やりがいを感じる人が多い一方、不満度が高い給与の水準
 ――保育士の就業実態や意識に関する各種調査の結果から

保育・教員職場に関する調査結果

東京都や千葉県など行政が実施した調査を中心に、保育士の就業や意識に関する現状を眺めてみた。現在、保育士として就業している人の多くが、保育の仕事にやりがいを感じ、今後も就業したいと考えているものの、給与や仕事量などに不満を持つ人が多い現場の状況がうかがえた。

改善を希望する項目のトップは「給与・賞与等の改善」/東京都の2022年度「東京都保育士実態調査報告書」

東京都の2022年度「東京都保育士実態調査報告書」によると、現在の職場で保育士が改善を希望する項目(複数回答)は、「給与・賞与等の改善」の回答割合が最も高く、6割以上があげた。調査は、2017年4月~2022年3月までの東京都保育士登録者等(書換え登録等を含む)5万2,856人を対象に、2022年7月25日~8月14日に実施。調査方法は、インターネット回収で一部郵送回収を併用している。1万8,239人から有効回答を得た。

ほぼ6割が現在の「給与・賞与等」に不満

就業中の保育士に、現在の職場の満足度を項目ごとに答えてもらったところ、「給与・賞与等」については「やや不満」が18.3%、「不満」が19.5%、「非常に不満」が21.2%で、不満と考える人の割合が合計してほぼ6割を占めた。

一方、「保育士としての仕事全体の『やりがい』度」では、「大変満足」が12.8%、「満足」が31.0%、「やや満足」が26.8%で、満足と考える人の割合が合計で7割に達した。

現在の職場で働き続けるために充実を希望する項目(複数回答)では、「給与」が79.4%で最も回答割合が高く、次いで「職場の人間関係」(58.0%)、「休暇」(52.7%)、「勤務時間・交代制の融通がきく」(43.1%)などの順となっている。

また改善を希望する項目(複数回答)では、「給与・賞与等の改善」(62.7%)が最も回答割合が高く、次いで「職員数の増員」(48.6%)、「事務・雑務の軽減」(40.1%)などの順で高い。

なお、保育士の処遇については、近年、人事院勧告による改善や、政策として加算措置が講じられてきており、こども家庭庁の資料によると、2025年度までで2013年度以降累計で39%の改善が実施されている。

今後も保育士として働き続けたい人が78.7%

保育士就業継続の意向をみると、「今後も保育士として働き続けたい」が78.7%と8割近くを占め、「今後は保育士を辞め、保育士以外の職種で働きたい」が19.4%、「今後は保育士を辞め、働かないつもりだ」が1.9%だった。

退職意向の理由(複数回答)をみると、「給料が安い」(61.6%)が最も回答割合が高く、「仕事量が多い」(54.0%)、「労働時間が長い」(35.4%)などと続く。

過去に保育士経験がある人に保育士を辞めた理由(複数回答)を尋ねると、「職場の人間関係」(31.5%)、「その他」(24.6%)、「仕事量が多い」(23.1%)、「給料が安い」(22.1%)、「健康上の理由」(体力含む)」(20.6%)などの順で割合が高かった。

復職する場合の希望条件(複数回答)は、「勤務時間(1日)」(73.8%)、「給与等(年収)」(69.0%)、「通勤時間(片道)」(61.6%)などの順で割合が高い。

転職検討・退職予定の理由のトップは「給料が希望と合わない」/千葉県「千葉県保育士登録者の就業状況に関するWEBアンケート結果報告書」

千葉県が2026年3月16日にとりまとめた「千葉県保育士登録者の就業状況に関するWEBアンケート結果報告書」によると、保育士以外への転職を検討、もしくは退職を予定している保育士があげた理由で最も多かったのは、「給料が希望と合わない」だった。調査は県内保育士登録者6万2,676人が対象。2025年11月20日~12月5日に郵送配付で実施。9,599人から回収した。

今後の就業継続予定を聞いたところ、回答した6,632人のうち、「現在配属されている施設で今後も保育士として働く予定」とした人が5,052人と最も多く、「転職を検討中(転職後も保育士)」が817人、「転職を検討中(転職後は保育士以外)」が627人、「退職予定」が136人だった。

