雇用者の7割超が勤務時間外にもかかわらず部下・同僚・上司から連絡をうける
 ――連合「つながらない権利に関する調査2023」

国内トピックス

連合(芳野友子会長)が12月7日に公表した「つながらない権利に関する調査2023」結果によると、雇用者の回答者の7割超が、勤務時間外に部下・同僚・上司から連絡がくることがあると答えた。連絡がくることにストレスを感じているとした雇用者は62.2%と6割超で、ほぼ3人に2人は勤務時間外の連絡の制限が必要だと思うと回答した。

調査はインターネット調査で2023年9月13日~20日に実施し、18歳~59歳の労働者1,000人(うち雇用者942人)の有効サンプルを集計した。

取引先にプライベートな連絡先を教えている人は3割弱

取引先に、会社の電話番号やメールアドレス以外のプライベートな連絡先を教えているかどうかを聞いたところ、「教えている」が28.4%と3割弱で、「教えていない」は71.6%だった。業種別に「教えている」とした割合をみると、「建設業」(44.4%)、「学術研究、専門・技術サービス業」(38.5%)、「金融業、保険業」(32.7%)、「運輸業、郵便業」(31.8%)などの順で高くなっている。

雇用者に、現在、勤務時間外に部下・同僚・上司から業務上の連絡がくることがあるか聞くと、72.4%と7割を超える人が、連絡がくることがあるとし、「連絡がくることはない」と答えた人は27.6%だった。業種別にみると、連絡がくることがあるとしたのは「その他」を除けば「建設業」が82.7%で最も高く、「医療、福祉」が79.6%、「宿泊業、飲食サービス業」が78.0%、「教育、学習支援業」(76.7%)などと続く。

勤務時間外にほぼ毎日連絡がくる人が約1割

勤務時間外に部下・同僚・上司から業務上の連絡がくる頻度は、「ほぼ毎日」が10.4%、「週に2~3日」が14.3%、「月に2~3日」が12.1%、「月に1日以下」が17.9%などとなっている。

コロナ禍前に、勤務時間外に部下・同僚・上司から業務上の連絡がくることがどのくらいあったか尋ねた結果と比べると、「連絡がくることがあった/ある」と回答した人の割合は、コロナ禍前は64.2%で、現在のほうが8.2ポイント高い結果となった。

勤務時間外に取引先から連絡がくる人は約4割

全回答者に、勤務時間外に取引先から業務上の連絡がくるかを尋ねたところ、「連絡がくることがある」は44.2%と約4割で、「連絡がくることはない」は55.8%だった。業種別では、「建設業(66.7%)と「金融業・保険業」(50.9%)の割合が高い。

調査はさらに、勤務時間外に業務上の連絡がくることについての意識を聞いており、まず、雇用者に、部下・同僚・上司からの勤務時間外の連絡(業務上の連絡)についてどのようなものであれば許容できるか聞くと、「すぐに対応が必要なことに対する連絡」が48.5%で最も高く、「単なる報告」が34.2%、「返信の必要がある連絡」が33.9%。「許容できるものはない」とした人は15.1%だった。

全回答者に、取引先からの勤務時間外の業務上の連絡について、許容できるものを聞くと、「すぐに対応が必要なことに関する連絡」が42.8%で、「返信の必要がある連絡」が25.4%、「単なる報告」が22.8%、「許容できるものはない」が28.1%だった。

勤務時間外の業務連絡に6割以上が「ストレスを感じる」

勤務時間外に部下・同僚・上司から業務上の連絡がくると、ストレスを感じるかについては、雇用者の62.2%がストレスを「感じる」と回答。ストレスを「感じない」は37.8%だった。また、全回答者に、取引先から勤務時間外に業務上の連絡がくるとストレスを感じるかを聞くと、ストレスを「感じる」は60.9%で、「感じない」が39.1%だった。

雇用者に、「働くこと」と「休むこと」の境界を明確にするため、勤務時間外の部下・同僚・上司からの連絡を制限する必要があると思うかを尋ねると、「思う」と回答した人が66.7%と6割以上にのぼり、「思わない」は33.3%だった。同様に、勤務時間外の取引先からの連絡を制限する必要があると思うかを全回答者に聞くと、こちらも67.7%は「思う」とし、32.3%は「思わない」とした。

