職場における高年齢者の活用等に関する実態調査

日本労働研究機構 発表
平成12年6月

継続雇用は嘱託で、賃金は下がるが、部署、労働時間は変わらずが多い
60歳以上の労働者の職務について、満足が8割を超える高い割合

~職場における高年齢者の活用等に関する実態調査~

I.調査の概要

 本調査は、高齢化の進展にともない高齢者雇用の促進が課題となっている中で、高齢労働者の賃金、労働時間、処遇がどのように変化し、また定年後の継続雇用制度がどのような状態にあるのかを明らかにするとともに、高齢期の働き方について高齢者の考え方についても明らかにすることを目的として実施した。
 企業調査は、従業員数50人以上の企業10,000社、労働者調査は、回答企業に在職する50歳以上の労働者10,000人に調査票を送付した。そのうち回答があったのは、企業調査が2,466社、労働者調査が4,620人であった。なお、調査の実施期間は、企業調査:平成11年12月3日~12月24日、労働者調査:平成12年1月19日~2月14日。回答企業、労働者の構成は、付属統計表第1表、第2表を参照されたい。

II.調査結果の概要

職場における高年齢者の活用等に関する実態調査(PDF:880KB)

<骨子>

企業調査の結果

1. 定年前の処遇の変化

(1) 賃金の変化~「一定の年齢を過ぎると上昇が鈍化」が最も多い~
 正社員の40歳代から定年までの賃金カーブのイメージは、「一定の年齢を過ぎると上昇が鈍化」するが39.5%と最も高く、「一定の年齢を過ぎると横ばい」が19.9%とこれに次ぐ(図1)。賃金が変化する年齢は、「55歳」が32.1%と最も多く、次いで「56~59歳が」21.9%(図2)。

(2)役職定年制~役職定年制は20%強の企業で導入、役職定年後の多くは部署は変わらず~
 役職定年制(一定の年齢に到達した際に職位から外れる慣行・制度)を導入している企業は、事務・技術部門で23.8%、現業部門で20.8%(図3)。役職定年年齢は「55歳」(事務・技術部門45.9%、現業部門43.9%)、「56~59歳」(同38.9%、38.6%)で多い(図4)。また役職定年になっても80%の企業では所属部署は変わらない(図5)。その理由としては大多数の企業で「これまでの知識・技能・経験が活かしやすいから」(事務・技術部門85.1%、現業部門83.6%)をあげている(表1)。

2. 定年前後の処遇の変化

(1) 継続雇用制度の有無~継続雇用制度は61.5%で導入~
 定年後の継続雇用制度については、「ある」が61.5%となっている(図8)。継続雇用される労働者の状況は、定年到達者のうちの「85%以上」の企業が39.0%の反面、「30%未満」も32.6%ある(図9-2)。

(2) 継続雇用の理由~定年到達者の知識・経験を活かすため~
 定年後の労働者を継続雇用している理由については、「定年到達者の知識・経験を活用するため」(事務・技術部門77.5%、現業部門62.9%)、「高年齢者でも働ける仕事であるため」(同38.8%、37.3%)が高い割合となっている(図11)。

(3) 継続雇用に伴う処遇の変化~嘱託雇用で、賃金は減少、労働時間、部署は変わらず~

  1. 継続雇用者の定年前後での雇用形態の変化についてみると、「嘱託雇用となる」(事務・技術部門73.1%、現業部門66.4%)が最も高くなっている(図12)。
  2. 賃金の変化(定年前と比較)をみると、「減る」が事務・技術部門で72.8%、現業部門が68.1%と最も高い(図13)。
  3. 労働時間、所属部署の変化(定年前と比較)については、各部門とも、「変わらない」が最も高い(図14、15)。

3. 高年齢従業員の職務遂行能力~ある年齢まで上昇しその後一定水準に落ち着く~

 45歳から65歳までに職務遂行能力が全般的にどのように変化するかをみると、「年齢に伴い能力は上がるが、ある年齢以降は一定水準に落ち着く」が約4割と最も高い(図17)。

労働者調査の結果

1.50歳代の労働者

(1) 同じ職場の60歳代前半の労働者の働き方~望ましいが約6割~
 自分の職場の60歳代前半の従業員の働き方については、「望ましい」、「おおむね望ましい」が約6割となっており、その理由としては、「自分の能力を活かせる」が44.6%と最も高い(図25、26)。

(2) 自分の60歳代前半の望ましい姿、働き方~「今の会社でフルタイム勤務」が最も多い~
 自分が60歳代前半になった時の望ましい姿は、「今の会社でフルタイム勤務」が34.1%と最も高く、また、働き方については「収入は少なくてもゆとりのある働き方をしたい」が53.4%と半数を超える(図28、29)。

(3) 年下の上司~上司が年下は5割、それに対する抵抗感は「ない」が83%~
現在直属の上司が「年下である」労働者は51%で、、そのことに対する抵抗感は82.9%が「なし」で、15.1%が「ある」となっている(図30)。抵抗感がない理由としては、「会社のシステムであり、他の同年輩も同様だから」が20.9%と最も高く、次いで「仕事中心で職位にこだわらない雰囲気が社内にあるから」(16.7%)となっている(図31)。

2.60歳以上の労働者

(1)59歳時と比べた賃金、暮らし向き~賃金は「下がった」が多いが、暮らし向きは「変わらない」が多い~

  1. 59歳時と比較した賃金は、「下がった」が65.7%となっている。賃金が「下がった」者のうち年金と合算した収入をみると「年金と合わせても減少」が54.5%と高い(図32)。
  2. 暮らし向きについては、「変わらない」が55.4%と半数を超えている。また「苦しくなった」は34.9%(図33)。

(2)59歳時と比べた処遇の変化~部署、職務内容、労働時間変わらず~
 59歳時と比較した所属部署、職務内容、労働時間については同じとする者がそれぞれ約7割となっている(図34)。

(3)現在の職務の満足度~満足度は約8割と高い~
 現在の職務については、「どちらかといえば満足している」(67.0%)、「とても満足している」(16.5%)が、合わせて8割を上回っている(図36)。満足の理由としては、「自分の能力を活かせる」(30.5%)、「自分のペースで仕事ができる」(29.5%)、「組織の中で頼りにされる」(18.9%)となっている(図37)。

GET Adobe Acrobat Reader新しいウィンドウ PDF形式のファイルをご覧になるためにはAdobe Acrobat Readerが必要です。バナーのリンク先から最新版をダウンロードしてご利用ください(無償)。