転職検討・退職予定の理由のトップは「給料が希望と合わない」

「転職を検討中(転職後は保育士以外)」または「退職予定」と答えた763人に、保育士以外への転職、退職を検討している理由(最大3つまで)を聞くと、回答数は「給料が希望と合わない」が425で最も多く、次いで「責任が重い」(285)、「休暇が少ない・とりにくい」(184)、「自身の健康・体力への不安」(159)などの順だった。

保育士として働いたことがない、もしくは現在働いていない人に対して、保育士として働いていない理由を尋ねると、回答者2,943人のうち、「他の職種の方が魅力的だったため(幼稚園教諭を含む)」の回答数が649で最も多く、次いで「給料が希望と合わない」(506)、病気などが含まれる「その他」(486)、「家庭の事情(結婚・出産・育児・介護等)」(371)などの順となっている。

それらの理由が改善された場合の保育士としての就業意向を聞くと、「働きたい」が1,638で、「働きたくない」の1,305を大きく上回った。

転職・退職のきっかけ、「職員・職場の雰囲気」が最上位/横浜市「2024年度保育士意識調査結果」

横浜市が2024年11月に発表した「2024年度保育士意識調査結果」によると、現役保育士、潜在保育士ともに、転職・退職のきっかけとなり得る事柄は「職員・職場の雰囲気」が最上位だった。調査は、現役保育士では市内私立保育所等、認定こども園の保育士、保育教諭約1万5,000人、潜在保育士ではかながわ保育士・保育所支援センターに登録している横浜市在住の保育士756人が対象。2024年5月24日~6月20日に実施している。調査方法はチラシの郵送配付など。回答者数は、現役保育士では1,741人、潜在保育士では49人となっている。

転職・退職のきっかけとなり得る事柄を聞いた結果を現役保育士でみると、「職員・職場の雰囲気」(23.0%)がトップで、以下、「給与」(19.2%)、「施設長の考え方」(11.8%)などの順だった。潜在保育士では、上位3つは「職員・職場の雰囲気」(23.5%)、「施設長の考え方」(15.4%)、「給与」(14.7%)となっている。

勤務先への満足度では「おおむね満足」が最多

現役保育士に、勤務している園への満足度を聞くと、「非常に満足」が12.3%、「おおむね満足」が54.9%、「不満だが転職は考えていない」が19.5%、「不満なので転職を考えている」が13.3%で、「おおむね満足」とする人が最も多い。

現役保育士が職場で不満に感じること(複数回答)は、「職員体制が不十分」(25.6%)が最も割合が高く、「給与が少ない」(25.0%)が続いた。

半数以上に「辞めたい」と思った経験/日本生命などによる「保育イノベーションコンソーシアム」の「保育士の働き方実態大規模調査」

日本生命が2025年3月に立ち上げた「保育イノベーションコンソーシアム」が同年9月に発表した「保育士の働き方実態大規模調査」では、現役保育士の半数以上が「辞めたいと思ったことがある」と回答。辞めたい理由のトップは「給料が低い」だった。コンソーシアムは、同社がグループ一体となって子育ての壁や不安をなくすことなどを目的として進めているプロジェクトの一環として、保育業界全体の課題解決の推進に向けて始めたもの。調査は、インターネット調査の方法で、2025年6月13~18日に実施。保育士では20歳~59歳の1,521人が回答している。

それによると、現役保育士の51.5%が保育士を「辞めたいと思ったことがある」と回答。その理由(複数回答)をみると、「給料が低い/業務内容に見合った報酬が得られない」が38.8%で最も回答割合が高く、次いで「人手不足で常に忙しい」(32.0%)、「求められることが重くて精神的な負担が大きい」(29.4%)、「業務量が多すぎて負担が大きい」(28.5%)、「職場の人間関係が悪い」(27.0%)、「働くモチベーションが保てない」(22.7%)、「頑張りや成果が正当に評価されない」(20.0%)の順で高かった。

「辞めたいと思ったことがない」と回答した保育士があげた理由(複数回答)では、「職場の人間関係が良好で居心地が良いため」が20.4%で最も回答割合が高く、「仕事とプライベートの時間を両立できているため」が19.5%で続いた。

「仕事の負担感」について、「そう思う」もの(複数回答)を選んでもらったところ、「からだを大変よく使う仕事である」が83.3%で最も回答割合が高く、「肉体的な疲労感が蓄積しやすい」(81.4%)や「かなり注意・集中を必要とする仕事である」(79.4%)も8割前後に及んだ。

(調査部)

2026年10月号 保育・教員職場に関する調査結果の記事一覧