構造調整下の人事処遇制度と職業意識に関する調査

日本労働研究機構 発表
平成10年6月

勤労者の満足度は「今の仕事」、「職場での自分の地位」で高く、
「賃金水準」、「貯蓄」で低い
今後の雇用が不安とする者 66%

~構造調整下の人事処遇制度と職業意識に関する調査~

I.調査の概要

 本調査は、企業と勤労者を対象として、構造調整下における人事労務管理の方針や日本的雇用慣行の行方とその変化に伴う問題点や、勤労者の就業意識等の実態を明らかにし、労働行政の基礎資料を得ることを目的として実施した。
企業調査は、従業員規模100人以上の企業4,000社、勤労者調査は、従業員規模100人以上の企業の事業所の従業員20,000人を対象として、平成10年2月1日~平成10年2月20日に調査した。
(有効回収票数:企業調査1,191票、勤労者調査5,232票)

II.調査結果の概要

構造調整下の人事処遇制度と職業意識に関する調査(PDF:57KB)

<骨子>

企業調査の結果

1.終身雇用の現状と将来

 現在、「原則として、定年まで雇用してきた、または定年後も一定期間、勤務延長や再雇用で働いてもらう」という終身雇用の考え方が、いずれの職種についても8割に達している。今後については、この割合は低下するものの、なお6割の企業が終身雇用を維持しようとしている。一方、出向、転籍をすすめるとする割合が高まる。 図1 終身雇用慣行の現状と将来 図2 採用政策の変化

2.賃金制度の現状と今後

 今までの賃金体系について67.8%が「どちらかといえば年功を重視してきた」と回答しているが、このうちの99.2%は、今後能力主義への移行を目指している。 図3 年功賃金の見通し 図4 賃金制度上の問題点

3.キャリア形成

 「個人の自律性を重視して仕事を進めた方が、より高い成果が得られる仕事」の比重が高まるは研究開発部門で6割と最も高く、営業販売部門、管理企画部門がこれに続く。一方「組織の協調性を重視して仕事をすすめた方が、より高い成果が得られる仕事」の比重が高まるは現業部門で最も高い。
また、特に管理・企画・事務部門では管理職への昇格までに経験する分野の数が「過去と比べて異なる分野の仕事を経験することが多くなっている」割合が「少なくなっている」割合を上回っていて、キャリアの幅が以前より求められるようになっている。 図5 仕事の進め方 図6 管理職のキャリアの幅

勤労者調査の結果

1.勤労者生活に関する満足度

 「今の仕事」や「職場での自分の地位」については「満足」が「不満」を上回り満足度は高く、また「通勤時間の長さ」「余暇活動」等労働時間や余暇活動に関わる満足度も比較的高い。一方「賃金の水準」については逆で満足度は低く、「貯蓄・金融資産」「税金、社会保険料負担」についても不満が満足を大きく上回っている。 図7 勤労者生活に関する認識

2.勤労者生活に対する考え方

【働き方・生き方】
ほとんどの人が「仕事だけの人間なんて魅力がないと思う」と感じている(89.5%)。しかし、「会社のためなら自分の生活を多少とも犠牲にするのは当たり前だと思う」、「単身赴任も会社のためならやむを得ないと思う」割合も各々47.9%、39.2%あり、単なる仕事人間は否定するものの会社への忠誠心はかなり強い。
図8 働き方、生き方

【終身雇用】
「定年まで勤めることができると思う」と「定年前に関連会社や子会社に移ることになると思う」をあわせて45.3%で、半数近くが実質的な終身雇用が保証されていると感じている。
図9 終身雇用(年齢別)

【成果主義的賃金】
成果主義的賃金の導入については、明確に反対とする意見は1割程度で、全体的には肯定的だが、「必要だと思うが不安がある」が7割と不安感が大きい。不安の理由としては、評価基準の不安に次いで収入が不安定になること。 図10 成果主義的賃金

【昇進】
60.7%が管理・監督職のポストにつけなくても構わないと回答している。理由としては、「管理職の仕事に魅力がないから」が最も多く全体では31.3%を占めている。
図11 昇進しなくても構わないか(性別) 図12 昇進しなくても構わないか~その理由(性別)

3.今後の生活に対する見通し

 66.4%の勤労者が「雇用が不安定になり失業の心配が増大する」とし、約9割の勤労者が「賃金や実質所得が伸び悩む」(85.7%)、「家計における税金や社会保険料負担が増大する」(88.3%)と答えている。また、83.5%が「老親の扶養や介護が難しい問題になる」、67.6%が「自分や家族の健康が問題になる」と答え、年齢とともにその割合は上昇する。
図13 今後の生活に対する見通し

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