勤務時間外の連絡に関する実態把握、2割が「ある」

自身の職場で、勤務時間外の業務上の連絡について、調査などの実態把握が行われたことはあるか尋ねると、「ある」が20.5%、「ない」が51.0%、「わからない」が28.6%だった。

「ある」と回答した人の割合を業種別にみると、「公務」(38.5%)や「教育、学習支援業」(32.6%)などが比較的高かった一方、「宿泊業、飲食サービス業」(4.9%)、「学術研究、専門・技術サービス業」(11.5%)、「情報通信業」(13.3%)などが比較的低かった。

またテレワークの可否別にみると、テレワークができる人で27.3%、できない人で13.3%となっており、テレワークができる人のほうが実態把握が「ある」とする割合が14.0ポイント高い。労働組合の有無別では、労働組合があるという人で32.9%、ない人で11.9%となっており、組合がある人のほうがない人を21.0ポイント上回った。

勤務時間外の業務上の連絡のルールがない人が4割以上

勤務時間外の職場内の業務上の連絡についてルールがあるかどうかについては(公式・非公式問わず)、ルールが「ある」が25.8%、「ない」が46.3%で、「わからない」が27.9%だった。

勤務時間外の取引先との業務上の連絡についてルールがあるか聞くと(公式・非公式問わず)、「ある」が19.9%、「ない」が45.8%で、「わからない」が34.4%。業種別にみると、「ある」としたのは「その他」を除けば「建設業」(28.8%)が最も高く、「製造業」(28.6%)、「金融業、保険業」(25.5%)、「公務」(23.1%)などと続く。

テレワークの可否別にみると、テレワークができる人のほうが、「ある」とする割合(30.2%)は、できないとする人の同割合(9.0%)よりも21.2ポイント高くなっており、労働組合の有無別にみると、労働組合がある人の「ある」とする割合は29.7%で、ないとする人の同割合(14.0%)よりも15.7ポイント高くなっている。

取引先との業務上の連絡についてルールがあるとした人のうち、ルールがあることで実際に連絡が「少なくなっている」と答えたのは73.3%と7割超で、ルールの効果を実感している人が多かった。

「つながらない権利」があれば連絡対応を拒否したい人は7割以上

調査は、休日や休暇日を含む勤務時間外に、仕事上のメールや電話への対応を労働者が拒否することのできる権利、いわゆる「つながらない権利」についても聞いている。これによって勤務時間外の連絡を拒否できるのであれば、そうしたいと思うか尋ねると、「非常にそう思う」が29.2%、「ややそう思う」が43.4%で、両者を合わせたそう思う人の割合は72.6%と7割以上に達した。一方、「まったくそう思わない」は5.9%、「あまりそう思わない」は21.5%で、これらを合わせたそう思わない人の割合は27.4%となっている。

つながらない権利があっても、今の職場では勤務時間外の連絡の拒否は難しいと思うか聞くと、「そう思う」が62.4%、「そう思わない」が37.6%で、実際の権利の行使の難しさを感じてる人が多かった。

約半数は法制化しても勤務評価への影響を心配

つながらない権利が法制化される場合、勤務時間外の連絡を拒否することで生じる影響について、雇用者に聞くと、「勤務評価等への影響」を心配する割合(「非常に心配」「やや心配」の計)が49.8%と約半数に及んだ。「昇進・昇格など今後のキャリア形成への影響」については心配する割合は47.2%で、「不利益な取り扱い(解雇、賃金減額、労働契約の一方的な変更など)」では51.1%と5割超が心配としている。

また、全回答者に、つながらない権利が法制化される場合に、勤務時間外の連絡を拒否することによって生じる「業務対応や業務効率への影響」について聞くと、「緊急性の高いトラブルへの対応が遅れてしまうこと」に対して心配する割合(「非常に心配」「やや心配」の計)は64.9%で、心配ではないとする割合(「あまり心配ではない」「まったく心配ではない」の計)の35.1%を大きく上回った。「業務効率が低下すること」に対しては、心配する人の割合は59.0%で、心配ではないとする人の割合は41.0%だった。

(調査部)