統計情報Q&A:『ユースフル労働統計』の生涯賃金

『ユースフル労働統計』の生涯賃金について、考え方を教えてください。

 『ユースフル労働統計』の生涯賃金は、新規学卒として就職してから一般的な定年年齢である60歳で退職するまで働き続けた場合と、そのうち特に、転職をせず同一企業に勤め続けた場合とのそれぞれについて、受け取る賃金の総額を性別、学歴別に推計したものです。それぞれ、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」による一般労働者の各年齢階級の賃金額、標準労働者の各年齢の賃金額を性別、学歴別に合算して求めています。

 さらに、60歳以降も、平均的な引退年齢まで働いたとした場合の賃金の総額も、退職金を含めて、推計しています。こちらは、賃金構造基本統計調査に加え、厚生労働省「就労条件総合調査」による定年退職者の退職金の額を合算して求めています。平均的な引退年齢は、国勢調査による年齢階級別雇用者数から推計しています。

 この「生涯賃金」は、実際に1人の人が生涯に受け取る賃金総額をそのまま示すものではありません。現時点での年齢別の賃金額が過去も未来も変わらないとした場合に、1人の人が初めて就職してから定年等でリタイアするまでの間に受け取ることとなる賃金総額を計算したものです。生涯賃金を求めるときは、賃金が年々増減し、そのため例えば30年前の30歳、20年前の40歳の賃金は、現在の30歳、40歳の賃金と異なりますが、このことをどう扱うかがポイントとなります。ユースフル労働統計の「生涯賃金」は、現在の各年齢の賃金を合算したものですから、過去の賃金は現在の賃金に置き直す、今の例で言えば、30年前の30歳、20年前の40歳の賃金を、現在の30歳、40歳の賃金に置き直して合算したものということになります。同じように、将来の各年齢の賃金も、現在の賃金に置き直して合算したものということになります。この「生涯賃金」の意義をやや難しくいえば、年々の賃金増減率でデフレートした現時点における生涯賃金の現在価値を示したものといえます。
 より具体的な算出方法は、『ユースフル労働統計』21.1生涯賃金の「指標の作成方法」をご覧ください。