,000人(2.1%)減などとなった。

組合員数は1,000人以上規模では増加する一方、1,000人未満規模では減少

民営企業の労働組合員数は869万2,000人で、前年(871万人)に比べ1万8,000人(0.2%)減少した。これを企業規模別にみると、1,000人以上規模が584万6,000人(全体の67.3%)と最も多く、300~999人規模が108万7,000人(同12.5%)、100~299人規模が54万5,000人(同6.3%)、30~99人規模が16万7,000人(同1.9%)、29人以下規模が2万1,000人(同0.2%)となっている。

対前年差でみると、1,000人以上規模は4万7,000人(0.8%)増えたが、それ以外の規模は減少。29人以下規模では1,000人(3.5%)減、30~99人規模では5,000人(2.9%)減などと、減少率が大きい。

主要団体でも労働組合員数が前年より減少

主要団体別に、産業別組織を通じて加盟している労働組合員数をみると、連合(日本労働組合総連合会)が681万7,000人(前年比1万9,000人減)、全労連(全国労働組合総連合)が46万4,000人(同1万3,000人減)、全労協(全国労働組合連絡協議会)が7万6,000人(同7,000人減)と、全国組織はすべて前年比減となった。

産業別組織をみると、連合傘下では、「UAゼンセン」(189万4,000人、前年比2万7,000人増)、「JEC連合」(12万5,000人、同8,000人増)、「運輸労連」(16万人、同5,000人増)などでは増加幅が大きかった。一方、「自治労」(71万7,000人、同1万7,000人減)、「生保労連」(23万人、同8,000人減)、「JP労組」(22万7,000人、同7,000 人減)、「日教組」(20万人、同6,000人減)などで減少幅の大きさが目立った。全労連傘下では、「全労連自治労連」(11万9,000人、同4,000人減)、「全教」(5万1,000人、同3,000人減)、「国公労連」(5万人、同3,000人減)などで組合員を減らした。

組合員数の減少を真摯に受け止め、歯止めをかける取り組みを/連合

連合は今回の調査結果について、推定組織率が前年よりさらに低下していることを受けて「強い危機感を持たなければならない」と言及。組合員数の減少については、「真摯に受け止め、減少要因の把握、組織強化を通じた組合員減少に歯止めをかける取り組みを進める」などとする清水秀行・事務局長の談話を発表した。

一方、全労連も、推定組織率の低下について強い危機感を示すと同時に、引き続く物価の高騰により実質賃金が低下し続けるなど労働者の困窮化の深刻さをあげ、「賃金引き上げなど労働条件改善にむけた労働組合の役割発揮が強く求められる」などとする黒澤幸一・事務局長の談話を発表した。

(調査部)